恋愛要素ゼロの部活動
2ヶ月というのはあっという間で、学校での生活にも慣れ、人間関係もほぼ確立しており、自分はというと、話せる友達が何人かできた。これは多分賢治と友達関係だったのが大きな要因だろうなと思う。賢治は中学でも上位カーストだったので必然的に高校でもカーストが上位となり、そのお零れをもらう形となった。おかげでぼっちキャラにはならずに済みそこは安心した。1人が嫌というわけではないが、何かあったときに頼れる人が多少いるのは今後何かしら助かる事があるだろう。
そして、気になる部活、もとい中森さんとの関係だが特に何もない。正確には部活動以外で絡むこともなく話すことも絵のことばかりで甘酸っぱい感じははっきり言ってゼロだ。たまに雑談をかわすが一緒に帰ったりもしないし、教室でもあまりはなさない。別に期待していたわけではないので気は楽ではある。実際に何人か入部を希望してきたが(主に男子)、いざ「絵を見せて」と言うとみんなたじろいでしまう。本気で美術部をやるというのだから、下心だけでは入部は無理だろう。それにしても、俺を恨めしそうに睨むのはやめてほしいのだが。
しかし、ある日の放課後、ひとり入部を志望する女子が現れた。その子は恥ずかしがりながらも絵を見せてくれて、なんと入部を許可されたのだ。名前は長谷部真白さん。おかっぱ頭が特徴で身長が低く可愛らしい女の子。隣のクラスで美術部に入りたがったが廃部の噂を聞きあきらめていたところ、先生から廃部を回避したことを聞き入部を希望したとのこと。何枚か見せてもらうと、絵のレベルは決して高くはないが、長谷部さんがしっかりと練習しているのは伝わってくる。
「どうかな?私は入部してもいいと思うけど」
と、俺に振ってくる。
「俺は別に、中森さんがいいならいいと思うよ」
そう返すと、わかったと頷き中森さんは長谷部さんに向き直る。長谷部さんはどこか緊張している様子。
「長谷部さん」
「ひゃ、ひゃい!」
緊張で舌がまわらず噛んでしまっている長谷部さん。うーんかわいい。
「ふふ、そんなに緊張しないでいいよ。これからよろしくね」
「え!つ、つまりご、合格でしょうか!?」
「うん、熱意は伝わってきたしこれから一緒に頑張ろ」
「わ、わかりました!よ、よろしくお願いします!」
「そんな緊張しなくていいよ、私たち同級生だし。仲良くやっていこ?」
「は、はい!」
まだ緊張はとけていなさそうだが、まぁ何とかやっているだろう。知らんけど。
「じゃあ自己紹介するね、私はAクラスの中森彩夏。隣にいるのが同じクラスの谷山誠司くん」
「あ、どうもよろしくです」
と軽く挨拶をする。
「は、はじめまして私はCクラスの長谷部真白といいます。絵ははじめたばかりですがよろしくお願いします」
緊張がこちらにも伝わるくらいガチガチだが、まぁ知らない人のところにいきなり来て絵を見せるのはかなり緊張しただろう。それだけ熱意があるということはわかる。ただひとつ問題があり、それは男子が俺しかいないということ。普通ならやったー!女子二人だー!となるかもだが実際にはただただ気を使うだけである。まぁここ二人ならそこまで気を使う必要もなさそうだが肩身は少しせまい。そんな事を考えている傍らで話し込む二人。まぁ仲良くやれそうならそれでいいか。
「そういえば、部長さんは中森さんですか?」
と質問される。
「うーん、一応書類上は先輩が部長ではあるけど、あの人あんまり来ないから困りごとは私か誠司くんに聞いてね」
是非俺ではなく中森さんに聞いてほしい。責任を持ちたくない。
「わ、わかりました。えっと誠司さんもよろしくお願いします」
「こちらこそ」
軽く挨拶をする。その後は軽く美術室の説明をし、一緒に絵を描く。その後は特に話すこともなく、鳥のさえずりや風の音、遠くを走る車のエンジン音や、外で活動する運動部の声が聞こえる。他から見たら地味でつまらない風景だと思うが自分はこの状況は嫌いではない。むしろ無言でもいい空間は授業以外では中々ないので貴重な時間だと俺は思う。
しばらくして、日が暮れ始めたので今日は帰ることに。2人は女の子同士だからか、少ししゃべりこんでいる。
「じゃあ先帰るね、お疲れ」
「あ、お疲れ様。また明日」
「お、お疲れ様です」
学校から家までは、歩いて二十分ほどと近い。帰る前にコンビニでも寄ろうとすると見知った顔があった。
ラブコメ要素は先になりそうですが、気長にお待ちください




