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パムルゴニアの冒険者たち  作者: 不思議OHP
第二章 大襲撃の夜
32/50

32 下水道の乙女⑦

「つまり、本体が尻尾だから、ネズミの体は無敵だった、ってわけ?」


「そうそう、ネズミの死骸に巨大ミミズが寄生して操ってた、みたいな。う、鳥肌立ってきた……」


 わたしとフジとニアちゃんは今来た道を戻りながらレドさんたちを探していた。フジが言うにはそれほど奥までは行ってないらしいけど、この迷路みたいな場所で合流するのは至難の技だ。


「あ、この場所……」


 赤目二人とやりあった場所に戻ってきた。同じような景色が続いているから確証はないけど、床に軽鎧とあのナイフ、それにいくつかのアイテムと銀が放置されたように置かれていた。


「これって何で落ちてるの?」


 置かれたアイテム群を指差して聞くと、フジはなんだか得意そうに答えた。


「えーと、もしミレイのいう通りこれが誰かから奪ったものなら、すぐに自分のものにはならない。アイテムのランクに寄るけどログイン状態で一定時間以上所有してないと帰属して自分のものにならないんだよね。つまり……赤目たちが死んでどっかに戻ったからここに置き去りにされてるんじゃないかな」


 へー、そういうものなのか。感心するわたしに向かってフジがそのアイテムたちを指して聞く。


「これどうする?」


「どうするって?」


「拾っちゃってミレイのものにもできるし、持ち主探して返すっていうのもよくある話だし。まあミレイの好きにするのがいいと思うけど。放置しといても赤目が戻ってきたら回収されるからね」


 そうなんだ。これまで全然その辺のことは縁がなかったから知らなかった。


「うーん、わたし誰か着た服とか着れないタイプだからなー」


「じゃあ売る? 大分いいお金になると思うよ」


 それは魅力的な話だ。頭にあの高価な装備とか、ドレスアップ用の洋服とか、オークションでみたアイテムがよぎる。そんな旨味があるならPKする輩もいるのも仕方がないのかもしれないけど。


 フジはわたしがどうするのか、興味深そうに見守ってる。こいつは単純だから絶対持ち主探して返すんだろうな……。


 しばらく考えた末、わたしが出した結論は……。


 そのアイテム達を拾って、下水の深みに投げ捨てる事だった。


 飛沫を上げる水音と、「えー!」と驚くフジの声が反響してこだました。いかにも勿体無いと言うように水路の中を覗き込んでいる。


「こういう時は関わらない、っていうのがいいかな、って」


「お、おう、そ、それもいいね」


 全然いいと思ってない様子のフジ。別にフジにわかってもらいたいと思ってるわけじゃないし、いいんだけど。わたしは自分自身に説明するように口を開いた。


「うーん、フジが言うみたいに持ち主に返す、っていうのも考えたんだけどさ、何て言うかな…。赤目の人達って悪者、って訳じゃないでしょ。それもひとつの遊び方なんだから。ロールプレイ、ってやつ? 自分がやられたらそりゃムカつくし、さっきはマジでボコボコにしてやりたかったけどさ。持ち主探しもいい事だしホントはそれが一番いいんだろうけど。なんていうんだろ……その……わたしが決めることじゃないっていうか……上手く言えないけど……うん、やっぱりこれがいいよね」


 わたしの頭の中にあったのは、あの鎧の赤目の姿だった。わたしと向かい合い、小刻みにガチガチ震える姿。きっとあいつらも必死だったんだ。


 そう思うと、あのアイテムたちの行方は天に委ねるのがいい気がした。戻って来た赤目が見つけるかも知れないし、まったく他の誰かの手に渡るかも知れない。いずれにせよ、わたしがその命運に関わるべきじゃないと、何となく思っただけ。


 自分で勝手に納得するわたしを見てフジが言う。


「わかったようなわからないような」


「うん、まあわたしもわかんないし。わかんなくていいんだけど」


「俺もわかんないけど、ミレイって意外と色々考えてるんだなあ、って思いました」

 

「い、いや、別にずっとそんなこと考えてるんじゃないけど! 今は何となくそんな気分かな、って話!」


 フジにからかわれて、いや、からかっているのかもわかんないけどなんか恥ずかしくなってきた。ま、何となくニアちゃんの前で泥棒みたいなこともしたくないし……これでいいよね。

 

 その時、曲がり角の向こうでランプの明かりに照らされた影が動いた。


 あ、レドさんたちじゃないかな、と足早に歩き出すフジ。


 その二つの大きな影はなんだか不気味に揺らめいているようにわたしには見えた。


 ちょっと……待っ……


 フジを引き止めようとしたわたしの足元で一匹のネズミが小さく鳴いた。



 そのネズミに尻尾があったかどうかは…………



ミレイパパ「パパな、あれからすっかりPKってやつにハマっちゃってな」


ミレイ「そ、そう」


ミレイパパ「街に近づけないから洞窟を根城にしててな」


ミレイ「うん……」


ミレイパパ「泥水をすすって、カビの生えたパンを食べてなあ。ひもじいけどお金の無かった学生時代を思い出すなあ、生きてるって感じがするなあって」


ミレイ「……」


ミレイパパ「それで今では『赤の盗賊団』なんて呼ばれてママと一緒に頑張ってるよ」


ミレイ「え!ママも!?」



フジ「っていう夢をみたんでしょ?」


ミレイ「……どうだと思う?」

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