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パムルゴニアの冒険者たち  作者: 不思議OHP
第二章 大襲撃の夜
27/50

27 下水道の乙女②

 振り向かずに迷路を駆ける。


 狭い通路が足音を反響させて何重にも響かせた。


 この世界には現実世界と同じく犯罪に当たる行為がある。食い逃げ、窃盗、器物破損、各種ハラスメントとかとか、挙げたらキリがないけど。それらの罪を犯したプレイヤーは衛兵に捕まり、投獄されるリスクを追う。


 一方で、それら軽犯罪とは区別される罪も存在する。いわゆる重罪。


 『赤目』とはつまり、重犯罪者の通称だ。


 脱獄、強盗、NPC殺し……。それらの重罪を犯したプレイヤーは瞳が赤く染まり、一般プレイヤーとは区別される。


 その赤い色の強さは犯した罪の重さによって大きく変わる。さっきの二人組の瞳は血に染まったみたいに真っ赤だった。


 つまり、あいつらは『プレイヤーキラー』。冒険者の間でも最も警戒すべき極悪犯だ。


 赤目となった冒険者は街への立ち入り、施設利用の制限や、一部クエストの受注不可などのペナルティを負うため、余程の覚悟があるプレイヤーじゃなければその道は選ばない。


 でも何で? カリアに赤目は立ち入れないはず。ニアちゃんのガーディアンと同じで街には衛兵がいる。街に立ち入ろうとして、衛兵にボコボコに殴られてる赤目を何人か見たことがある。


 イベント中で衛兵が出払ってるから? いや、違う。カリアへの出入りは今は禁止されてるから外から入ってくるのがそもそも無理。じゃあどうして?


 必死で通路を走りながら頭をフル回転させた。もう道はわからない。どんどん暗いところに入り込んでる気がする。


 でも止まれない――


 後ろから、あいつらが追ってきてる足音がするから。


 最悪。


 反響する足音のせいでその正確な距離は掴めない。でも確実に二人とも後ろを着いて来てる。


 すれ違うときにせめてレベルを確認すれば良かった。わたしにやれるか。いや、どのみち二人相手は分が悪い。


 赤目に出会ったことは何度かある。でも、襲われるなんて初めてだ。ダンジョン内で寝落ちして目が覚めたら身ぐるみ剥がされてたとか、レアドロップを赤目に横取りされたとか、その手の話は噂ではよく聞く。でも何となく、別の世界にある話のような気がしてた。ほら、自分だけは事故に合わない、みたいな。

 

 心臓が高鳴る。

 相手は魔物じゃない。

 生きている、わたしと同じ冒険者だ。


 おい!


 と、いよいよ背後からその声が聞こえた。思ってるより近い。


 わたしは森の熊さんを思い出した。すれ違った時に何か落とし物したかも。それで追いかけてきてるただの親切な人だったらどうしよう。別に赤目だからって全員が悪い奴じゃないし。ただのロールプレイの一貫でその道を選ぶ冒険者もたくさんいる。もしかしたら道に迷ってわたしに助けを求めてるのかも。きっとそうだ、そうに違いない、と自分に言い聞かせる。


 でも――

 

 きっと世の中そんなに甘くない──


 わたしは足を踏ん張り、滑るようにして止まった。  


 やるなら、先手必勝だ。


 方角転換し振り向くと案の定、相手はすぐ後ろまで迫ってる。フードの男の右手には短刀が光っていた。まじ? 殺る気満々過ぎなんだけど。


 鎧の大男は走るのが遅いのかだいぶ距離が離れていた。あいつが追い付く前に、叩く。


 赤目の瞳が闇に映える。レベル58、わたしの方が強い。1対1ならやれる――


 突然振り向いたわたしに面食らったのか、相手は急に立ち止まれず体勢を崩したままこちらに向かってくる。


 チャンス――


 わたしは腰を落とした姿勢のまま片足を思い切り踏み込む。足の下で床が割れる。体をひねり、相手の体に向かって押し当てるように掌を叩き込んだ。


 走る勢いのまま、まともに打撃を受けた赤目は後方に吹っ飛んだ。やば、飛ばしてどうすんの。床を蹴り、跳ねる。追撃。


 跳び蹴りが顔面に直撃する。このまま、押しきる。回し蹴りからさらに回って脇腹を殴る。その勢いのままさらに回って殴って回って、蹴って殴って蹴って蹴って蹴りまくる。


 攻撃は次々に当たるがダメージはさほど通らない。


 こいつ、思ってたより全然硬い。レベルに見合ってないSSランクの軽鎧を身につけてる。わたしは確信した。何故こいつらがこの場所にいるのか。


 これは誰かから奪った装備だ。

 

 イベント中の混乱に乗じてPKした。そして赤目になった。


 ――渾身の一撃が直撃しても相手は倒れない。


 フードの男が体勢を立て直す。こんな火事場泥棒みたいな奴らに絶対負けたくない。わたしは蹴りまくりながら祈る。


 クリティカル出ろ。クリティカル出ろ。クリティカル出ろ。クリティカル出ろ。クリティカル出ろ。クリティカル出ろ。クリティカル出ろ。クリティカル出ろ。クリティカル出ろ。クリティカル出ろ。クリティカル出ろ。クリティカル出ろ。


 クリティカル出ろ――


 コンボの最後の回し蹴りが直撃してもなお、相手はその場に立っていた。


 わたしの願いも虚しく

 クリティカルは出なかった。

 


ミレイオリジナル技①


凸背拳とっぱいけん

片足を強く踏み込み、開いた掌を相手に叩きつける。踏み込みと腰の回転により、ゼロ距離からでも強力な打撃を生み出す。父の影響により格闘技好きに育ったミレイがカンフー漫画からパクった。別に衝撃が壁を突き抜けたりはしない。老師は今でもミレイの心の師匠。

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