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初級魔法しか使えない僕が、一撃必殺しかできないギャル勇者と一緒に最強になる話  作者: 八泉


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リベンジマッチ

 ただの模擬戦。

 しかもF組同士の戦いだというのに、闘技場には少なくないギャラリーが集まっていた。

「なんか、すごいことになってない?」

「うん。なんでかな」

「学園長に、生徒会長と副会長までいるんですけど……!やば、緊張してきた」

 今年初の退学者が出るかも知れないのだ。

 多少は注目を集めると思ってはいたが、まさかここまでとは思っていなかった。

 カナタは先ほどから何度もハンカチで掌を拭いている。

「おう、灰嶋。逃げずにきたな」

「わりーな。なんか宣伝したら人が集まっちまってよ」

 葛木兄弟が、その瓜二つの顔に薄笑いを浮かべながら現れた。

 タクトの目の前で足を止めた二人は、覗き込むようにして言った。

「うちの実家、結構田舎でよぉ。魔物被害があって困ってんだ」

「もし退学になったら、冒険者になって助けてくれよなぁ」

 耳障りな笑い声を残し、闘技場の向こう側へと去っていく二人を、タクトは無言で見つめていた。

「灰嶋くん、大丈夫?」

 カナタが心配そうに見つめる。

「うん。何を言われても、やることをやるだけだから」

 タクトは揺らがなかった。

 

「二人とも、準備は良いか?」

 審判を務める教員が声をかけてくる。

「だ、大丈夫ですっ!」

「水色、落ち着いて」

「無理だってぇ!」

「練習の通りにやれば、勝てるよ」

 カナタを正面からしっかりと見つめる。

 その空色の瞳に、タクトの姿が映っていた。

「水色なら……僕たちなら、できる」

「……うん!行こう!」

 カナタは剣の柄を力強く握りしめた。


 ◇


「それでは——試合開始!」

 教員の声が闘技場に響く。

 その瞬間、タクトにとって予想外のことが起きた。

「……詰めてこない」

 葛木兄弟は前回、危なげなく完勝している。

 その勢いで序盤から一気に攻め込んでくると予測していたのだが、意外にも二人は自陣からニヤついた笑みを浮かべてこちらの様子を見ている。

「どうする?」

「……まぁいいか。最初から使おう」

 カナタが頷き、後ろへ離れていく。

 それを確認したタクトは、静かに詠唱を始めた。

 葛木兄弟は魔法攻撃に備えて構え始めたが、あいにく攻撃するのはタクトの役目ではない。

「さぁ、お披露目だ」

 タクトの足元から、白い霧(・)が吹き出した。


 ◇


「なぜF組……しかも一年の模擬戦など見ねばならんのだ」

「そう言わずにほら、あの二人の眼を見てよ」

 観覧席の最前列。

 生徒会長と副会長が、戦場を見下ろしていた。

「……ふん。確かに素質はあるようだが、それだけではな。事実、退学目前なのだろう?見るほどの価値があるとは思えん」

「まぁまぁ。どうせ暇でしょ?」

「お前と一緒にするな。それにしても、両者とも動かんとはどういうことだ」

 訝しむ二人の視線の先で、白い霧が広がっていく。

「……へぇ?」

 副会長が、興味深そうに目を細めた。


 ◇


 闘技場に満ち始めた霧を見て、葛木兄弟は拍子抜けした。

 なにか工夫はしてくるだろうとは思っていた。

 それがこんな子供騙しの目眩しとは。

「なんだこりゃ。あいつらこんなもんで勝つつもりかぁ?」

「ま、初級魔法縛りじゃこんなもんだろ。灰嶋を見てると俺も焦るぜ。さっさと中級魔法を覚えなきゃってよぉ」

 タカヤはそう言うと詠唱を紡ぎ、火球を完成させた。

「小手調べだ……っと」

 火球は狙い通りタクト目掛けて飛び——霧にあたって掻き消えた。

「まぁ、流石に初級同士じゃぶつかっても相殺止まりか。でもこれで奴の霧は吹き飛んで……ん?」

 タカヤは目を細くしてタクトの周りに渦巻く霧を見た。

 ——相殺したはずの、分厚い霧の壁を。

「なんだ?なんかおかしい」

「どうした?」

「わかんねぇけど……初級の霧魔法じゃせいぜい自分の周囲を覆う程度のはずなのに、どんどん霧の範囲が広くなってねえか?」

「あー……言われてみれば確かに」

 カツミはまだピンと来ていないようだが、タカヤはどこか嫌な予感を覚えていた。

「カツミ、前と同じように一発屋から落とせるか?」

「おう。行ってくる」

 そう言い残すと、カツミは霧の中へ飛び込んでいく。

 闘技場は広いと言っても屋内施設。

 範囲は限られているのだから、いくら霧がかかっていようと簡単に発見できる。

 ——そのはずだった。

「タカヤ!タカヤどこだ!なんだこりゃ……何も見えねえ!」

 カツミの叫びを聞いたタカヤは霧の近くまで走り、声を張った。

「ここだ!一旦出てこい!」

 声を頼りに霧から抜け出してきたカツミの全身は、激しい雨に打たれたかのようにずぶ濡れだった。

 中はよほど濃い霧に覆われているらしい。

「くそっ!なんだこの霧、全然見えねえぞ!」

「まずいぞ……この状況で一発屋のスキルを溜められたら——」

 タカヤが霧へ視線を戻したその時。

 

 ——リィン。

 

 戦場に、澄んだ鈴の音が響き渡った。

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