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初級魔法しか使えない僕が、一撃必殺しかできないギャル勇者と一緒に最強になる話  作者: 八泉


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暑苦しい男

「——なんか、文句あるわけ?」

 ピシリ。

 そんな音が聞こえそうなほど、教室の空気が一気に張り詰めた。

 タクトが下げていた頭を上げると、教室中の視線が彼の隣に集まっていた。

 普段とはまるで違う低い声だったため、すぐにわからなかったが——

 この空気を作ったのは、カナタだった。

 大きな瞳をスッと細め、眉間にシワを寄せた彼女は、静かになった教室に向けて言い放った。

「灰嶋くんになんか文句あるなら……あたしも相手になるから」

 その威圧感に、教員までもが言葉を失って彼女を見つめている。

 ——その時だった。

 ガタンッ!

 勢いよく立ち上がる一人の男子がいた。

 服の上からでもわかる、筋骨隆々とした身体。

 短く刈られた黒髪の下で、赤い瞳が燃える。

「……素晴らしい!! 仲間のために怒るその姿は、まさに勇者だ!! 感動した!!」

 その勢いのまま、彼はカナタの目の前までズンズンと進み出ると、分厚い右手を彼女の前へ差し出した。

「大道寺ジュウゴ!! アナタのその勇気に惚れました!! 好きです!! 俺とチームを組んでください!!」

「……は? 無理」

 張り詰めた空気をぶち破ったその男の告白を、カナタは一蹴した。

 思わぬ事態に教室がざわめきを取り戻す中——

 パン!

 教員が手を叩いた。

「……お前らな。青春するのは良いが期末テストも近いんだから程々にしろよ? さぁ授業はじめるぞー」

 その声でそれぞれ席につく。

 ひそひそとした声が教室内を静かに満たす中、タクトはノートを広げるのだった。

 

 ◇


「はぁ……。なんだったんだろあの人……」

 昼休み。

 ラウンジに出てきたタクトとカナタは、朝の一件について話していた。

「そもそもチーム組めって、あたしは灰嶋くんとチーム組んでるっての!」

「まぁまぁ。あ、でも確か、D組以上の学生はチーム変更が認められてるんじゃないかな……ほら」

 タクトは自分の荷物から学生証を引っ張り出すと、校則について書かれたページを示した。

「……ほんとだ。同じクラスの中なら入れ替え可……その時点での勝利数はリセット……」

「入れ替えを行った双方のチームは二敗した状態となる、か……意外と厳しいな」

「だね。チーム変更したらいきなりクラス落ちのピンチってこともあるよね?」

「うん。そうだね」

 このルールでは、たとえそれまで好成績を収めていても、チームを入れ替えれば0勝二敗の状態で再出発だ。

 よほどのことがない限りは入れ替えは認めないという、学園からのメッセージのようにも感じた。

「ま、そんなルールがあってもなくてもあたしはチーム替えする気ないけど」

 カナタは興味なさげにストローを咥えると、冷たいジュースを口に含んだ。

「そういえば、朝は色々あって言いそびれたけど……ありがとう。僕のために怒ってくれて」

 タクトは朝のドタバタ劇のせいで伝えられなかった言葉を、改めて口にした。

「べ、べつに灰嶋くんのためじゃ……なくはない、けど?」

 カナタはその金髪を指でくるくるといじりながら、上目遣いにタクトを見つめた。

 タクトの口が、何か言おうと形を変え始めたその時。

「おー!! ここにいたのか水色カナタさん!!」

「……はぁ」

 カナタがガクリと肩を落としてため息をつく。

 タクトが声の方角へ視線をやると、ラウンジの入り口でジュウゴが仁王立ちしていた。

「探したぞ!!」

 ズンズンとこちらへ歩いてくるジュウゴ。

 彼の後ろには、一人の女子学生がいた。

 アッシュグレーの髪を肩まで伸ばし、眠たげなオリーブ色の瞳が印象的な少女だ。

 着崩した制服からは、すらりとした手足がのぞいている。

 ジュウゴがカナタの目の前に来て、その口を開きかけた所で——

「おんっ?!」

 その少女がジュウゴの顔を強引に押し退けた。

「二人とも、仲良くしてるところ邪魔しちゃってごめんね〜。ウチは成川(なるかわ)ミサキ。このバカ……もとい、筋肉ダルマのチームメイトだよ。以後よろしくー」

 ミサキが二人に頭を下げ、長い髪がさらりと流れた。

「……そろそろ自己紹介は良いか? 俺は水色カナタさんに用があってだな」

「うるさい。筋肉は黙ってて」

「んぐぁ!?」

 再び顔を押し退けられるジュウゴ。

 ミサキは慣れた様子で言葉を続けた。

「水色さん。朝はこのバカがごめんね。頭まで筋肉でできてるだけで、悪いやつじゃないよ。頭は悪いけど」

「……はぁ」

 カナタはミサキに向き直る。

 しかし、決してジュウゴの方を見ようとはしなかった。

 彼女はジュウゴのことを相当警戒しているらしい。

 ミサキはその様子を見ると、笑みを浮かべて続きを話した。

「朝の一件……こいつの告白の話は置いといてさ。チーム変更については、前向きに検討してもらえたらなって思ってね」

 その言葉を聞いたカナタの目がスッと細められる。

 だが、ミサキはその目を見ても動じない。

「ウチもこの筋肉ダルマと離れられるなら嬉しいんだよね。こいつ、連携のかけらもないゴリ押しスタイルだからウチとは合わなくて。でも、水色さんのスキルを活かすならこのゴリラも役立つと思うんだ」

 なかなか酷い言われようだが、ジュウゴは顔を横に押しやられたまま、ウンウンと頷いている。

「——あたしは、チームを替えるつもりないから」

 カナタはすげなく断った。

 しかし——

「それなら!!」

 ジュウゴはミサキの手を首の力だけで押し返すと、タクトに向けて宣言した。

「灰嶋タクトくん!! 彼女をかけて、勝負だ!!」

 急に話を振られて目を丸くするタクトの横で——

「……は?」

 カナタの声と表情が、一層冷え込んだ。

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