↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初級魔法しか使えない僕が、一撃必殺しかできないギャル勇者と一緒に最強になる話  作者: 八泉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/30

転機


 二人は訓練室に場所を移した。

 重い雰囲気を拭おうと、カナタが切り出す。

「それで、あたしのスキルが見たいんだっけ?」

「うん。ちゃんと撃ったところ、まだ見たことないから」

「え、マジ?」

「うん」

 カナタは気まずそうに笑った。

 カナタのスキルは溜めないと使えない。

 その代わり、溜めたら凄い。

 これがタクトの持っている情報だった。

 振り分け試験ではそのスキルを披露したらしいが、勇者候補と賢者候補で分かれて試験を受けたため、実際に見たことはない。

「そかそか、りょーかい!それじゃいくね」

「うん。よろしく」

 そう言うと、カナタは剣を上段に構えた。

 その所作は流れるようで美しく、ぴたりと止まった後は一切姿勢が崩れない。

 積んできた修練を感じさせる動きだ。

 構えをとると、鈴のような音を響かせながら、青白い燐光が少しずつ切先に集まりだす。

 勇者候補が使うスキルには神聖力が使われるが、この光がその神聖力なのかもしれない。

 タクトは興味深げに観察を始めた。

「……それで、何秒くらい溜めるの?」

「えーと、フルチャージまで30秒くらい?」

「途中で撃つとどうなる?」

「それは——こうなる、よ!」

 カナタが剣を振り下ろす。

 集まった燐光が散り——特に何も発揮されなかった。

「……何も起きなかった」

「うん。フルチャージしないと撃てないんだよね」

「……魔法が失敗した時と似てるかも」

「そうなの?」

「うん。見てて」

 タクトは中(・)級(・)魔法の詠唱を淀《よど》みなく紡ぎ、魔法式を組み上げた。

 ——ボフッ。

 しかし、魔法式に注入された魔力が不足していたため、魔法は発現しなかった。

「魔法式を正確に組み上げても、魔力が足りなければ発動しない」

「あー、確かに似てるかも?てか、灰嶋くん中級魔法覚えてんだね」

「詠唱だけなら超級まで覚えてるよ」

「マジ?!それ凄くない?」

「凄くないよ。覚えてるだけで結局使えないからね」

「あー……なんかゴメン」

「いや大丈夫。そんなことより、今度はフルチャージして見せてほしい」

 カナタは了承すると、再び剣を構えた。

「その構えじゃなきゃダメなの?」

「そ!このまま30秒くらい我慢するの。少しは向き変えたりできるけどね」

「……こんなに厳しい条件、聞いたことないな」

「そう?まー確かに普通のスキルはパッとやったらビュッて出るもんね」

 タクトは顎に手を当てる。

 勇者候補は神聖力を消費してスキルを使う。

 スキルは即時発動。

 ただしクールタイムがある。

 魔法は魔力を消費する。

 連続使用も可能だが、詠唱は毎回必要。

 それが常識だ。

 ——だが、カナタのスキルはどちらにも当てはまらない。

「なんでだろう?」

「え、何か言った?」

「いや、独り言」

 タクトが考え込んでいる間に、カナタのチャージはかなり溜まったらしい。

 集まった燐光が剣全体に広がり、脈を打つように光の波紋が広がっている。

 美しい。

 しかし、その内側に秘められた力は、その見た目からは想像もできないものだった。

「……なんだ、これ」

 今までに見たスキルたちとは明らかに違う。

 カナタを中心にして吹き荒れる、神聖力という名の暴威。

 それは、直接剣を向けられていないタクトにさえ恐怖を感じさせた。

「それじゃ……いくよ!」

 カナタは剣を振り下ろし、その荒れ狂うほどの神聖力を、一気に解き放った——


「【星斬り】!!」


 ——瞬間、世界が青白い光に染まった。


「っ!」

 あまりの眩しさに、タクトは手で庇うようにして一瞬目を逸らす。

 少しして、光が収まる。

 その後の光景に、タクトは思わず自分の目を疑った。

 ——地面が、左右へ真っ二つに割れている。

 光が奔(はし)った後はブスブスと音を立て、ガラス状になって抉れていた。

 それが、訓練室の端まで続く。

「あ、あはは」

 自然と、乾いた笑いがこぼれた。

 自分には決して届かない、一瞬の煌めき。

 そのあまりの爆発力に、タクトは身を震わせた。

「すごい、すごいよ水色」

 葛木兄弟はカナタを一発屋と蔑(さげす)んだ。

 だが、このスキルを見た今ならこう言える。

「こんな一撃、どうしたって見せつけたい」

 また、掌に爪が食い込む。

 今度は悔しさのせいではなかった。

「そうだ。そうだよ」

 タクトに訪れた転機。

 それは、発(・)想(・)の(・)転(・)換(・)。

「僕は主人公じゃなくていい。脇役でいいんだ」

 賢者として、自分自身が輝かしく活躍する未来はここに置いていこう。

 そんなことよりも、今は——

 

「——僕が、水色を輝かせたい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。