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初級魔法しか使えない僕が、一撃必殺しかできないギャル勇者と一緒に最強になる話  作者: 八泉


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次のステップへ

「いやー! 今回もギリッギリだったけど、なんとか勝利! 流石(さすが)は灰嶋くん! はい!」

 カナタは両の掌をタクトに向けながら出迎えた。

 タクトは掌を服の裾で軽く拭ってから、ぱちんと合わせた。

「いえい!」

「……うん。でも、水色がいないとやっぱりキツいよ」

 タクトは少し俯き加減で淡々と告げる。

「いやいや、あたしだけ残っちゃった方がキツいって!」

 ケラケラと笑うカナタの頬には、わずかに赤みが差していた。

「……あー、確かに星斬りの時間が稼げないか」

「そうそう! でもやっぱ、二人揃ってないとね!」

 白い歯を見せながらニッと笑うカナタに、タクトは小さく頷いた。

「……あの、よろしいかしら?」

 二人が振り返ると、トモエが気まずそうに立っていた。

 そして、その後ろにはチヒロも。

「……負けましたわ。確かに、以前戦った時よりもはるかに……強かったですわ」

 タクトの前に右手を差し出す。

「お二人は、D組へ挑戦するのかしら?」

 二人は顔を見合わせると、力強く頷いた。

「うん。そのつもり」

「……そうですか。応援させていただきますわ」

 タクトはトモエの手を取り、きゅっと握りしめた。

「……灰嶋タクトさん。魔法の強さは等級だけでは決まらないのですね。その使い方には感服いたしました」

「そんな、褒め過ぎだよ」

「ふふ。次は、上で戦いましょう」

 トモエの真っ直ぐな視線に、タクトは引き攣った笑みを返した。

「……なんでみんな再戦したがるの」

 


 ◇


「かんぱーい!」

「乾杯!」

 カチンッ。

 なみなみと炭酸ジュースを入れたグラスを合わせる。

 夕方のラウンジは人も少なく、二人の声はわずかに反響した。

「この祝勝会も恒例になってきたよねぇ」

「そうだね。もう三度目かな」

「最初は一勝もできないまま退学かー?! なんて言ってたのに、ずいぶん変わったよね、あたしたち!」

「……うん。本当に」

 F組の最底辺から始まり、E組昇格、そして次はD組に挑戦しようとしている。

「……次はD組だね」

「うん。次も勝とう」

「お、自信あり? 灰嶋くんも言うようになったじゃん!」

 カナタは口角をにんまりと上げながら、タクトの肩をぽんと叩く。

「……入れ替え戦の相手は、D組の下位チームだからね。少なくとも火谷野さんたちより強いとは考えづらい」

「そうなん?」

「うん。さっき火谷野さんも言ってたよ。D組の大半より、僕たちの方が強いだろうって」

「え、ならなんで火谷野さんはE組にいるわけ?」

「……まぁ、色々あるんだよ。色々」

 カナタはしきりに首を傾げているが、タクトはそれ以上口に出すことはなかった。

「まぁいいけどさー。それで、入れ替え戦はいつやるつもりなの?」

「うーん……相手の戦力分析もしたいし、一週間後に申し込みに行こうかな」

「じゃあ実際に戦うのは二週間後くらい?」

 タクトは首肯する。

 トモエには十分に勝てると言われているが、今回は勝つための作戦をさらに詰めていきたかった。

「もう、水色に守られるのは……嫌だから」

 ぼそりと呟いたその言葉は、誰にも聞かれることなく炭酸の泡と共に消えた。


 ◇


 ——翌日。

 二人の姿は闘技場の観客席にあった。

 今はD組同士の模擬戦を観ている。

「やっぱりD組にもなると、初級魔法はほとんど使ってないな」

「F組に比べると派手だよね〜」

 カナタは暢気な感想を漏らしているが、タクトからしてみれば敵の魔法等級が上がるのは問題だ。

「火谷野さんと戦ってて思ったんだけど、中級魔法を連発されるとそのまま押し負けるんだよね」

 タクトの劣化魔法式はあくまで初級魔法程度の出力しかない。

 誤魔化しながら使ったとしても、正面から中級魔法とやりあうのは困難だ。

「たしかに火谷野さんの魔法やばかったもんね〜。特に最後のやつ!」

「……まぁあれは少し事情が違うと思うけど」

 顔に疑問符を浮かべたカナタを横目で見つつ、タクトは最後の攻防について考えていた。

 こちらは劣化魔法式で土塊を3枚、さらに水壁1枚を張っていたが、それすら突破したあの魔法。

「威力だけなら、上級並だったんじゃないかな」

 その理屈については心当たりがある。

 コハルにも意見を聞いてみたいところだ。

「あ、そろそろ決まるっぽい」

 カナタの言葉で、闘技場に意識を戻す。

「……結局、はじめの魔法合戦で押し勝ったチームがそのまま勝ち切ったか」

 これは、F組の時とはかなり勝手が違う。

 F組では火力の低い初級魔法がメインのため、勇者候補生のスキルや剣技が決め手になっていた。

 E組では中級魔法が混ざるが、そうそう連発できる者はいない。

 そのため、序盤の魔法合戦で負けても、勇者候補生のスキルで逆転することもある。

 しかし、D組では——

「最初の魔法合戦でほとんど勝敗が決まる。中級魔法を継続して撃てるチームが強い構図になってるんだ」

 見たところ、トモエのように中級魔法を連発できるようなチームは、D組にもなかなかいないようだ。

 とはいえ、やはり中級魔法への対抗策が不十分だとタクトは感じていた。

「それに、D組下位のチームは風か水魔法がメインのところが多い……」

 つまり入れ替え戦では、タクトの霧戦術と相性の悪い敵と当たる可能性が高い。

「何か策を考えないと……」

 タクトは顎に手を当てた。

「……まーた何か一人で考えてるし」

 カナタが口を尖らせてタクトを見るが、その視線に彼が気づくことはなかった。

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