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初級魔法しか使えない僕が、一撃必殺しかできないギャル勇者と一緒に最強になる話  作者: 八泉


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強襲

「両チーム準備はいいか?」

 闘技場に、審判の声が響く。

「はい」

「良いですわ」

「それでは——試合開始!」

 その声と同時にタクトは霧壁を生成し始め——そこで気づいた。

「……どういうことだ?」

「どうしたの?」

「火谷野さん、なんの詠唱もしていなかった」

「マジ?なんで?」

 カナタは首を傾げる。

 タクトにもトモエの狙いは読めなかった。

 疑問を感じつつも、当初の予定通り霧壁を張り終えた彼は、床に氷を張る作業に移ろうとした——

 ——しかしその瞬間、二人の少し左側から人影が現れた。

 足音も立てず、霧を一気に駆け抜けたチヒロが。

「——そういうことか。来るよ!」

「うぇえ?!」

 カナタは突然の侵入者に驚きながらも、当初の想定通りになるべく距離を取るため後ずさる。

 タクトも氷を張ることを諦め、即座に詠唱を切り替えた。

 それを見たチヒロは足を止め、短く声を上げる。

「……トモエ!」

「了解。いきますわよ」

 チヒロは無理に詰めることをせず、その場でトモエの攻撃を待った。

「まずい……」

 霧壁はまだ一枚。

 炎槍を抑えるには足りない。

「水色!僕からなるべく離れてて!」

「了解!」

 カナタは指示に従い、闘技場の隅へ移動し始める。

 それとほぼ同時、戦場に爆炎が煌めいた。

 炎槍が霧壁に激突し、炎が弾ける。

 熱に晒された霧が水蒸気となって散り、一気に視界が開けた。

 しかし、前回戦った時のように炎槍が霧を貫いてタクトたちまで届くことはなかった。

「……確かに、以前とは違うようですわね」

 トモエは顎に手を当てながら小さく頷く。

 しかし、その顔に浮かんでいるのは余裕の表情。

「——ですが、先手を取ったのは私たちですわ」

 

 ◇

 

「安斎のやつ、思い切ったな〜」

「あの霧にはなかなか突っ込めないよね。そこを逆手に取った作戦って感じかな」

 観客席ではシュンとコウが戦況を見守っていた。

 コウの解説に、シュンは首を傾げる。

「……どういうことだ?」

「灰嶋くんたちはトモエと安斎さんが入れ替え戦を見に来てたことを知ってたんじゃないかな。僕たち、霧の爆発に巻き込まれたじゃない? あの爆発を見てたら、普通は霧に突っ込もうなんてそうそう思わない」

「そりゃそうだ。俺たちも灰嶋と三人で落ちるとこだったしな」

 シュンが何度も首肯する。

 あの爆発の衝撃は二人の頭に鮮明に残っていた。

「でも、よく考えたら霧に突っ込むのは良い作戦なんだよね」

「はぁ? なんでだ?」

「まず、安斎さんのスキルが活きる。霧で見えない、足音も聞こえない。これなら奇襲が成功しやすい」

「なるほどな。安斎からしても霧を利用できるってことか」

 コウは一度頷いて続ける。

「それに、もし安斎さんに気づいた灰嶋くんが霧を爆発させたら、次は霧が消えた状態でトモエの魔法に対応しなくちゃいけない。仮に安斎さんが爆発で落ちたとしても、トモエに先手を取られたら灰嶋くんは対処しきれなくなる」

「そういうことか。それにしても、霧壁が消えて自陣に安斎が居るって相当厳しくないか?」

「うん……ここからは灰嶋くん次第かな」

「俺たちに勝った灰嶋を応援するか、幼馴染のトモエを応援するか……悩ましいぜ!」

「……シュンはトモエを応援してあげなよ」

「でもよぉ、灰嶋も良い奴だからなー」

 そんな幼馴染に、コウは嘆息する。

「……そんなこと言ってたら、取っちゃうよ」

「あん?何をだよ」

「……なんでもないよ」

 コウは鈍感な友人に再びため息を吐くと、戦場に視線を戻した。


 ◇


 トモエたちの作戦によって二方向から攻撃に晒されることになったタクトは判断を迫られていた。

 左から迫るチヒロ。

 距離を詰められたら前回同様、あのナイフで即座に落とされるだろう。

 正面ではトモエが詠唱を始めている。

 詠唱を終えればすぐに二発目の炎槍が飛んでくる。

「……っ! 水色! 後ろに!」

「うん!」

 カナタに短い指示を飛ばした直後、詠唱を終えたトモエから炎槍が放たれた。

 対してタクトが選択したのは——水(・)の壁を作ることだった。

 水壁を見たチヒロは、二人にプレッシャーをかけつつも、そこに突っ込むことは避けた。

 即席の水壁は霧壁ほど分厚くない。

 炎槍を止めるには心許(こころもと)ないが、霧と違って水には確かな重みがある。

 無理に突っ込めば動きを鈍らされ、その隙を突かれる恐れがあった。

 一方で、炎槍を放ったトモエはタクトの対応に疑問を感じていた。

 水壁はトモエとチヒロの攻撃を同時に防ぐため、広く薄く展開されている。

 しかし、これでは炎槍を止めるにも、視界を遮るにも不十分。

「どういうことですの……?」

 トモエが困惑する中、タクトは自分に迫る炎を見て、わずかに口角を吊り上げた。

「——間に合った」

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