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初級魔法しか使えない僕が、一撃必殺しかできないギャル勇者と一緒に最強になる話  作者: 八泉


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20/30

灰嶋タクトの異常性

「びっくりしました……まさか本当にただの魔法実験とは……」

「そんなに変かな」

「そんなに変です!」

 コハルは腰に手を当てて頬を膨らませた。

 タクトは気に留めることなく訓練室に入ると、劣化魔法式を使って霧を出現させた。

「……待ってください!」

「え、なに?」

「なにじゃないです!何ですかその魔法式!失敗してるじゃないですか!」

「あぁ、この魔法はこれで良いんだよ」

「……え?」

 今度は目を点にするコハル。

 コロコロと表情が変わるところは、まるで子犬を思わせる。

「僕は初級魔法しか使えないんだけど」

「今まさに中級魔法を使ってるじゃないですか」

「ん、語弊があった。初級魔法相当の出力しか出せないって言った方が正確かな。この霧魔法も、中級魔法ほどの範囲は覆えないし、細かな操作もできないんだ」

「……つまり、あえて性能を削って、省出力を果たしたってことですか?」

「そう。その通り」

「……そんなアプローチ、聞いたことないです」

「まぁ、普通に中級魔法使った方が便利だからね」

 霧が十分満ちたところで、タクトは雷魔法へ切り替えた。

「……その雷魔法も同じ理論で使ってるんですか?」

「そうそう。それじゃいくよ。常盤さんはそのまま外に居て」

 タクトは散歩でもするかのように霧に近づくと、全力の電撃を放った。

 青白く明滅した霧から、耳をつんざく高音が漏れる。

「一体、何を……」

 コハルが疑問を投げかけようとした時。

 ズガンッ!!

 霧壁が内部から膨れ上がり——爆発した。

「きゃあああ!!」

 訓練室の外で見ているコハルですら、恐怖を感じる程の衝撃。

 同時に、爆発に巻き込まれたタクトがダメージ許容量を超えたことで訓練室から吐き出された。

「うぐっ。なるほど。爆発することは再現できた。次は必要な電撃の強さと距離を割り出さないと」

 タクトはスッと立ち上がると、再び訓練室へと入っていく。

「ちょ、灰嶋さん!待ってください!」

「え、なに?」

「爆発に巻き込まれたばかりじゃないですか!大丈夫なんですか?!」

「? そりゃ、訓練室だから平気だよ。痛覚カットしてるしね。ただ、今みたいに即落ちできれば良いけど、中途半端な状態だったら常盤さんに助けてもらうかも知れない。その時はよろしくね」

「……本当に回収役が必要だったんですね」

 その後も何度か爆発し、コハルが活躍する場面も二回ほどあった。

 時間と共にコハルの瞳から光が消え、虚ろになっていったのだが、タクトはそれに気づくことはなかった。

「よし、爆発実験はこれくらいで良いかな。常盤さん、本当にありがとう」

「ど、どういたしまして……よかった。終わった……」

「それじゃ次は風魔法の実験をしようかな」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「常盤さん?あとの実験はそんなに危険はないから大丈夫だよ」

「あ、そうなんですね。よかった……じゃなくて!」

「え?」

「灰嶋さんあなた、さっきから魔法を使い続けてるじゃないですか!休憩しないと魔力欠乏症になっちゃいますよ!」

「初級魔法程度しか使ってないから大丈夫だよ」

「それでも!あれだけ連発してたら普通は魔力が切れます!」

「いやでも、訓練室の中のことだし」

「確かに訓練室内のダメージは出たら治りますが、魔力は回復しません!」

「え?そうなの?……知らなかった」

 タクトは目を見開く。

 訓練室内でのダメージは現実にフィードバックされないのだから、魔力も含めて全て元通りになると思い込んでいた。

「え?!例え知識として知らなくても、感覚でわかりませんか……?魔力がなくなっていく感覚があると思うんですが……」

「うーん……魔力が減るとかなくなるとか、僕は感じたことなくて。ごめんね」

 そう言い残し、タクトは再び訓練室へ戻った。

「魔力が減ったことすら感じない……?」

 コハルの疑問は、タクトの放った風魔法にかき消された。


 ◇


「結局、あの後もずっと魔法を使い続けてましたね……」

「うん。良い実験になったよ。常盤さん、長時間付き合ってくれてありがとう」

「いえ、個人的興味で残っていただけですので……むしろ、色々見せていただきありがとうございました」

 コハルがぺこりと頭を下げる。

「それにしても、灰嶋さんの発想には驚かされます。魔法は組み合わせでさらに可能性が広がるんですね!」

「そんな大げさな……ただ、やれることをやるしかないだけだよ」

 タクトは頬をかく。

 初級魔法しか使えない彼にとっては、この学園で生き残るためには当然やらなくてはならないこと。

 しかし、コハルの目には全てが新鮮だった。

「また、魔法の実験にお邪魔しても良いですか?」

「良いけど、不定期にやってるから次がいつかはわからないよ」

「大丈夫です!私、このたび訓練室管理委員会に所属することになりまして……基本的にいつもここにいますので!」

「そういうことなら、また機会があればよろしくね」

「はい!いつでもお待ちしています!」

 コハルは最後にもう一度、ぺこっと頭を下げた。

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