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初級魔法しか使えない僕が、一撃必殺しかできないギャル勇者と一緒に最強になる話  作者: 八泉


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18/30

決着と余韻

 ——決着。

 しかし、会場は妙な静けさに支配されていた。

「……これが、F組とE組の入れ替え戦?」

「D組同士の模擬戦より激しかったよね」

 そんな声が、わずかに聞かれるばかり。

 観客のほとんどは息をすることも忘れ、その場に張り付いていた。

 

「……素晴らしい」

 銀前リオンは、観客席で一部始終を観ていた。

「灰嶋くんや水色さん、それに対戦相手の二人も、本当にレベルが高いな」

 タクトの魔法を見に来たはずが、気づけば戦いの展開に目を奪われていた。

「やっぱり今年の一年生は当たり年なのかもしれない」

 リオンは、S組に所属する唯一の一年生を思い浮かべていた。

 ——天才。

 そう称される少年を。

「……それにしても、灰嶋くんは面白いな」

 以前見た閉じない初級魔法とは違い、今回は明(・)ら(・)か(・)に(・)初級魔法ではない何かを使っていた。

「中級魔法の威力や操作性を削って、無理やり自分が扱える形にしているのかな?ボクにはない発想だ」

 初級を修めれば中級。

 次は上級、そして超級。

 通常の魔法使いはそうして階段を登る。

 そんな常識から外れたタクトの進化に、リオンの笑みが深くなる。

「でも……それじゃ早晩頭打ちになる。別の工夫が必要だね。灰嶋くん」

 リオンは闘技場から出てきたタクトの姿に目を細める。

「さて、次はどんな魔法を見せてくれるのかな」

 そう呟いて、観客席を後にした。


 ◇


 戦闘が終わった瞬間。

 トモエが何かを堪えるように拳を握りしめるのを、チヒロは横目で見た。

 絶体絶命。

 二人が霧壁を突破した時、シュンたちの勝ちは決まったと思った。

 しかし、タクトはチヒロの予想を超えてみせた。

「予定通り。だけど……予想外」

 まさか、霧壁を爆発させるとは。

 これで今後、タクトの霧壁を突破することは更に難しくなる。

 霧の中で爆発に巻き込まれれば無事では済まないだろうから。

「それに……水色カナタ」

 カナタが放ったのはたった一度の斬撃。

 しかし、それを放つことができたのはパートナーを信じ、自分の役割を全うしたから。

 一人一人ではコウとシュンにも勝てないかも知れない。

 でも、二人なら勝てる。

 タクトとカナタはそういうチームだ。

「……わたしたちとは、違う」

 自嘲する。

 チヒロとトモエはチームだが、信じ合っているわけではない。

 隠し事もお互いにあるだろう。

 しかし、それでもE組トップに君臨している。

 チヒロが闘技場から出てきたタクトに視線をやると、彼と目が合った。

「……そう」

 チヒロは立ち上がると、まだ動けないトモエに声をかける。

「トモエ」

「……なにかしら」

「あの二人が次に狙うのは、きっとわたしたち」

「……そうかも知れないわね。次も勝てば彼らはE組で二連勝になるもの」

 おそらく、あの二人はチヒロたちにリベンジを果たしてからD組への昇格を狙うだろう。

 先ほどのタクトの目が、そう語っていた。

「でも、わたしたちもあの二人に勝てば二連勝。入れ替え戦に挑める」

「……そうね」

「次は、昇格する。わたしと、トモエが」

「……勝ちましょう。D組への挑戦権を得るのは私たちよ」

 トモエが立ち上がり、出口へと歩き出す。

 その目には力強い光が宿っていた。

 チヒロは最後に一度、振り向いて呟いた。

「信頼関係があろうとなかろうと——強いのはわたしたち」

 そして、トモエに続き会場を後にした。


 ◇


 ——模擬戦闘、終了。

  勝者、灰嶋タクト・水色カナタ

 

「あっっぶなかったー!ギリギリすぎ!!」

「本当にね」

 闘技場から一歩出れば、中で受けたダメージはリセットされる。

 しかし、精神的な負担は別のようで、タクトの頭はまだズンとした重さを残していた。

「それにしても……やけに静かだな」

 妙な雰囲気の会場を見渡すと、観戦に来ていたチヒロと目が合った。

 次はまた、彼女たちと戦うことになる。

 彼女から目線を切ると、ちょうど闘技場の向こうからコウとシュンが歩いてきた。

「いやぁー!負けた!」

「今回は結構自信あったんだけどなぁ。灰嶋くんには一杯食わされたよ」

「本当な。まさか自分ごと吹っ飛ばすとは思わなかったぜ」

「……二人が突っ込んでくるから、ああする以外になかったんだよ」

 二人に手を差し出す。

 自然と、身体がそう動いていた。

「またやろうぜ!」

「次は勝つよ」

「……もう、次は勘弁してほしいかな」

 タクトはあいまいに笑って手を握った。

 

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