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初級魔法しか使えない僕が、一撃必殺しかできないギャル勇者と一緒に最強になる話  作者: 八泉


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反省会と新しい教室

「あれ、なんだったわけ?」

「あれは劣化魔法式という新しい試みで」

「そういうことじゃないし。なーんであたしに言わずに使うかなー?」

「……面目ない」

 学生が空き時間に自習したり、友達とおしゃべりして過ごすラウンジの一角。

 そこでは、入れ替え戦に勝ち昇格を決めたばかりの二人による反省会兼祝勝会が行われていた。

「しかも、あたしまで眩しいしずぶ濡れだし。なんで?」

 昇格の喜びも、今はどこかへ消え失せていた。

 カナタは頬を膨らませながら、タクトをジッと見つめている。

 対面に座るタクトは俯きっぱなしで、カナタの眼をまともに見ることすら出来ずにいた。

「あれは、劣化魔法式の特性なんだ」

「特性?」

「この前に使った持続魔法式。あれは魔法式を閉じるってプロセスを省いたけど魔法は成立してた。だから、魔法式は一部を省略しても発動するんじゃないかと思って……色々実験してたんだ」

 カナタが中間テストの勉強をしている裏で、タクトは一人研究を進めていた。

「そこで、中級魔法の持つ要素を削ったら僕でも魔法が発現することを発見した」

「……すごいじゃん。でも、それとあたしが巻き添えになったことと、なんか関係あるの?」

 タクトは首肯する。

「うん。中級魔法の持つ操作性や威力といった機能を削って、なんとか小出力で発現させるのが劣化魔法式だから」

「……つまり?」

 カナタが首を傾げる。

「本来の中級魔法なら光に指向性を持たせたり光球を操作できる。霧も強弱をつけたり範囲を指定できる。でも劣化魔法式で使うと、光球はただ眩しく爆ぜるだけだし、霧は勢いよく広がることしかできないんだ」

「つまり……ブランドバッグのイミテーションみたいな?」

「あー、うん。まぁそんな感じ。だから、普通に中級魔法を使えるなら劣化魔法式を使う意味は全然ない」

「じゃあ、なんで作ったの?」

「それは……僕が中級魔法を使えないから。正規品が使えないから、それなりに工夫するしかないんだ」

 タクトの言い分を聞いたカナタは天井へ視線を移すと、深く息を吐いた。

「わかった。灰嶋くんにとって、劣化魔法式は必要なものなんだよね……多少使いづらくても」

「……うん」

「じゃあ今回のことは許す!でも、次はちゃんと情報共有してよね。私たち、チームでしょ?」

 カナタはタクトの顔を覗き込む。

 タクトは口を引き結んで頷いた。


 ◇


 翌日。

 タクトとカナタはE組へ向かっていた。

「はぁー!緊張する……!」

「大丈夫だよ。水色のスキルはE組でも無敵だから」

「……そういうことじゃないんだけど、まぁ、それが灰嶋くんか」

 カナタの顔に呆れの色が浮かぶ。

「まぁ、おかげで緊張はどっか飛んでったかな。行こっか!」

 二人は教室の前にたどり着くと、E組の担任が立っており、順にドアを潜った。

「——さて、知っているとは思うが、今日からE組に上がった灰嶋と水色だ。なにか一言あるか?」

「水色カナタです!よろしくお願いします!」

「灰嶋タクトです。よろしく」

「みんな拍手!」

 担任の声でぱちぱちとまばらな拍手が起こる。

 一番頑張って拍手をくれたのは、タクトのルームメイトでもあるルイト。

 その他ほとんどはこちらを値踏みするようにジッと見つめていた。

 タクトはルイトに少し手を振ると、担任が示した席へ着いた。

 その隣にカナタが座る。

「……あれが初級オタク?」

「入れ替え戦では中級使ってたんじゃなかった?」

「でも噂では初級しか使えない体質だって」

「あっちが【一撃姫】か」

「え、めっちゃかわいい〜」

「あのスキルはロマンだよなぁ。食らいたくはないけど」

 タクトが耳を澄ますと、新しいクラスメイトたちは新入りの噂話をしているようだった。

 どうやら、カナタの評価は以前とはかなり変わったらしい。

 【一撃姫】という新たな二つ名までつけられている。

 当のカナタは、まだ緊張が抜けないのかカチカチに背筋を伸ばして教卓の方を向いていて、気づいていないようだが。

「——気に入らないわね」

 その噂話たちを切り裂くように、斜め後ろからの鋭い声がタクトの耳に刺さった。

 ちらと目を向けると、長い赤髪を縦に巻いた派手目な女子がこちらを睨みつけている。

 タクトが見ていることに気づいてスッと視線を逸らしたが、その細い指は自分の机をトントンと落ち着きなく叩いている。

「——何かしたかな。見覚えない人だけど」

 タクトは小さく呟いて、ノートを机に広げた。

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