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本を汚した人

ジリリリとけたたましく鳴るアラームを止め、体を起き上がらせる

(朝か...)

結局あの後何時に寝たのかは検討もつかないが、いつの朝より少しだけ眠気が強いのを感じる

布団に入る前にしっかりとアラームをセットした自分に感謝する

このままベッドの上に居ると、また夢の中へ誘われそうなのでとっとと布団から出ることにした

洗面所で顔を洗い、制服に着替え、昨日おかずを詰めた弁当を取り出す

弁当の半分だけ空いた空白を埋めるように炊いてあったお米を詰める

朝ごはん用に茶碗にも米を盛り付け、用意する

今日の朝ごはんは卵かけご飯だ

(昨日までの卵は使い切ったし、これも早めに食べないとね)

未開封の卵パックを開けながら、今後の卵を使う予定を軽く考える

弁当の用意を終え、卵を落としたご飯茶碗と醤油を持ってテーブルに座る

そのまま醤油を3周ほどご飯の上に掛ける

卵かけご飯の色は卵がメインの黄色では無く、醤油が色濃く残った茶色へと変色し、誰が見ても不健康そのものだった

(これが美味いのに誰も理解してくれないんだよね)

小さい頃から味が濃いものが大好きで、母親からはよく引かれていた

そんな醤油味の卵かけご飯を食べ終える

身支度を整え、昨日清掃した本をカバンに入れ、玄関に向かう

「いってきます」

もちろん家の中からの返事は無く、鍵を閉め、学校へ向かった


学校へは徒歩で15分ほど

高校へは始まってからまだ1ヶ月しか経っていないが、道は完璧に覚えた

縁側でお茶を啜っているおじいちゃん

毎日決まった時間、決まったルートを散歩している柴犬とその飼い主

たまに見かける塀の上を歩いている白猫

(今日も変わらない道だな)

見慣れた光景、見慣れた道

しばらく歩くと自動販売機が見えてくる

この自動販売機は家と学校とのちょうど真ん中に位置する場所にある

日によってここで飲み物を調達する日もある

今日は何か飲みたい気分だったので、ラインナップを見る

お茶、水、サイダー、コーラ、メロンソーダ、いちごオレ

(昨日の先輩、あんなに美味しそうに飲むんだもん。目に入ったら飲みたくなるよね。これは先輩が悪いから)

誰に言う訳でもなく、心の中で言い訳のようなものをツラツラと並べながら、いちごオレを買う

自販機からいちごオレを取りだし、ストローを刺し、1口吸う

(甘い...)

今まで飲む機会は少なかったが、今日のいちごオレはより甘い気がした


学校に近づくにつれ、同じように登校する生徒が増えてくる

友達を見つけ、手を振りながら合流する人達を横目に生徒玄関へ向かう

グラウンドの方では野球部やサッカー部が朝練をしている

朝から大変だな、なんて思いながら靴を履き替え、時計を見る

時刻は8:05

HRが始まる8:20までまだ少しだけ時間がある

私はこのまま本の真相を探るべく図書室へ向かうことにした


図書室のドアを開け、周囲を見渡す

(良し、昨日騒いだ人って事はバレてないね)

周りの目線を気にしながら受付へ向かう

「あの、すみません」

「ん?あ、昨日俺を脅そうとしてた子だ」

受け付けにいたのは運悪く昨日受付してくれた先輩だった

「...その節はすみませんでした。それより聞きたいことがあるのですが」

「どした?」

少し真面目に話したからなのか、半身だったのを正し、こちらに身体ごと向け、話を聞く体勢を取ってくれた

「私の前にこの本を借りていた人を知りたいんです」

そう言うと、カバンの中から昨日借りた『眠れない夜』を差し出す

「ん?どれどれ...」

先輩は私から本を受け取り、パソコン作業に取り掛かる

「うん…これ借りてった君の前任者は堀北だね。」

「堀北!?堀北先輩ですか!?」

まさかここで聞くとは思ってなかった名前に驚き、声を荒らげてしまった

「そ、そうだけど...って君、ここ図書室だからもう少し声量下げてくれるとありがたいんだけど」

「す、すみません...」

1度ならず2度までもやってしまった自分に少し自己嫌悪する

「それに、君が昨日探してた新刊も堀北が借りて行ったね」

「...え!?そう、なんですね...」

まさか木下で寝ていた人が堀北先輩だったとは思わなかった

「君は堀北と知り合いなのかい?」

「あ、はい。昨日ちょっと」

「そっか。っと、そろそろHR始まるから教室戻りな。」

パソコンに表示されている時計を見たのだろう、教えてくれた

「それもそうですね。ありがとうございました」

ペコッと頭を下げ、出口に向かおうと背中を向け、歩き出す

「...堀北は昼休みになると、いつもグラウンドの木の下でご飯を食べることが多いから行ってみると良いよ。多分今日も昨日借りた本を読むんじゃないかな」

「気が向いたら行ってみます。ありがとうございます」

独り言のように先輩が呟いているのを聞き、小さくお礼を言い、図書室を後にする

(堀北...!堀北秀...!本を汚すなんて許せない!しかも新刊まで汚すとかそんなのは阻止しないと...!)

と、心の中で決意を固めた

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