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神などいない~世界の始まりと終わりに待つ者~  作者: ああかき


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神などいない(5)

「いいのか…?」


オリオストの問いかけはラリスに向けられたものでは無かった。

ハージンにだ。


ラリスの術によって、いつ爆発させられるのか分からない状況だというのに、彼の表情や言葉に焦りは感じられない。


「貴様は村の者たちを救いたいんじゃなかったのか?」

「あぁ、そうだ」


答えるハージンに、あの水晶のついたステッキを見せる。

その様子を警戒しながらも、興味津々という様子で見守るラリス。


!!


一瞬オリオストの口元が緩んだ気がしたが、ハージンもラリスも気づく事は無かった。

事実、自爆させる爆弾のスイッチを握り優勢に見えるラリスと、圧倒的に不利に見えるオリオストの立場は、わずか数分の後に逆転する。


「俺がどのようになるのか思い描くしかないが、魔力による自爆とは、すべてが吹き飛ぶような爆発をイメージする。だが、この量の魔力が爆発すれば多大な被害がでる。そこに感じる波紋はそれを防ぐ結界であると見た。俺だけが爆発する。つまり、俺が持つこの水晶も吹き飛ぶことになる。そうなれば、あの者たちは助かるまい」


ハッとし、ラリスの方を見るハージン。


「待ってくれ。こいつの言うように、あの水晶にはたくさんの命が封じ込まれている。水晶を壊せば、アゼク村のみんなが死ぬことに…」


「へぇ、そんな高度な技を使えるのに、この程度の結界術を解けないなんてとんだ間抜けだったわね」


人の命がかかっていると伝えたのに、全く意に介さない様子のラリス。


「姿を現す前に使えば、私の事を封印できたかもしれないのにねぇ」

「よく言う。逆に封印されてはかなわぬ…」


「賢明ね…最初の攻撃がそれだったなら、その時点で決着していたわ!」


「いや、だから…」

尚も説明しようというハージンを制し、


「関係ない。今こいつを逃がしたら、アゼク村の人数の比じゃない多くの命が犠牲になる。非情と言うならそれもいい、守護者として剣が守られたなら、それでいい」


逃げようともがくオリオスト。

背中を掴まれたとでもいうべき体勢。

まるでマリオネットだ。


そんな状態であるにもかかわらず、その表情は不自然なまでに焦りが感じられない。


「無駄よ。いかに高位な術者だとしても一度捕まれば逃げられない」

手をあげるラリス。


術を行使しようとしている?


「待ってって!!!」

あわててその手を抑えようとするハージンだったが、飛び込んだその空間にラリスの姿は無い。


一瞬で遠くへ移動するラリスのそれはテレポートしたのかと思わせるくらいの速さだった。


「あなたも危険だけど、コイツはサタンの存在を知っている。封魂の術まで使うとなれば、今始末しなければ、世界が再び終わる…」


「フウコンの術?」

「アゼク村のみんなを封じた術…」


言いつつ、術の発動の為、力をこめようとするラリス。

しかし、視線の先の光景が信じられず、二度見する。


(バカな…捕らえていたはず…)


慌てて、オリオストを探す。

自信に満ち満ちていた彼女の顔から余裕が消える。


「いない…」


サーッ

血の気が引く…


それまでオリオストのいた場所には魔力による発光体が残るのみで、肝心の本人が消えていた。


「なかなかの高速移動…しかし、空間転移には程遠いな」

上から響くオリオストの声に振り向くと、空中で制止するオリオストの姿があった。


(なぜ……あの術から逃れられるはずが??)


「クック…なぜ……あの術から逃れられるはずが??残念だったな。お前の考えは全て聞こえているのだ」


ラリスが心の中で思ったのと同じ言葉を繰り返しながら地面に降り立つオリオスト。


「!!!!!!!」


「わざとかかってやったんだよ貴様の術にな…守護者と呼ばれる存在がどの程度の物か知りたかったが…この程度とは…相当自信のある術だったようだが効かぬよ」


「ど、どうやって逃げ出したのか知らないけど、あなたの魔力、相当減ったはず…今のあなたなら…」

「結界術無しで勝てるはずよ」


「!!!!!!」


またしても考えを読まれた。

しかも、動揺を誘う為に言った事を気にする様子さえ見せないオリオスト。


「魔力が減っている?この程度が俺の魔力の限界だと?フッ笑わせるな…」


凄むオリオスト。

瞬間、何かが爆発する。


「うわああああああ」


大声を上げたのは、水晶を取り戻そうとオリオストに近づこうとしていたハージンだ。

吹き飛ばされ、かなりの勢いで叩きつけられる


ラリスも吹き飛ばされたが、魔力の壁で威力を抑えたのか叩きつけられる事なく、すっくと立ちあがる。


「くっそ…」

肩を気にするハージン。


痛めたか…


「クック…敵わないかもしれない…強者にあった弱者の言葉…いつ聞いても心地いい…絶望の淵を味わうがよかろう」


ハージンなど気にする様子の無いオリオスト。

震え、立ち尽くすラリス。


(フィリア…姉ちゃん、駄目かも…)


「フィリア?誰だ?」

「…あ、あなたには関係ない!!」


「確かに…しかし、貴様が宝剣の守護者だと考えれば、その者も、三神器の守護者である可能性は捨てきれまい」

「三神器の事まで…当然か…」


オリオストに険しい顔を向けるラリス。

ルビーのようだった彼女の眼が青色を帯びた刹那、全身に青き光をまとう弾丸と化す。


弾丸は真っすぐオリオストを目指す。


「!!!!!!!」


オリオストの表情を変える高速の動き。

しかし、これも読まれていた。

避けたというより、消えたとしか表現しようのないオリオスト。


目標を見失い、地面に長いブレーキ線を描いてとどまるラリス。

それほどのスピードをもってしても、触ることすら出来ない。


「お前が俺に敵う事はない…どのように動こうとするか、全て伝わる。瞬間、空間を越える…貴様の攻撃が俺に届くことはない」


「空間を越える?」

「空間転移…テレポートと言えば伝わるか?高速移動などという限界のある能力とは、訳が違うのだよ」


「テレポート…そうか!それで結界を抜け出せた…ん?でも、あの空間内では、結界にはじかれて術など行使できるはずが…」

「結界を使う事がわかっていた。ならば、こちらも結界を張れば造作ない。とはいえ、ものすごい速さで魔力が吸い取られたのには焦ったがな…仕掛けて来るのがわかっていなければ危なかった…」


「おじいさまの術が破られるなんて…」

「想定外だろう?心の中は安全など、誰が決めた?相手の能力を封印する術か…守護者の持つ能力としては一級品だろうが、一歩及ばなかったな」


キッとオリオストを睨みつけるラリス。


(心が読める?なんて卑怯な…)


「おかしな事をいう…」


心の中で響いた声だったが、卑怯という言葉に反応するオリオスト。

続く怒りととれる表情。


「自分に無い能力で戦いを有利に進められると、必ず弱者はほざく。卑怯だとな!!!だが違う!!俺とて、初めからこの能力を持っていたわけではない!!思い描き、必死で願った!!死にかけてまでだ!生き残るにはこれしかなかった!だが、考えが読めたとて、それだけで勝てる事は、ほぼ無いに等しい。次にどう動けば有利に立てるか考えられるセンスと実力が伴わなければ…貴様には分かるまい!!選ばれた者にしかわからない苦悩!!」


「わからないし、卑怯者の言い訳にしか聞こえないわ」


一蹴するラリス。

憮然とするオリオスト。


「よほど、死にたいようだな…」


「あなたを止める…」

「滑稽だな、守護していた剣をとられて尚、守護者ヅラとは」


「まだ奪われただけ!!そこにある!!取り返しはつく!!!」


「貴様にも命をかける理由があるという事か…」

「そういう事…」


自らを奮い立たせるためか、それとも敵わぬ敵を前にしての諦めからなのか、ニっと笑って見せるラリス。


再び青い炎のような光を帯びるラリス。

しかし、またしても今の今まで目線の先にいたオリオストの姿が無かった。


「ど、どこ…」

「健気に戦う道を選びし者よ…相手の実力を見誤った報いを受けよ」



トン…



背中に感じた感触。

背後を取られ、振り向く暇もなく持ち上がるラリスの体…


オリオストの手の動作に従い、オリオストを越え、ラリスの体は空高く舞い上がっていく。


(う…動けない…!!!)


「丁度いい、俺の吸いだされた魔力で貴様が俺にしようとしていた事を再現してくれよう」


まだ残る結界と、オリオストの魔力によって構成された発光体。

そこに叩きつけ、爆発させるつもりだ。


「守護者を名乗るには実力がなさ過ぎたな…」


オリオストの魔力に包まれ、自由を奪われた様子のラリス。

振り下ろされるオリオストの腕。


すごい勢いで、魔力の発光体へと進むラリスの体。


「駄目だ!!!!」


叫ぶと同時に、凄まじい勢いで飛び込む者がいる。


ハージンだ。

先ほど痛めたはずの肩など気にするそぶりもなく?ラリスの体をキャッチ!!

しかし、ついた勢いは収まらず、何回も転がりながらやっとという様子で止まる。


剣はどこなのか持っている様子は無い。

すぐに立ち上がるものの、彼の左足は、あり得ない方向に曲がっていた。

にもかかわらず、力強く叫ぶハージン。


「今度こそ死なせない!!!」



               ~第6話に続く~

この小説、はじまりは中学生の時に中途半端な気持ちで描き、数ページで描くのをやめてしまった漫画でした。

でも、いつか完成したいという気持ちだけは本物でした。


そこから数十年かけて、ようやくハージンというキャラクターと向き合うことができました。


僕にとって、ハージンは同志であり、戦友です。

僕の中にあるヒーローそのものです。


絶対に後悔しない物語にしたいので、自己満足に陥らないよう、最後まで読んでてよかったと言っていただける作品を目指してまいります


すこしでも気になったら、ご一読いただければ幸いです。

よろしくお願いいたします。

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