神などいない(4)
「どうやら、ツキはこの俺が持っていたようだ。神殺しの剣と、ハージン・デュエル…探し物がこうも簡単に見つかったのだからな…」
「神殺し…??」
驚いたのはラリス。
ハージンはきょとんとして見ているだけだ。
「なんだ、さっきの記憶喪失というのは、あながち間違いでもなさそうだ。こいつはいい…神を殺し、地上を闇に堕としておきながら知りませんときた…クックックどこまでも楽しい男だ」
何を言ってる?
身に覚えのないことを言われ、必死に記憶をたどるハージンにラリスの声が飛ぶ。
「まって、あなたが神殺し?」
「だから、知らないって!!」
怒るように言うハージンに、ニヤニヤ面白がるマジシャン。
「よく言う。そこまでその剣の能力を引き出しておいて、自分の物でないなど、通用すると思うのか?」
「いや、それは…なんかこう、インスピレーションで…んな事より、お前、二日後とか言ってなかったか?」
「ふん、そんなもの、信じていたのか?魔女が剣を守っているという話だから、貴様をおとりに、隙をついて、奪おうと思っていただけだ。どこの馬の骨ともわかっていない奴に期待などしてどうする?こっそり後をつけて二人とも片付けられたら、楽だと思っただけだ。まぁ、この程度の魔力なら警戒する必要など無かったがな」
「なんですって、甘く見てると後悔するわよ!守護者という所以を今から証明する」
自信に満ちたラリスの顔から笑みがこぼれる。
瞬間、先ほどとは比べ物にならない範囲に支配による力が発生した。
術を完成するのに十分すぎる時間が経っていた。
さっきまでのずしんと抑えこむ力から、キュゥウウっと締め付けるような衝撃が二人を包んだ。
ん?
いや、二人では無かった。
力の支配を受けたのはハージンだけだった。
どうやってか、マジシャン男は、一瞬にして遠くに逃げていた。
「ふん、伊達に守護者では無いというわけだ…」
マジシャンは反撃するでもなく静観している。
避けたとはいえ、かなり巨大な力の地場とでもいうべき場所が出現していた。
「な、なんだ…これは…」
徐々に締め付ける力…
「なんで…俺…」
ハージンの表情が歪む。
「神殺しと聞いて、ただ、剣を返してもらうというわけには、いかなくなった…被害者面しないでくれるかしら」
更に強まる力。
ラリスの表情にはまだ余裕がある。
なんて、圧力だ…
少しでも気を緩めれば、体が爆ぜる…そんな恐怖さえ覚えてくる力。
だが、冷や汗さえ噴き出すハージンの心の中で、
(力など存在しない…我の前では無力に等しい…)
声が響く。
(だ…れ…?)
心の声を出しながら、ハージンは右手に何かを感じる。
声の主は、ファリエスの宝剣…なのか?
「馬鹿な…」
またしても愕然とする守護者ラリス・マーキュリー。
「ち…力が吸いとられる…??」
剣の柄から発せられた光の双剣がグオッと両翼を広げるような形をとると、空間の振動があって、そこから無数の光の針とよぶしかない線がラリスへと飛ぶ。
(だめだ!!!!)
あせるハージンが心の声で待ったをかける。
すると、ラリスを狙った光の針は彼女を貫通することなく、彼女の手前の地面に突き立てられていた。
「な…なんで守護者である私に攻撃を…」
(なんていう…力だ)
宝剣の成せる技に驚きを隠せないハージン。
(何を驚く…自分の能力ではないか)
「俺が…」
攻撃したというのか?
ラリスを傷つける気は毛頭無い。
しかし、今放った光の針が自分の仕業だという宝剣。
確かに針が伸びる瞬間、ダメだと思った途端に、針は方向を変えた…
先程剣先を伸ばした際は、自分の意志で刃先を伸ばしていたが、今回は自分の意志というよりは、従わせたと言うべきか…
「クック…主ありて無かろう魔剣ファリエス。異名は本当の様だな」
ハージン達の心の中の会話を聞いていたとしか思えないマジシャン。
(暴走?まさか…ね)
魔剣という言葉に慌てた様子を見せたラリスだが、
「それは、太古の話。清められ、宝剣となった」
言い聞かせるように、言った。
「フン、では、そこにある剣から感じる禍々しい力は何だ?魔王サタンを彷彿とさせるその邪気!!」
「サタンですって!!」
「おっと、これは軽率だった…」
「あなた、宝剣が何か知ってるわね?」
「ふっ知っていたら何だというのだ?どうせ、俺はそれを手にする。あいにくとここに我が魔力を超えうる存在はいないようだが?」
「大した自信。けれど残念ね。あなたのような魔力バカが狙ってくるとわかりきっているのに何の対策もせずに、守護者を名乗るようなバカはいない」
「対策だと?この俺にか?面白い…」
いぶかしげに周りを見渡すマジシャン。
「やってみるがいい…」
「その自信…過信だったという後悔に変わるかもね」
「その言葉、そっくり返すとしよう」
「自信家さん、あなたは私を知っているようだけれど、私は知らない。これって、不公平だと思わない?」
「なんの話だ?」
「ハージンの名前同様、私が名乗っていたのも知ってるでしょう?」
「フン、これから死にゆく者の名などに興味は無い」
少しムッとしながらも、ラリスはこだわった。
今からしようとする事にはどうしてもマジシャンの名が必要だった。
「あなたが興味なくても、私は興味あるの、ほら、よく聞くあれよ、冥土のみやげ?ってやつ?」
「変わった奴だ…よかろう…よーく覚えておくことだ。俺の名はオリオスト・ロン・ネイジャー」
ついに、聞き出せた名前。
ガッツポーズ。
一連の不審な動きに、けげんな顔をするオリオスト
「何をしている?」
「気づいていない様ね…」
「ムッ…!!!」
気づいた時には遅かった。
マジシャンの体が発光した。
かなり広範囲に広がる光。
「ふ~ん、言うだけあるわね大した魔力」
「な、何をした?」
「知れたこと。あなたの魔力を使って自爆してもらう…」
「なんだと…!!!」
「言ったでしょう。私はラリス・マーキュリー宝剣の守護者」
~第5話に続く~
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