神などいない(3)
「私はラリス・マーキュリー!!守護者!!そうやすやすと、ファリエスの宝剣を渡すわけにはいかないわ」
矢継ぎ早に、言葉を並べ立てるラリス。
この無用と思われる言葉に、自然だが、やや違和感を覚えるはずの手の運びや足さばきにハージンの注意が向くことは無かった。
そして、それは、言葉が言い終えられた後、すぐに起きる。
ズーン…ズシッ!!
まず感じたのは足元の違和感。
足首から下だけ何かに引っ張られているかのように重い。
「な…なんだ!!!」
若干声が裏返っている。
「次は手よ…」
クイッと挙げられた右手が反転し甲を向けた瞬間、後ろ手に引っ張られるハージン。
腰折れて、無理やりブリッジさせられた形だ。
「グワァアアアーッ!!」
「ふん、呆気ない幕切れね。ハージン」
言い終えた彼女の手には再び魔法陣と光の弓矢…
だが、彼女の手が止まる。
数秒の間
…矢は放たれなかった。
「ハー…ジン??あれ、あなた名乗ったっけ?」
言いながら混乱するラリス・マーキュリー。
(てか、ハージン??誰それ??)
思いながらも、頭の隅の記憶に何か引っかかりを感じる。思い出そうとして成せない、あの歯がゆさ。
しばらくの葛藤の後、頭を抱えるラリス。
そして、それは響く。
彼を殺してはいけない…
(何、今の?)
脳裏に浮かびでた声…
それは、自分の声ではなかったか?
「~~~~~~あぁ、ダメ!!あなたを殺そうと思ったけど、なぜか記憶の片隅に殺してはいけないと浮かんでくる。あなた、本当に何者???」
「~~~~~~~」
必死に何かを訴えるハージンだが、中途半端にブリッジさせられた状態を無理に耐えてる苦しい状況。
その目には怒りとも愛想とも測り兼ねる表情と共に涙が浮かんでいる。
(コノヤロー早く解きやがれぇ…)
「あ、そうか…」
ようやくハージンの拘束に気づき、術を解く。
刹那、飛ぶ斬撃!
それはファリエスの宝剣から伸びる光の刃。
「!!!!!!!」
慌てるラリス。
しかし、光の刃の伸びきった先に、ラリスはいなかった。
ハージンに初めて会った時同様、高速移動によってかわしていた。
いや、かわすというのは間違いで、避けていなくても当たることの無い位置に光の刀身は落ちていた。
狙い損ねた?
否、ハージンの表情から読むに、距離を開けるのが目的だったようだ。
しかし、それに気づかないラリス。
「私の術をまともに喰らって、すぐに動けるなんて…」
警戒心ばかりが募っていく。
だが、
(けれど、何?この感覚…懐かしい?)
裏腹な高揚感。
そんなことなど思いもしないハージンが聞く。
「なぁ、この剣、必要なんだ…貸してくれよ」
「それは、貸すとか貸さないとかじゃ無い。大事な物。それを守る為に私はいる。少なくともあなたのような人に渡すわけにはいかない。返してもらうわ」
「なら、仕方がないな。この剣もらってく」
「逃げられると思って?」
再び波動の準備を始めるラリス。
先ほどハージンの動きを封じたものは波動と呼ぶ。
ずしんと重い空気が場を支配する。
また動きを封じられ、間抜けな格好をさせられる…
はずだった。
しかし、普通に歩くハージン。
(な、きかない?)
「なぁ、やめてくれよそれ(波動)」
言いながら近づき、呆気にとられるラリスの手を掴むハージン。
先ほど、晒した醜態は何だったのだ…術は完成し、今も波動は発生し続けている。
だが、力強く掴まれた手。
(こんな無防備な状態で…波動が…効かない…何?)
もはや、恐怖すらおぼえるラリス。
「あ…あなた…何者…」
「知ってるんだろ?俺はハージン・デュエル。あいにく、さっき目覚めてから名前以外の記憶がハッキリしなくてさ、記憶喪失ってやつ?だから、あんたの事はわからないが…俺のことを知ってたりする?」
「し、知らないわ…あなたなんか!」
「イ!?でも、確かに俺の名前…」
「知らないって言ってるでしょ!!」
手を振り払うラリス。
横っ飛び、今度は自らの意思で距離を取る。
「いや、俺、今の今まで名乗って無かったよな…なのに何故俺の名を…?」
今度はハージンが困惑した様子でラリスを見返している。
そのラリスの表情が険しくなる。
何かを見て驚いた様子。
気づいたハージンが振り返ると、ハージンも驚きの表情を浮かべる。
「お前は…!!!」
「ククク…こいつは面白い。まさか貴様がハージン・デュエルだったとはな!!愉快な話だ」
あのマジシャンのような男が立っていた。
~第4話に続く~
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