神などいない(15)
「どうした?終わりか?」
けしかけるハージン。
「まだです…」
その華奢な体に似合わない跳躍を見せるシレイス。
ゆったりとしたローブがマントと共に翻るが、動きにくそうな様子は無い。
先ほどのハージンに負けないほど見事な注意を引き付ける走りから体を沈める。
そのまま足払い。避ける事を想定していたかのように的確に飛び上がるハージンを捉える上段蹴り。
だが、当たったかに見えた蹴りは空を舞う。
ひらりと体を反転させ避けたのだ。
と、ハージンが消える。
「??????」
突然のことで、目が泳ぐ。
!!!!!
気付けば、手を付き逆立ちになって、両足をぶん回すハージンがいた。
間一髪、後ろ飛びするシレイス。
!!!!!
驚きの連鎖。
避けたはずのハージンの足が、まるで吸い付くように伸びてきて、自分の両脇を挟んだ次の瞬間、馬乗りの圧倒的に不利な状況になったのはシレイスだったのだ。
しかし、驚きから一転、笑みを浮かべるシレイス。
それに気づいたディエマが飛び出す。
感じたのはシレイスの危険な意志…
「よせぇ!!!」
やめろと訴えるディエマをよそにそれは実行される。
一瞬のきらめき…
先ほどのものとは比べ物にならない爆発が起こった。
かなり離れた位置から近づこうとしたディエマさえ吹っ飛ぶ威力。
だが、ハージンは爆炎の遥か上空にいた。
(自爆…??)
何事もなかったかのように降り立つハージン。
「そんな…」
決死のシレイスの攻撃をかわしたというのか…
吹っ飛んだ勢いを殺すために転がりながら、驚きと共に怒りを覚えるディエマ…
「うあああああああ!!!」
咆哮するディエマ。
気付けばハージンへと走り出していた。
何、平気な顔してやがる!!!!
目が!
叫びが!!
全身で訴える…
普通なら圧倒的な威圧感を与え、攻撃に移れたろう…
しかし、冷静さを欠いた攻撃は空しくかわされ、腹に無情な一撃をくらわされる事になった…
ドン!!!
「ごほっ…がっ…て、てんめぇ」
命をかけた攻撃を!!!
叫ぼうとしたディエマの脳裏に響く声があった。
(死なせない…言ったはずだ)
ハージンだ…
ディエマの方など見向きもせずに、シレイスの残骸が転がるであろう爆炎の方を見続けている。
「くっそ…何が死なせないだ…!!」
よろめきながら、なおもとびかかろうとするディエマに、
「ディエマ!!」
シドが声をかける。
指さすシドの示す方を見る。
それは、爆炎と思われたものだった…
(うごく…だと?)
目にしている事が信じられず二度見するディエマ。
「シ…シレイスまさか…!!!」
爆炎は炎に包まれるシレイスだった…
息も絶え絶えの様子で、燃えただれる身体を引きずるようにして前進するシレイス。
もはや、喉も焼けてるのだろう、口は動いているが言葉は響いてこない。
死ぬ…
シレイスが死ぬ…
「!!!!!!!!っああああああああ」
声ならぬ声をあげ、ハージンに向かって再び突進するディエマ。
激情…
まさにそんな言葉しか出ない衝動から出る行動。
しかし、ハージンの取った行動はその衝動にストップをかけるにたるものだった。
燃え盛るシレイス。
ただれ、悪臭さえ放つその体を抱きとめたのだ。
燃える!!
燃え移る!!!
誰もが浮かべる光景。
しかし、それは起きなかった…
目の前の奇跡…
燃え盛る死体同然のシレイスの体から炎の影響を受けることなく難なく抱き留める光輝くハージン。
それだけでも驚きの光景というに、ハージンの体を包む光が炎をかき消すと同時に、原型すら失おうとしていたシレイスの体を復活させたのだ…
無意識に行使したその能力は、単なる再生や治癒という言葉では言い表せない、もはや奇跡と言っていい能力だった…
あの時、この能力があれば、彼女も救えたのだろうか?
普通ではない、ありえない能力…
全てを戻す奇跡の能力…
爆発も爆炎も
何事も無かったかのようにシレイスから離れるハージン。
「あ…あ…あ…」
あまりの光景に言葉が出ないディエマ。
手にした剣を落とし、膝から崩れた…
「死なせない…そう言ったはずだ…」
奇跡を起こしたハージンが笑顔を向けつつ静かに告げた。
~第十六話に続く~
この小説、はじまりは中学生の時に中途半端な気持ちで描き、数ページで描くのをやめてしまった漫画でした。
でも、いつか完成したいという気持ちだけは本物でした。
そこから数十年かけて、ようやくハージンというキャラクターと向き合うことができました。
僕にとって、ハージンは同志であり、戦友です。
僕の中にあるヒーローそのものです。
絶対に後悔しない物語にしたいので、自己満足に陥らないよう、最後まで読んでてよかったと言っていただける作品を目指してまいります
すこしでも気になったら、ご一読いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。




