神などいない(16)
「私は…」
綺麗すぎるくらい修復された服装
状況を理解しようと努めるシレイス。
そこへ、ハージンがのけ反るほどの勢いで、走り寄るディエマ。
「バカヤロー!!!!」
叫ぶなり、シレイスの胸倉をつかんだ。
「何で…何でだよ?」
ディエマに揺さぶられ、記憶をたどる事が出来ないでいたが、
「イフリートなんて…!!!」
ディエマの一言で思い出した。
どうやら、爆炎に包まれたのは、魔法の行使によるものらしい。
イフリート…
精霊の力をその身に降臨させ、究極魔法を放つ。
失敗すれば、強大な魔力に耐えきれず、身を滅す危険な物だった。
「そうか…失敗したのでしたね」
「……のでしたね…じゃねぇ…」
言葉つまるディエマの顔は涙でクシャっていた。
「お前が死んだら!!誰が村を守る?無鉄砲な俺の事を誰が止めるんだよ!!!何よりアネさんの仇は誰がとるんだよ!!」
泣き崩れるディエマ…
アネさんとはラリスの事らしい。
「…アネさんが居ないのに、イフリートなんて…」
「すみません…私にはまだ早かったようです…」
「何で完成もしてない魔法を…?」
「勝ちたかった…」
「それだけ…?」
「えぇ…私に残された方法はこれしかなかった…」
「バッキャローあるだろうが!!」
「え?」」
「勝ちたいだけなら俺を…」
ディエマの言葉を遮るように首を振るシレイス。
「戦士の門で死を覚悟した…あの時の私は無力でしたから…バーサクであなたを狂人に変えた…でも、もう二度とあんな思いはしたくない…親友を危険にさらしてまで助かろうなど…」
ハッとするディエマ。
同時にシレイスを掴む手に力を込めるディエマ。
「何度だって…」
「えっ」
「何度でも使えよ!!俺が必要なら!!!お前を助けられるなら…何度だってなってやるさ!!」
「ディエマ?」
「ダチ(友)だろうが!!」
詰めるディエマの涙であふれる目を見ながら、シレイスは申し訳なさそうに…
けれど、まっすぐにその眼を見返す。
「嫌なんです…」
「あ?」
発せられたシレイスの言葉の真意を推し測るように、涙をぬぐいながらディエマは思いをぶつけた。
「バーサークなら、最悪気絶させられて終わり!!けど、お前のイフリートは失敗すれば必ず死ぬんだろうが!!!今だってハージンがいなきゃ…」
「駄目なんです!!」
シレイスの魂の叫び。
「私は無力でした…今回もまた…無力…師匠を救うことが出来なかった…ラリスを…救えなかった…」
流れる涙…
思いのたけを吐き出す。
「何のために私は…魔法を教えてもらったのか…ここぞという時に加勢もできず…ただただ無力な存在…こんなに情けないと思ったことは無い…そんな私にハージンはチャンスをくれた」
ハージンを見るシレイス。
言葉は続く。
「…私は全身全霊をかけてこの勝負だけは負けるわけにはいかない…そう思ったのです…今持てる能力の全てをぶつけなくては意味が無かった…そうして残された希望…それがイフリート…それに賭けるしか無かった…賭けは失敗でしたがね」
言い終えるシレイス。
拳を握るディエマ。
「そ………くれよな」
言葉を詰まらすディエマの声にならぬ声。
「???」
分からない様子のシレイスに、腕で涙をぬぐいながら向き直るディエマ。
「相談しろ…って言ったんだ!!」
「ディエマ…」
「俺たちは親友…お前いつか言ったよな?だったら相談しろ!!」
泣き跡を隠すようにまた腕でぬぐいながら言うディエマ。
照れ隠し的な表情…
そんなディエマに、仕方ないと言うように肩をすくめて、
「わかりました」
返事をすると、今度はハージンの方に向き直る。
「完全に私の負けだ…そして、ハージン…奇跡の能力を持つあなたでも、ラリスは救えない状況だった…」
復活と再生…
その身をもって体感したのだ…
納得…
するしかなかった…
口惜しそうに下を向くシレイス。
同調するハージンの心。
彼もまた納得など出来るわけは無かった。
「そうだ…俺は救えなかった…お前の言うように、こんなに御大層な力を持ちながら、いざという時には使い物にならない…それが今の俺だ…本当に救えなかったのか…今も考えてしまう…それだけはお前らと同じ思い…」
苦々しい表情を浮かべるハージン。
そんなハージンに、笑みを浮かべて手を差し出すシレイス。
何?というハージンに、せかすように上下に振られるシレイスの右腕。
「私たちの仇討に協力していただけないでしょうか?」
ますます、困惑の表情を浮かべるハージンに、
「そうか!!そうだよ!!」
今度はディエマが走り寄る。
「頼む!!力を貸してくれ!!今の俺達にはあんたの能力が必要なんだ」
あくせくするディエマの様子に笑みを浮かべ、ハージンは言った。
「協力するも何も、俺の方こそ、この先の案内を頼めなけりゃ、右も左も見えない…こちらからお願いしたい」
「契約成立ですね…」
しっかりと、握られる手…
それが不幸の始まりになるなど、その場に居た全員知る由も無かった。
~第十七話に続く~
この小説、はじまりは中学生の時に中途半端な気持ちで描き、数ページで描くのをやめてしまった漫画でした。
でも、いつか完成したいという気持ちだけは本物でした。
そこから数十年かけて、ようやくハージンというキャラクターと向き合うことができました。
僕にとって、ハージンは同志であり、戦友です。
僕の中にあるヒーローそのものです。
絶対に後悔しない物語にしたいので、自己満足に陥らないよう、最後まで読んでてよかったと言っていただける作品を目指してまいります
すこしでも気になったら、ご一読いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。




