神などいない(13)
(抑えられないかもしれない…だと?)
対峙するシレイスとハージンを見ながら真剣なまなざしを向けるディエマ。
構えるシレイスに対して、自然な感じで佇むハージン。
「本当にいいんだな。本気で…」
「勿論です。そうでなくては、戦う意味が無い…あなたは師を救えなかった…私はこの怒りをぶつけるのです。容赦などしない…」
「安心した。これで、本気になれる…」
「余裕ですね…」
シレイスの表情がいたずらっぽく歪んだ…瞬間!!
「!!!!!」
少し離れていたはずのハージンのすぐ下から、光弾を構えたシレイスが出現していた。
シュンと風切り音を横に、放たれた光弾を避け、しゃがむハージン。
右頬伝いに髪の毛を持ち上げただけの光弾は空中で掻き消える…
同時に跳び越えるような跳躍でかわすシレイス。
ハージンの流れるような足払いは円を描くだけに終わる。
「と…!!!」
シレイスを驚かせたのは足払いから重力を無視するかのような動きで高く舞い上がり、耳元をかすめた旋風脚。
たまらず距離を取る。
「やるな。魔導士みたいだから、ラリスのように離れた位置から魔導攻めかと思ったんだがな…」
「ラリスに最初に習うのは、武道です。それも実践的な組手…身を守れてこその魔力だと知っているのです」
そういえば、最後の方で彼女は、オリオストに突進したのだったか…
「そうか…じゃあ、今度は俺から仕掛けてみるとするか」
「いえ、私のターンはまだ終わってません」
「何言って…」
!!!!
気づいた時にはもうそれは、よけきれない位置まで迫っていた。
直撃こそしなかったものの、ハージンの左手が跳ね上がる。
「よっしゃ、イリュージョンボール!!」
歓喜の声を上げるのはディエマ。
「さっきの光弾…??」
驚くハージンに、余裕の笑みを浮かべるシレイス。
「さすがだ。察しがいいですね」
「気配は完全に消えていたはず…」
「言っておきますが、弟子ではありますが、私の戦いは、ラリスと似て非なるものだと言っておきましょうか」
確かに、術式を完成させるまでの過程がラリスを彷彿とさせる。
「確かに似てはいるが…違っているか」
この技があれば、オリオストをあざむけていたかもしれない。
「お前がいたなら、ラリスが生きている未来もあったかもしれんな」
つぶやくハージン。
「今なんて?」
聞こえなかったのか、聞き返すシレイス。
しかし…
「い、居ない…」
言った瞬間めりこむ…
!!!!!!
脇腹に激しい打撃を感じた瞬間、シレイスは数メートルの空間を逆走り幅跳び的な体制で吹っ飛んでいた。
「がっ…は!!!」
地面に2~3回跳ねては、ぶっ転び?ながらようやく止まったシレイス…
「…………」
あまりの瞬間の出来事に、動けないシドとディエマ。
「呆気なかったな…」
痙攣するシレイスの体。
「ちょっとやりすぎたか…」
治療しようと駆け寄るハージン。
だが、微笑むような表情を浮かべ、立ち止まる。
「シレイス!!!」
ようやく起こった事の重大さに気づき、ディエマも駆け寄ろうとするが、
「来ないで!!!」
シレイスの声に動きを止める。
だが、立ち上がろうとするその姿は、フラフラだ。
「シ、シレイス?」
心配の声をあげるディエマだが、制止は続く。
「まだ…まだだ…」
言いながら胃の内容物を戻しそうになるのを必死に堪えるシレイス。
なのに、
「やるか!!」
けしかけるハージン。
「おい、無理だろ!!」
怒鳴るディエマ。
「無理じゃないだろ?」
尚も聞くハージンに力で抗議しようとディエマが動きかけたところで、
「えぇ、まだ、やれます…」
立ち上がるシレイス。
「シレイス!!!」
何言ってるんだと言いかけるディエマを遮る声はシド。
「シレイス、それって…」
「えぇ、見ての通りまだ実践向けではありませんがね」
「??」
わからない様子のディエマに、ハージンが答えとなる言葉を言う。
「治せそうか?」
「えぇ、少し時間かかりすぎですがね…」
「シレイス…」
目を見張るようなシドの表情。
申し訳なさそうにシレイスが見る。
「あの時、この魔法が使えていれば、あなたの足は…」
「言うな。お前のせいじゃないのだから…」
「シド…」
キッとハージンの方を向くシレイス。
「流石にもう油断は許されない…次こそ…」
痛みがない事を確かめる様な様子を見せながら構える。
だが、
「いや、終わりだシレイス…」
なぜかハージンとの再戦を望むシレイスを止めたのはディエマだった。
~第十四話に続く~
この小説、はじまりは中学生の時に中途半端な気持ちで描き、数ページで描くのをやめてしまった漫画でした。
でも、いつか完成したいという気持ちだけは本物でした。
そこから数十年かけて、ようやくハージンというキャラクターと向き合うことができました。
僕にとって、ハージンは同志であり、戦友です。
僕の中にあるヒーローそのものです。
絶対に後悔しない物語にしたいので、自己満足に陥らないよう、最後まで読んでてよかったと言っていただける作品を目指してまいります
すこしでも気になったら、ご一読いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。




