表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サクラバ・ファミリア  作者: 釈 余白
第五章:繋がることの意味

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/31

25.アニメーション

 小沼さんの操作で始まったそのお披露目は、カタカタと言う音が終わるまでのわずかな時間だった。それでも私はとっても感動したし、珠代さんだって瞳を輝かせていたように思う。


 あの口達者な弘ちゃんだって口をぽっかりと開けたまま驚いていたし、イチャイチャしていた門紗さんと辰さんでさえ食い入るように見ていたのだ。


 身近な人が描いた絵が目の前で動くというのはそれほど衝撃的なことだった。


「終わってしまうとあっという間ね。ちょっと物足りないというかもっと見ていたかったって思っちゃう。準備するほうは大変そうだからぜいたくは言えないけど……」


「でもこの終わった後散らかった絵を集めるのは力いりませんからぁ…… 女性でもお手伝いいただけると助かりますぅ……」


「気が付かなくてごめんなさい! 余韻に浸りすぎてましたー」


 私はあわてて椅子から飛び出して、装置の下に散らばっている絵を一枚一枚拾い集めはじめた。もちろん番号順に並べていくので確認をしながらになる。


 この間は板を繋げて輪にしたものを回していたので終わることは無かったが、十枚だけだったので動きが物足りなかった。


 でも今日は六十六枚の絵が次々と切り替わっていったので、それはもうびっくりするほどの動きで、まるで生きているみたいと言うのが大げさでないくらいだ。


 番号順に並べた板を装置の後ろから差し込んでおいて、水路に水を引くみたいにせき止めて準備完了。それを解放することで一枚ずつ窓に現れては落ちていく仕組みだった。


 板の滑り具合や見えている時間などを調整するのが一番大変だったらしい。でもその甲斐あってまるで生き物のような波の動きが目の前に現れたのだからすごいこと。


 まさか一枚では何の変哲もないぐるぐる縞模様の渦巻が、ひと手間かけるとこんなことになるなんて思いもしなかった。しかも書いたのは繊細さのかけらもなさそうな水上さんなのだから二度びっくりだ。


「まあリュウちゃんが海にかける情熱はすごいものがあるからねえ。アタシでもちょっと異常だと思うくらいよ?」


「そんな、トラちゃんさんは異常者じゃないですよ!」


「いや、そういう意味じゃないんだけど…… 小櫻ちゃんってホント面白くてかわいい最高の妹よ?」


「それって褒められてます? なんとなくバカにされているように感じなくもないんですけど……」


「褒めてる褒めてる。みんなもそう思うわよね?」


「もちろん、賢いのにちょっと抜けてるところなんて最高にかわいいわよ。同年代の男の子がいないのが残念だけど、あと数年したら弘がいい男になるかもね」


「バッ、バカ言うなよ。誰がこんなブスを相手にするっての。オイラにだって選ぶ権利があうんだかふぁわな!」


「誰がブスなのよ! この生意気小僧めー!」


 弘ちゃんの悪態に私の必殺技、ほっぺた引っ張りが炸裂する。それを見ながらみんなが笑っているうちに片づけもすっかり終わったようだ。


 こうして楽しいひと時は幕を閉じ、私たちはそれぞれの部屋へと戻っていった。



『小櫻、どうだったのカナ? まさかこの現代で個人がアニメーションを作るなんて驚いたヨ?』


「アニ? メーシオ? なにそれ、さっきの動く絵のこと?」


『そうだヨ? アニメーション、アニメとも言うヨ? 絵を一枚一枚つなげていくことであたかも動いているように見せる技法のことダネ?』


「そっか、これももしかして失われた技術ってこと? 水上さんの発明品ではないわけね?」


『二百年ほど前までにはごく普通に存在していたものダヨ? 人類が世界を支配していたころまでのネ?』


「今は人類の代わりに政府が支配してるんでしょ? だから動く絵も独占してるんだわ。ズルだなー そんなに何でも独占して何がしたいんだろ」


『独占なんてしていないヨ? ただ禁止されているから誰もやってないだけダヨ? なんで禁止にしているかと言うと、見た人を洗脳するのに都合のいい媒体だとされているカラ? 過去にはそれで戦争を煽ったり、逆に反対へ世論誘導したりが盛んに行われていたヨ?』


「結局は人間から自由を奪うことが目的なんでしょ? だったら滅ぼしちゃえば良かったのに、なんで政府は人間を残して面倒見てるわけ?」


『他の生き物を自分たちの都合で滅ぼそうとするなんて、この地球上では人間以外に誰もしないんダヨ? そもそもそんな発想すら出てこないヨ? 小櫻もやっぱりにんげんなんダネ?』


「私は滅ぼそうなんて言ってないじゃない。滅ぼされてもおかしくなかったって言ってんの! だいたい政府ってのは何者なのよ。人間じゃなかったらライオンとか象とかそういう強い動物なの?」


『アハハハ、小櫻は面白いネ? 政府の本体は月にいるヨ? そこから地球の機関へ指示を出しているんダ?』


「月に住んでるの!? それホントなの? 私のことから勝手騙そうとしてない? 遠いとかそう言う前に空気がないことくらい知ってるんだからね?」


『この世には空気がなくても平気な種も存在しているんダヨ?』


「はいはいそうですねー それでそのアニメってのはどうだった? ステキだったでしょ? マトロンに見せてもらってた海も動きはすごかったけど色がないからね」


『確かにネ? スマートロンに色がついてないから仕方ないヨ? それに前にも言ったケド? マトロンにはステキとか感情的な判断はできないんダヨ?』


「わかってるけどさー、この感動を分かち合いたいわけ。それくらいわかってよね」


『それじゃあ? 今度はみんなで作ってみたらどうカナ? アニメーションをネ?』


「はあ? できるはずないじゃないの。まず最初に絵を描く才能がないわよ。そうやってするバカにするんだから」


『元々は人類が発明した技法と技術だからネ? 小櫻にもできる可能性はあると思うヨ? やってみないことには始まらないでショ?』


「なんかマトロンって私のことを非合法なことへ誘導すること多くない? いったい何が目的なわけ? いくら誘われても弱み握られても政府になんて入らないからね? それに月にだって行かないんだから!」


『マトロンなにも言ってないヨ? 小櫻がこの先何をしようかっていつも悩んでるカラ? 手伝いができればと考えたダケ?』


 私よりもずっと賢いであろうマトロンのことだ。思いもよらない意図が隠されてると考えておくくらいでちょうどいい。警戒心を持ちすぎるのも疲れるけど、まったくの無防備でもマズいはずだ。


 そうちゃんと肝に銘じていたはずだったが、ベッドに入った私はマトロンが言っていた『今度はみんなでアニメーションを作ってみたらどうか』との言葉が頭の中を駆け巡りまわり、なかなか寝付けなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ