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この先にボスがいるんだね



「あー…もう…抜け…抜け…ない…嫌なところに刺してくれちゃって」


 背中に埋まった石斧に手を伸ばす。

 触れはするものの握れない。


:なんか草

:痛そうなのに草

:ワロタ


「どうすんのこれ。このまま探索やれって?ポンチョに穴空いてるし!!…こんなのすぐ壊れちゃうよ…」


:ナナイさんのことは好きだが情報は集めてください

:それはそれとして


「まあ、最後まで探検したいよね」


 反転してガチ恋勢と化したリスナーは元より、魔獣やダンジョンをきっかけに配信に訪れたリスナーたちと、真相を知りたいナナイの利害は一致していた。

 真相というのは、やはりカーバンクルについてである。


「きゅ?」


「どこから来たのかな〜」


 長めの棒を取り出し、背中の石斧を無理やり抜く。

 ポリゴンの欠片が散り、石斧が地面に落ちる。

 その石斧もアイテムボックスに入れて、ポーションを飲んだ。

 回復ポーションは残りひとつ。


「…回復ポーションがもう無くなりそう…しかも、なんかグロい」


:グロいわ

:そもそも背中に斧刺さってんのに良くカーバンクル愛でられるよな

:絵面がこえーわ


 先程まで、度重なる負傷で4割ほどまで体力が落ち込んでいたが、回復ポーションの影響で七割まで回復した。


「よし、それじゃあ…戦利品回収したあと、この部屋詳しく調べようかな」


 せこせこと腰を曲げて、散らばる戦利品を回収する。

 回収出来た戦利品は以下の通りである。

 倒したゴブリンは合計15体。


【魔石】×15

【魔物の素材】(ゴブリンの耳)×12

【斧(未鑑定)】×2

【鍬(未鑑定)】×1

【棍棒(未鑑定)】×7


:まだレベル3なのに

:よくもまあ15体のゴブリンの群れを凌ぎきったわ

:最後はゴブリンのほうが怯えてましたけど?


「……うーん…」


 石室の壁をなぞりながら、目をかっぴらいて調査している。


 だが、由来の分からない紋様が部屋全体に張り巡らされていることぐらいしかわかることがない。


「…扉もないしなぁ」


 コンコンと壁を叩きながらぼやく。


「……罠だけの部屋…?ありえなく無い?」


:んなこたない

:ダンジョンなんてそんなもんよ

:ダンジョンは骨折り損の連続


「うーん…なんかあると思うんだけど…ま、あともうひとつの道を調べてからでもいいかな」


 気になることは尽きないが、もうひとつ、左に進む道のことを思い出し壁から手を離す。

 名残惜しげにその部屋を後にする。


 広間に出て、最後の道に進む。


 今までの通路と違い、石レンガで覆われた人工的な通路だった。

 光苔が生えているという共通項はあったものの、今までとは決定的に違う要素があった。


「うっそ…階段…?」


:地下あり洞窟…?

:おいこれ絶対3レベじゃ無理だぞ

:初期地点近くのダンジョンだし、そう広くないと思う。


「…まあ、行かない選択肢は無いかな」


 階段に足を踏み入れた瞬間、目の前に水晶板が現れる。


:あ、

:あっこれは


【ダンジョンボスの領域に入ります】

【??? : Lv.???】


「…名前もレベルもわかんないことある?」


:よくある

:てか初出のダンジョンはボス情報出ん

:初討伐が出た時点で情報が出る


「ほほう……じゃあ準備は万端にした方がいいよね」


 70%ほどの体力に最後のポーションを使って全回復させる。


「ポーション無くなっちゃった…」


:あのポーション程度なら街にいくらでも売ってるぞ

:いちばん弱いカスポーションだからな


「えぇ…また街…」


 残りの片手斧は4本。

 一本は【大切断】を使った時に砕け、もう2本はスライムに溶かされた。


「…片手斧4本と石礫だけ…?」


:不安だ

:不安だ


(不安だあ〜…)


「…まあ、最後は体術でなんとかなる…かな」


:まあ?

:頑張れば?

:いや、ソロでのダンジョンアタックなの忘れてない?


「あれこれ言うのは終わり!ダメだった時はそれまで!行くぞー!」


 片手斧を2本、両手に持ち階段を降りていく。

 降りた先には扉があった。


「…この先にボスがいるんだね」


 それだけ言って、扉を開けた。


 扉の先はモンスターハウスよりも広く、広間よりも奥行きがあった。

 そして、その部屋の中心には1匹だけ、人型に近いモンスターが居た。


「……ん?」

 

 尖った耳、黄色く濁った目、耳元まで裂けた口。


「……ゴブリン?」


:いや、こいつは

:絶対ダメ!逃げろ!


「少し育ってる…?」


「GIHI!!」


 咄嗟に両手の斧で防御しようと試みる。

 だが、そのゴブリンが持つ両手剣の一撃は受け止められないどころか、ナナイの身体を穿った。


「っがァ、ぁっ」


 砕けた斧2本はポリゴンの欠片を散らして消える。

 そして、袈裟懸けに切り裂かれた身体。

 

「くっ…!」


 急いで後退するナナイ。

 赤く染まる視界越しにHPを確認すると、HPは2割まで叩き落とされてしまっていた。


(8割…?!たった、一撃…で?!斧ももう2本しか…!)


:ソイツはホブゴブリン!!

:いまの、レベルが3しかないナナイじゃ勝てない!


「なんで?!ゴブリンが少し育ったみたいな見た目なのに…!」


:ホブゴブリンは第2の街近くから出現するモンスター

:んで、第2の街の適性レベルは10

:…まあ、ナナイじゃどう足掻こうと勝てん


「そんな奴がなんで、こんな」


「GIHYAHYAHYA!!」


「んぐっ!」


 ホブゴブリンの一撃を転がりながら避ける。


:しかも武器持ち

:それだけでヤバいのに…


 ナナイはホブゴブリンの頭上に表示されている、ホブゴブリンの体力バーとレベル情報に目を向ける。


「……は?」


【ホブゴブリン : Lv.15】


「なんっじゃそりゃああ!!」


 Lv.15、ナナイの5倍のレベル。

 撤退を視野に入れるべきだが、入口を見ればとっくに扉が閉まっている。

 恐らく、開くことはないだろう。


「っ、斧!」


 アイテムボックスから片手斧を取り出し、斬り掛かる。


「っはぁっ!!」


 ホブゴブリンはその攻撃を両手剣で受け止める。

 それだけでナナイは動きを止められた。


「えっ?」


「GIHI!」

 

 両手剣で弾いた瞬間、斧が砕け、ナナイは吹き飛ばされる。


「力で、負けた…?!」


:15レベだぞ

:攻撃は受けんな

:攻撃したいなら防御されんな

:競り合うな


「無理…!勝てない…!」

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