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あなた達みたいなのには魔獣は懐かないでしょうね



『【MMOでダンジョン探し】トレジャーハンター!!』

#ギャル #ドワーフ #サバイバル #バッカロア湖 #ダンジョン #魔獣

視聴者数 : 5825人


 着々と増える視聴者数に戦きながらもナナイは口を開く。


「えーっと…こんばんは?」


「きゅ?」


:初見

:魔獣ってそのチンチクリン?

:もっと情報よこせ


「は?」


 その物言いにキレそうになるナナイ。


「あなた達みたいなのには魔獣は懐かないでしょうね」


 そしてその衝動に任せてキレキレの暴言を吐いた。


:は?

:なにこいつ

:草

:ワロタ

:大草原


「そんなんあーしが知りてぇわ」


 言い終わってから、カーバンクルをフードに戻し立ち上がる。


「よっし。探索再開!」


:強メンタルナナイ

:炎上を恐れない物言い。気に入った!

:よう言った!

:信者キモ

:うざすぎ


「うるさいなぁ…なんか一気に治安悪くなってない?もう子供は寝る時間なんだけど?」


 かく言うナナイも寝なければならない時間はとうに過ぎた子供なのだが、ナナイは知っている。

 レスバは弱みを見せた時点で負けだと。


:は?

:いい加減にしろよ

:キッズは言い過ぎw

:新しいナナイを見れて満足しました

:ホンマに草


「カーバンクルちゃんはチンチクリンじゃないし、そんなに調べたいなら自分で探して。あーし、君たちのために配信してる訳じゃないから」


 配信して、アーカイブを残しているのは畑を作る過程を証拠として残すため。

 そして、畑作りを手伝ってくれる善良な視聴者とこのゲームを楽しむために配信している。


「くれくればかりの子とは楽しめないから。さっ、注意事項終わり!最後まで楽しんでいってね!」


:草

:真理だね

:わからんやつはそのうち消えるから気にせんで


 【鋸斧】を取り出してから歩き出した。


「あーしだって分からないんだから変なこと聞かないでよね?」


 実際、ナナイだって真相を知りたい。

 だからダンジョンを探索しているのだ。

 なぜカーバンクルが洞窟の入口付近にいたのか、なぜカーバンクルが着いてくるのか、なぜカーバンクルが懐いてくるのか。


「ま、そんなに知りたいなら見てればいいよ。どうせこの洞窟を調べればわかることだもん」


 スライムがいた通路を進めば、そこには石の扉があった。


「なにこれ?扉…開けるよ」


 ゴゴゴゴ、と摩擦音を響かせて扉が開いていく。

 石レンガ製の壁に光苔が生えており、中は明るい。


「……うーん…」


 ナナイは警戒していなかった訳ではなかった。

 だが、無知だった。


「お?」


 入った瞬間、周囲が赤く染まった。


:キター!

:簡単に死ぬなよなー!

:やばい

:本当にやばい

:本当にまずい…!


「なに?!なになになに?!キッズは黙ってて!」


 慌てて斧を構える。


:モンスターがいっぱい出てくる!

:今は集中して!

:【投擲】はとりあえず忘れろ!


「?!」


「きゅ、きゅー!」


 カーバンクルはフードに潜り込む。


「捕まっててね!」


 壁に円形の模様、魔法陣が展開されゴブリンが5体出現した。


「「「「「GYAAAAAAA!!」」」」」


「いきなりすぎ…!」


:武器持ちじゃないから冷静に

:んだよゴブリンかよ

:ちょ、キッズのコメの不快指数高スギィ!!

:モデレーター設定はこの後してもらおうね〜^^


「おらああああっ!!」


「GYA?!」


 【鋸斧】で1体目の首を攻撃。

 クリティカルヒットで一撃で撃破できた。


「2体目…!おりゃあああ!」


「GYA!」


「トドメ!」


 片手で顔面を殴り倒し、頭をストンプして撃破。

 そこで背中に飛び付いてきたゴブリンに噛みつかれる。


「GYAHA!!」


「いっ…!まずい、カーバンクルちゃん!…ごめん!避けてね!!潰れ、ろっ!!」


 背中からゴブリンごと壁に叩きつける。


 カーバンクルはナナイの頭の上に緊急避難。


 噛み付く力が弱くなったところに肘鉄を見舞い、トドメを刺そうとするが、4体目が襲い来る。


「GYAAAA!!」


「ギャーギャーうっさい!」


 襲いかかってくる4体目にヤクザキック。

 続いてやってきた5体目には張り手し、背中にへばりついているゴブリンをようやく剥がすことに成功した。


「くたばれ!」


 地面に倒れるゴブリンに【鋸斧】を叩き込んだ。

 力を込めすぎたため斧がゴブリンを貫通、撃破には成功し煙になって消えるも、地面とかち合ってしまい石の欠片が散った。


「3体目…!」


:斧さーん!!

:壊れる!壊れちゃう!


「壊れてもまた作る!」


:あんなに大切にしてたのに?!


「カーバンクルちゃん!フードに戻って…!」


「GYAHAHA!!」


 襲いかかってきた4体目にナナイの反応が遅れてしまったため、【鋸斧】で受け止める。

 ゴブリンとナナイとでは膂力で圧倒的な差があるため、動きが止まることはない。


「こん、のおおおお!!」


 【鋸斧】で4体目を振り払い、5体目がこちらに来るのを察知したため、【鋸斧】を構え直す。


「…アーツ、【大切断】…!!」


 斧が燐光を纏った。


「どりゃあああああ!!」


 尋常じゃない圧を感じ取ったのか、5体目のゴブリンが両手を掲げて防御しようとするが意味をなさない。


 唐竹割りの軌道を通る【鋸斧】は綺麗にゴブリンを一刀両断した。


 そして、アーツの影響か、はたまたもう限界だったのか、【鋸斧】が砕け散る。


「GYAHA!」


 それを好機と見たのか、醜悪な笑みを浮かべ最後のゴブリンが飛び掛ろうとする。


「ぐるぁあああああっ!!」


 だが、ナナイはそれを許さない。

 逆に飛びかかり、ゴブリンを殴り始めた。


「フンッ!がァっ!!斧が!壊れたのは!お前らの!せい!だああああ!!」


 顔面に最後の一撃を叩き込む。

 ぼふんっと音を立てて、最後のゴブリンが煙となって消えた。


「ふーっ、ふーっ…まだ、来そうだね」


 フラフラと立ち上がる。

 アイテムボックスからポーションを掴み取り、頭の上で握りつぶす。

 頭から回復ポーションの薬液を被りながら、もう一度アイテムボックスに手を突っ込み、片手斧を2本取り出す。

 地面に散らばるモンスタードロップも一顧だにせず、斧を構えた。

 右手を順手、左手を逆手。

 独特な構えだ。


「今度は、10体…へへ…」


 魔法陣が大きく展開され、10体の武器持ちゴブリンが地面から這い出てくる。


「GYA」


「出てくんのを待ってやるかよ」


 一番、体が這い出て来ていたゴブリンの頭に、両手で斧を叩き込んだ。

 クリティカルヒットで消え去る。


「次ィッ!」


 鍬を振りかぶったゴブリン。

 両手の斧で受け止め、弾く。


「力が、足りねぇよ…!」


「…?!」


「リァッ!!」


 膝を斧で砕き、痛みで蹲ろうとするゴブリンの頭を蹴りあげる。


「フンッ!!」


 首に斧を叩き込む。

 2体目は声をあげる暇もなく煙に還った。


「GYA!」


「っが?!」


 背中に石斧を叩き付けられた。

 中程まで石斧の刃が背中に埋まる。

 痛みは無いが違和感があって気持ちが悪い。


「ぁあああっ!!」


 勢いで振り返り、石斧を失ったゴブリンの右腕を斬り飛ばす。


「【大切断】ッ!」


 右手の光る斧が3体目のゴブリンに叩きつけられ、そのまま黒い煙が吹き上がった。


 バキンッ、と右手の斧が砕ける。

 

 瞬間、ナナイの頭が衝撃を受けて揺れる。


(なにっ?!)


 後ろ目に見れば棍棒を振り抜いているゴブリンが居た。


「があああああっ!!」


 4体目、棍棒のゴブリンの頭を殴り、首筋に噛み付く。


「〜〜ッッ!!!」


「GYAAAAAA?!?!」


 そのまま噛みちぎり、流れるように斧を叩きつける。

 ポリゴンの欠片が舞い、次の瞬間には黒煙に消えた。


 その様子を見ていたゴブリンたちは、表情を強張らせてジリジリと後退りする。


「…べ」

 

 舌をチロリと出し、笑う。

 その表情にゴブリンが慄く。


「ね、モンスターハウス?だっけ、は出てくるモンスターを全員倒さなきゃダメなんだよね」


:あ、はい

:そうです

:ごめんなさい

:倒すって言うより殺してるんだよなぁ…


「あと、6体」


 アイテムボックスに手を突っ込み、何かを取り出す。


「祈れ」


 それは手のひらいっぱいに握られた複数個の石礫だった。


「当たらねぇようになぁ!!」


 乱雑な構え、そして全ての石にスキルが乗るのかも分からなかった。

 だがナナイは全ての賭けに勝った。


 石礫全てに光が宿る。


「味わいな!!」


 補正値と先程のレベルアップでさらに増えた筋力値が猛威を振るう。

 光の宿った石礫が散弾銃のように拡散し石室を蹂躙した。

 当たり所が悪かった3体は黒い煙に姿を変え、運良く命が助かったゴブリンも、もう虫の息だ。


「これで、トドメ」


 最後のゴブリンを煙にした直後、石室を照らしていた赤い光が元の薄緑色の光に戻る。


「………っはああああ、くたびれたァ!!」


 どすんと倒れるように腰を下ろした。


「生き残ったぜ〜キッズ〜」


 ニヤリ、と口角を上げてべ、と舌を出す。


:すみませんでした。反省します

:好きです。結婚してください

:カーバンクルより貴女に興味があります


「は?」


 あまりの変貌ぶりに呆然とするナナイ。


:あーあ

:反転ファン草

:不特定多数のガチ恋勢誕生の瞬間である

:シンプルに恐怖を覚えた勢忘れないで

:切り抜き素材が一杯♡


「…は?!」


 切り抜き、という言葉がナナイの目を貫く。

 冗談ではない。


「あ、あーしなにした?!」


:ゴブリンに噛み付いてたで

:やーい、お前ばーんぞく

:蛮族〜

:【投擲】散弾銃の時の「祈れ」には震えた


「………見ないで!!」


「きゅっ!」


「あ!カーバンクルちゃん!怪我ない?!」


 思わず顔を覆ったナナイの肩にカーバンクルが乗り移ってくる。

 疲労とリスナーのせいで安否確認を忘れてしまっていた。

 カーバンクルを手に乗せてから指で触診モドキをする。


「ここは?…ここは?痛くない?」


「きゅ〜♪」


:これただのマッサージでは…?

:カーバンクルそこ変われ

:反転ガチ恋勢は遠慮をどっかにやっちまったらしい

:かわいい

:かわいい


「はぁ?!宝石にホコリが?!」


「きゅきゅ〜」




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