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この洞窟に秘密があるかもね



 【鋸斧】を拾って刃先を見てみる。

 若干砕けていて、先は長くなさそうだ。


「あちゃ……まあ、仕方ないか」


 【剣(未鑑定)】【鍬(未鑑定)】【棍棒(未鑑定)】【ピアス(未鑑定)】と先日地中から見つけた【魔石(未鑑定)】に続いて(未鑑定)の文字が羅列されている。


「……わかんないアイテムだらけ…まあ本当にヤバめな未鑑定がまだ残ってる…」


 鉄の宝箱に目を向けると、黒いオーラを吹き出している斧が見える。

 刺々しい大型の黒い斧。

 それこそ【鋸斧】よりも大きく、人、と言うよりも生物を傷つけるための武具に見える。

 見た目、色、呪いのオーラも相まって触りたいとすら思えない。


「きゅー!」


 カーバンクルがひと鳴きして、肩から頬へスンスンと鼻を近づける。

 ナナイが、見つけたアイテムは全部アイテムボックスに入れる主義とはいえ、アレは勘弁願いたいところだ。


:…めっちゃ嫌そう

:でも斧だぞ


「そうなんだよ!斧なんだよー!」


 ナナイとてダンジョン産の斧の有用性は理解できる。

 【鋸斧】とは比べ物にならないほど頑丈なのだろうことも理解できる。

 由来は分からないが、鋼鉄のように硬質に見える。

 戦闘においても、開拓においても有用に働くかもしれない。


「…ま、呪いをどうにかできるまで、アイテムボックスに入れとこうかな」


 斧には触れずに、鉄の箱を持ち上げる。

 かなり重い。


「おっも…!」


 空間の歪みに斧をそのまま入れて、鉄の箱を落とす。

 ドスン、と音が鳴った。


「…ふー……この箱も持って帰る?」


:ストレージにできるかもね?

:ま、持って帰って損はない


「…でもアイテムボックスだけで良くない?」


:あー…

:このゲーム、アイテムボックスの中身を盗めたりするから何でもかんでもアイテムボックスに入れとくのはオススメしない


「ほんと?!」


 細かいことだが、このゲームにも盗みのスキルは存在する。

 それ以外にもアイテムを落としてしまう事案はある。


:PvP、プレイヤーと戦った時に負けたら、アイテムやお金が相手に移る。

:モンスターと戦った時に負けてもいくつかアイテムが落ちることがある


「…な、るほど…」


 死を回避しなければならない理由がまた増えた。


「…なんか、やっぱりこのゲームムズいなぁ……おっもいしさぁ!」


 重い鉄の箱をどうにかアイテムボックスに入れる。

 また未鑑定アイテムが増えた。


「…【鑑定】をもらうために街に行かなきゃなぁ…ま、それは未来の話か」


「きゅ!」


:鑑定無くてもわかるやろ

:錆びた鉄の箱なw


「思い込みが危ない的なこと言ったの君たちだよね?!」


 ため息1つ、鉄の箱を最後に道は行き止まりだったため、広間に戻る。


「分からないことが襲いかかって来るよぉ…君も一体どこの誰ちゃんなのかな〜?うりうり〜」


「きゅ〜♪」


:かわいい

:かわいい

:カーバンクルがどこの誰なのかは気になりますねえ!


「この洞窟で出てきた子だから、この洞窟に秘密があるかもね」


 右の通路にはゴブリンと呪いの装備があった。

 次は真ん中の通路だ。


「さて、真ん中だよ〜…何があるかな」


 進んでいくと、居たのはやはりモンスターだった。


「あれもわかる。スライムね。雑魚でしょ」


:雑魚です

:誰か言ってやんなよ…


「いくよ」


 アイテムボックスから片手斧を取り出して構えをとる。

 リィンと音が鳴り、斧に光が宿った。


「【投擲】!!」


 燐光を纏った片手斧が飛翔し、緑色の粘体に迫る。


グチャッ!


 斧はスライムに命中した。


「やっ…た?」


 飛散したスライムはしかし、動きはゆっくりながら集合していく。


「……え?あ、えー…こ、攻撃!」


 もう1本片手斧を取り出し、【投擲】する。

 だが、今度はスライムが動いた。


 じゅる、と音がした直後、スライムの粘体が広がり斧を包み込む。

 じゅう、と鳴った瞬間、片手斧が溶かされて消えた。


「…む、無敵か…?」


:一応補足すると、今のでもダメージは入ってます

:魔法なら一撃で燃やせる雑魚

:物理だと結構苦戦する。


「……また魔法かあ!!」


:追伸、貴方の低耐久の武器を全部使って倒せるかどうかの雑魚です

:草

:草


「うっそ…逃げたい…弱点は?」


:粘体を漂ってる小さなコア

:物理耐性あるから武器使うなら気をつけてね☆

:武器しかないんだよなぁ


「…そのコアって目に見える?」


 スライムは核を持つ生物で、そこが明確な弱点とされているが狙うのは得策ではない。

 なぜなら魔法を習得していれば狙う必要がないからだ。


:目を凝らせば?

:でも戦いながらそんな暇なくない?


「……見えた。アレね」


 駆け出す。

 今までで1番の踏み込みで急接近する。


:ちょ!

:近距離はやばい!

:食われるぞ!


「フンッ!!」


 スライムが体積を広げてナナイを呑み込もうとする。

 が、ナナイの拳が1歩速い。

 粘体を貫き、スライムの体内に侵入する。

 ジュワッという音ともにナナイの拳の体表が消えポリゴンが露出する。


 だがナナイは構わない。

 スライムの核を視認した瞬間、ポリゴンの手で掴み、抜き取る。


 瞬間、スライムは黒い煙になって消えた。


「……よし」


:ヨシじゃねえよ!!

:なにしてんの?!

:言ったよね!手指が欠ける可能性があるゲームだって!言ったよね!


「てへぺろ。まあ倒せたしいいじゃん!」


【Lvアップを確認。ステータスが上昇します】

【スキル【斧術】のレベルが上昇しました】

【威力が向上しました】

【アーツ【大切断】を習得しました】

【スキル取得条件を達成。ポイントを消費しますか?使用Pt.1/残Pt.6】


「な、なになに…え、えーっと、取得します」


【【体術】Lv.1を獲得しました】


━━━━━

name.ナナイ

Lv.2 → 3

species.土師族Lv.1

job.無職 Lv.1

strength.13 → 17 

endurance.8 → 10 

agility.5 → 7 

dexterity.11 → 13 

spell.10 

HP.320 → 400 

MP.100

満腹値.54

水分値.67


passive skills

【道具作成】

active skills / 残Pt.5

【自然物鑑定】Lv.3 / 【伐採】Lv.1 / 【投擲】Lv.2 / 【斧術】Lv.1 → 2 / 【体術】Lv.1

active arts

【大切断】

━━━━━


 耐久が上昇したが、HPは回復しない。


「と、とりあえず、よっしゃー!!」


 それはそれとして、ナナイがHPを確認すると3割ほど減少している。

 ピンク色のポリゴン状になってしまっている掌を開けばそこにはスライムの核がそのまま残っていた。

 地面に落ちているスライムの【魔石】も回収してからリスナーにたずねる。


「あれ、これは消えないのね」


:無傷のスライムの核とか結構珍しいかもね

:大体は砕けた状態か焼けた状態で残ってるしな

:モツ抜きとか誰がやんねん


「何に使えるの?」


:ポーションとか

:あと換金用


「ふーん」


 今は使えない素材だと分かった瞬間興味をなくしアイテムボックスに放り込む。


 ポーションを取り出し、飲みながら現時点でナナイが持っているダンジョン報酬を見る。


【剣(未鑑定)】

【鍬(未鑑定)】

【斧(未鑑定)】(呪いかかってそうな見た目)

【ピアス(未鑑定)】

【魔石】×6

【魔物の素材(未鑑定)】(無傷のスライムの核)


「…〇〇の素材って情報無さすぎて滅…」


:それ以上の情報あったら【鑑定】がいらない子になっちゃう

:諦めて街いけ

:バカ湖出身は死にながら街目指したって言うぞ


「分かってるって…」


:ダンジョンのソロアタックは金になりそうだなぁ

:この素材とか鉄の剣売れば新品の武器代ぐらいにゃなる


「どこで売れって?!」


:ごめんなさい

:すまんかった



◇ ◇ ◇



「HP9割ぐらいかな。もうそろそろいい?」


 持続回復のポーションで回復した。

 掌もほとんど治っていて動きに支障もない。


「あ、そうだった。リスナーどれぐらいいるかな〜」


:来た

:来る

:ザワ…ザワ…


 配信結晶を手に持って情報を見てみる。


『【MMOでダンジョン探し】トレジャーハンター!!』

#ギャル #ドワーフ #サバイバル #バッカロア湖 #ダンジョン

視聴者数 : 5796人


 その場でナナイは土下座を敢行した。


:懐かしの光景

:魔獣関連で死ぬほどバズってたぞ


 当の本人…本カーバンクルはフードから出てナナイの頭の上で首を傾げている。


:あと、バカ湖のダンジョンってことで

:あ、初見です。モツ抜き壮観でした

:まあ名前なしじゃ初見か古参かは判断つかん

:名前が表示される設定がアプデで追加されるってよ

:コメントの流れの速さで気付けんかね


「……見ないで!!」


 肉を切らせて骨を断つ戦法が、6000人近くに見られていたことが判明した。


「え?なんで?なんでこんな…え?5倍どころじゃないよ?なんで?」


:そりゃ魔獣初発見ですから

:初見です

:第一人者やで

:初魔獣がカーバンクル草

:これは伸びる(確信)

:バズる要素は十分よ


「いや、え?初見ですってコメント今までそんなに見なかったけど?!」


:黙ってみる勢も結構いる

:あ、カーバンクルしか見てませんでした

:他の魔獣もダンジョンに居るのかな


「意味がわからん…!ていうか…初発見…?!」


 広間で出会って可愛いし着いてくるみたいだから連れていたカーバンクルが初発見だとはナナイも思わなかったようで、強く困惑している。


:魔獣の枠組みは公式が発表自体はしてた

:でも誰も見つけてないんです

:見つけたとしても秘匿してるかも

:だから実質、君が初発見、魔獣の第一人者です


「そ、そうなんだ。そんなに凄かったんだね」


「きゅ〜っ」


 ナナイの顔の前に降りてきたカーバンクルが胸を張る。

 心なしかドヤ顔にも見えた。



6位になりました。

これからも毎日投稿を続けていく予定です。

応援していただけたら幸いです。

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