ゴルン教異変編 無慈悲な鎮魂歌/流星、悪剣を打ち砕く
教会の建物から、孤児院の庭に吹き飛ばされた亀の怪人は、うずくまっていたが、追撃にきたクラブの姿を見て
「く、くそ!!」
体勢を立て直し、口からプラズマレーザーをクラブに向けて放つ
「術式展開、プロテクション」
クラブはプロテクションをかけながら、構わず突っ込む。クラブの背後には教会がある以上、攻撃を通す訳にはいかないのもあるが
「またかよぉ!!何なんだよその光の防壁は!」
亀の怪人はクラブを近づけまいと、次はホーミングレーザーの連射をクラブに浴びせるが
クラブのプロテクションの前では無意味であった
だが、撃っている間はクラブも攻勢に移れない様子を見て
「ぐはははは!!その強力な防壁も、ただの人間がいつまで貼り続けまい!」
亀の怪人の言う通り、魔装鎧の魔力の出力があったとしてもプロテクションをいつまでも貼り続けるのはクラブにも不可能である
亀の怪人は魔力を切れる、集中力を切らしてプロテクションを切れるのを待つ算段だった
「そうね、なら。攻撃にさせてもらう。術式展開、プロテクションショット」
クラブが貼っているプロテクションは、板チョコのような無数の割れ目を作ると、それをホーミングレーザーを防ぎながら、散弾のように亀の怪人にプロテクションの壁をぶつける
「ぐああああああ!?!?防壁魔法を、攻撃手段に!?」
怯ませた隙に、クラブは立て続けに右手のガントレットを地面につけて
「術式展開!ツリーランス!」
生命波動を地面を通し、木の根の槍を怯んでいた亀の怪人の足元に生やし串刺しにする
「がぁぁぁぁぁぁ!!!????!?」
いくら驚異的な再生能力を持っていようが、痛覚までは無くせない。串刺しにされ、身動きが取れない亀の怪人は悪あがきで、口からプラズマレーザーを何とか放とうとするが、木の根は亀の怪人の顎から口を貫通させて、撃たせない
「がぁ…あがががあぁぁぁぁぁぁ!!!」
動きは止めたものの、亀の怪人の力も相当なものであり、刺して拘束している木の根がぶちぶちと千切れる音がする
「やはり、この程度じゃ倒しきれない…それに、あの頑丈さだと薔薇だけでは刺さらないか…なら!」
右手のガントレットを、魔装銃に戻し、目の前にプロテクションを展開させると
「術式展開!プロテクション!スピア!」
プロテクションを、円錐状の槍を変形させ、魔装銃で亀の怪人の胴体に目掛けて高速回転させながら突き刺す
「がぁぁぁぁ!??」
亀の怪人にプロテクションスピア突き刺さったまま回転を続ける
クラブは左手に作り上げた青い薔薇の花束を自身の頭上に投げ、花びらを自身の周囲に舞わせ
「いくら頑丈であっても、これなら…!」
青い薔薇の花びらは、蒼い炎に変わり、クラブの体に纏う。魔装銃を投げ捨て、クラブは真上に飛び上がり
「これで終わらせる…!生命波動!ストライク・レクイエム!」
蒼い炎を纏わせながら、最大全速の飛び蹴りを突き刺さっているプロテクションスピア目掛ける
クラブの最大全速による飛び蹴りで、スピアは亀の怪人の胴体を木の根の槍ごと貫き
「がぁぁぁぁぁぁ!?なんだ!?熱い!熱いぃぃぃぃぃ!?」
クラブの纏わせた蒼い炎は、貫通した亀の怪人の胴体の中に引火し、たちまち体中が生命波動の蒼い炎に包まれた
「がぁぁぁ…た…助けてくれぇぇぇ!!!!」
亀の怪人は倒れて、激しくもがき、クラブの方を見て助けを懇願してくる
妖魔の力を持ち、強大な力を持っていようと、火だるまになる苦しみは到底耐えられるものではない
その姿、そして助けを求めて来た亀の怪人にクラブは、青い薔薇を作り
「あなたが苦しめた者たちが、助けを求めても、痛めつけるのはやめて欲しいと懇願しても、それに応じたことがあったのかしら?」
クラブは目の前の苦しんでいる怪人に一切の情けをかける気は無かった。子供達を苦しめ、石像の盾を使い、そして翠の魔女を苦しめた者達を許すことは到底出来ない。無慈悲に死を与えるだけであった
「せめて、この炎に燃やし尽くされて、浄化されることを祈るよ」
燃えている亀の怪人に、青い薔薇を投げ込み、さらに蒼い炎は激しく燃え上がる
一瞬だけ、断末魔を上げるが、すぐに消える
そこには骨も灰すら残らずに、もがき苦しんだ焼け跡だけであった
「…アイリス様…」
クラブはこの時にやっと気づく、この庭に来た時には、既にアイリスの魂はアヤメに取り込まれ、一つになった
アイリスとアヤメは同じ魂。死者の魂は生者の魂に引っ張られ、融合して意識と意思は消える
「アイリス様…アイリス様…!」
2年間、アヤメを導き、そして同じ親に育てられて、まるで姉のようであり、もう一人の自分自身とも呼べる存在。最後に伝え、最後に自身の戦いを見せつけ、アヤメに伝えた
別れを惜しみながらも、アヤメは両膝を付き、その場に手を合わせ
「ありがとう…ございました…アイリス様…!」
仮面の下で涙を浮かべつつも、祈りを捧げた
教会、数百メートル上空
クラブが使ったリターナー・レクイエムは、レオに思わね効果、剣士の怪人にとっては最悪な事態に持たらしていた
「く!卑怯者め!2本の剣で戦うなんぞ!」
レオの聖剣の二刀流の猛攻に、剣士の怪人は完全に押し負けていた
(アイリス様が使った浄化の魔法…右手の毒まで瞬時に完治させるとは)
レオの右手に毒は、リターナ・レクイエムによって完治され、右手にムーンダイト、左手にデインダイト
聖剣のレオの本来の戦闘スタイル
人質の盾も無ければ、剣の実力でも負けている剣士の怪人に、本気のレオの空戦機動を用いた剣技を止められることは出来ず、何度もまともに切られまくっていた
自慢のレイピアも叩き折り、剣士の両腕を叩き切るが
「卑怯者卑怯者卑怯者卑怯者卑怯者ぉぉぉぉぉ!!!」
剣士の怪人は、斬られた先から瞬時に再生し、剣も瞬時に再生する。驚異的な自己再生能力前に、一方的にレオが滅多斬りしても、埒が明かない状態であった
「こいつの再生能力、今までの怪人よりも遥かに早すぎる…!」
カノンから、妖魔の再生能力を聞いていはいたが、聞いていたどの話にも、剣士の怪人の再生能力は異常であった
こうなれば、再生能力が尽きるまで斬り続けるか
(最大出力の斬撃波で消し飛ばしてしまえば、流石に再生は出来ないだろうけど…こいつ…!)
レオが聖剣に力を込めると、剣士はレオの下に回り、防御の態勢を取る。そう、レオの下方向、教会や孤児院のある位置に動くのだ
こうなれば高威力の斬撃波を迂闊に放つわけにはいないのだ
「私は諦めない!!この正義の剣が!卑怯者を穿つまで!!」
言動と裏腹に、到底正義を口に出すような者が使う戦法ではない。レオから言わせてみれば
「…生き意地が汚いやつめ…!」
剣士の怪人の生存本能なのか、しかし、レオ相手には効果的であった
(中途半端な加減の威力の技が通用する相手じゃないし、最大パワーで放てば教会も孤児院も巻き込む…!)
倒し切る方法があるとすれば、再生出来なくなるまで斬り続けて摩耗しきる。レオなら可能ではある
「正義は挫けない!卑劣にも2本の剣を使う卑怯者ものに!」
剣士の怪人は自身の技量と力の差の現実が見えていないのか、なお果敢に攻めてくる。レオに簡単にあしらわれる
レオは目の前の狂人を、一刻も早く消したい気持ちであった
言動や行動から、まともじゃない思想と倫理観の持ち主では無いのはわかっていたから、まともに言葉聞くのも、返答する気も無かった
しかしながら、子供を利用して心も体も傷をつけ、罪の無い人を石像にした盾を使う悪辣、外道極まりない行為をしているくせに、己を正義と語る
剣士の言動一つ一つに相当に頭にきており、怒りで魔力が溢れ、レオの魔装鎧がレオ自身が発する魔力で軋み始める程に
一つ、レオはここで思い出したのだ。この状況に最適な剣技を
(そうだ…ユーゴ様の剣技なら…!)
やったことは無い技、しかし目の前で受けて、自身の体に叩き込まれた流星のような剣技
それに駆け引きなんぞ必要のない、シンプルな力押しによる方法であれば、レオは行けると踏む
剣士の怪人の剣の攻撃をあしらいながら、タイミングを見測り、デインダイトで剣を受け止めてから、レオは仕掛けた
「術式展開!日光波!」
デインダイトから、眩い光を放ち、剣士の怪人に至近距離で目くらましを浴びせたのだ。瞬時に再生する剣士の怪人でも、流石の目が焼ける程の光の浴びて
「何と!?汚らわしい光!?」
怯んで、眼球が焼けて、一瞬視界を潰れた剣士の怪人であったが、眼球が再生し、剣士の怪人に移るのは
満月を背景に、2本の聖剣を構えたレオ。それは意を決した姿
「終わらせてやる…!オーバードライブ起動!!!」
レオが発言した瞬間、レオの魔装鎧の肩や腕、脚部の開放部が開き、激しく魔力を放出させる
その放出させている音は、まるで獅子の咆哮
「あ…悪魔の…獅子?」
狂っている剣士の怪人が、思わず恐怖を感じさせるようなモノであり
二つの聖剣にありったけの魔力を込められ、激しい光を放出させ
「勝負だ…外道!」
レオは真正面に、剣士の怪人に突っ込む。それは剣士の怪人が目で追えない速度、そして魔力を込めた2本の聖剣の連続の斬撃を剣士に叩き込む
それはレオの最大全速の連続斬撃、駆け引きの一切の無い剣技と力の技。それは流星の如く叩き込まれ、数秒間に100の斬撃を叩き込む、レオの新技、その名は
「…術式展開、百花流星…!」
最大出力を保たせたままの100の連続の斬撃を数秒間に叩き込まれる剣技は、剣士の怪人が到底追い付けず、防御も回避も無意味のまま
「がぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」
剣士の怪人は滅多切りにされても、体は再生していくが痛みと衝撃は耐えきれず、隙を作ってしまう
そう、この隙をレオは狙っていた。再生中であれば、鎧の防御効果が弱まる、ましてやバラバラに滅多切りにされていれば尚更であり
「とった…!」
百花流星を叩き込みながら、剣士の怪人の斜め下の位置をとった
射線上に教会も孤児院も無い、あるのは夜空だけ、巻き込むものは何もない。ありったけの魔力を込めた斬撃波を叩き込んでも
「術式展開!滅光破!!!」
デインダイトのありったけの魔力を込め、太陽の斬撃波を体を再生中の剣士の怪人に叩き込んだ
「がががががが!?!?せ、正義がぁぁぁぁ!悪の光にぃぃぃぃ!?!?!」
滅光破の斬撃波に飲まれた剣士の怪人は、断末魔をあげながら、爆散して散る
罪の無い人を利用し、子供も傷つけることに加担し、自身を最期まで正義と疑わない狂人は、金色の騎士の聖剣の一振りで全てを終わらせた
残ったのは、夜空を漂い、力なく聖剣を持つ金色の騎士だけ
何一つ喜べない、安堵はするものの、人形の怪人の言ったことや血塗れの子供達の姿
「…ミルース村に…行かないと…」
レオは、ミルース村の方に向かった
ミルース村の現実は、レオに…ユキナ・グラスが見るには、あまりにも早すぎた、受け入れられない現実に、レオは…ユキナは聖剣を村の広場に、力ななく落としてしまう
「誰か…誰か…誰か一人でも…生きている人はいないかぁぁぁ!!!!!!」
ミルース村の大人たちは、全員殺害されていた。全員複数の刺し傷で、家の中で無残に、何度も何度も何度も刃物に刺され、殺されていた。人形使いの言葉が正しければ、大人たちは操られた子供達に殺されたことになる
あまりにも凄惨な現場に、鎧を纏いながらユキナは絶望し、両膝を付いて、満月の夜空を見上げた
その現実を背けたい為に
補足 オーバードライブシステム
聖剣のレオの魔装鎧に搭載されている、新型のフルドライブシステム
ユキナの魔力出力は、感情の起伏で左右される傾向があり、魔法使いや魔力を行使する者なら、本来は矯正するべき傾向の特性だが、桁外れの魔力と魔力出力を持つユキナはセルゲイの指導であえて矯正していない
結果的に、魔装鎧側がユキナの魔力に耐えきれない為のセーフティシステムとして、魔力を強制的に排出させる仕組みとしてオーバードライブが組み込まれており、ベルトの操作がなどが不要である
フルドライブよりも、高い出力を叩き出す反面、使用後は魔装鎧の出力がしばらく下がってしまう欠点がある




