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ゴルン教異変編 星を撃ち落とす時

「アハハハ!!威勢のいい割に、なーんにもできないじゃん!ザーゴ!」


メルデの鉱山地帯、地形や障害物を利用して狭間の怪人の攻撃を凌ぎ続けていたユーゴであったが、いくら慣れている空間移動とワームホールを利用するワームシュートのビーム弾幕にも何度も耐えられることも、回避し続けることは無理であり、魔装鎧は肩部などが損傷し、ダメージを受けていた


「ち…ここまで攻撃が当たらねぇ相手に、凌ぐのも限度があったか…」


そもそもユーゴの専売特許は後先考えずに暴れ回る。守りに徹するのはユーゴは好みではない


「いけねぇな…リーノの奴から借りた青龍刀、折れたからどこかにぶん投げてしまったんだよな…」


カノンとリーノが仕込んだ式神の術式で出力強化はしているものの、魂の存在だけでは魔装鎧の機動力が落ちる。グランの存在、肉体が無ければ魔装鎧の要である機動力が十分に発揮できないのが、凌ぎ切れていない原因でもあった


「へへ…機動力が死んでるなら力で凌ぎ切ってやらぁ!!術式展開!フォントスラッシャー!乱れ撃ちだ!!」


ワームシュートの弾幕を、光の斬撃波の乱れ撃ちで相殺する

ユーゴは、どこか余裕があるというべきか、信じているのか。今の自分の役割に、時間稼ぎに全力を注いでいた。それがいくら不慣れな戦い方でも


「アハハハハハ!!!無駄無駄無駄無駄だよ!!こんな攻撃じゃ!私には当たらないよ!!」


メルデの鉱山地帯のユーゴと狭間の怪人の戦いを、高度2000㎞から見ている者が一人

無重力の真空を漂うに見ている禍々しい鎧を纏う怪人。観測者の怪人、全長2mの大柄である

この怪人には自由意思は無い。ただ単純な命令をインプットされ、隙間の怪人が攻撃を受けるのを、この高度2000㎞から、観測者が見て、自動で隙間の怪人の空間移動の魔法を自動で発動させている

リーノの推測はおおよそ当たっている。しかし、それを隙間の怪人も、観測者の怪人も知る由もない

ただ、動くことなく見下ろす

そう、グラン、リーノ、ユーゴが何かを企んでいるか知らない

まさか、高度2000㎞の衛星軌道上にいて、隙間の怪人の空間魔法の支援をしている

まさか、こんなところまで来て攻撃をする

まさか、こんなところを攻撃する方法なんてある訳がない、そんなことなんて考える訳もない

少なくともこの作戦を思いついた者は、まともな魔法使いを前提としていなかった。そう、隙間の怪人と観察者の怪人が戦っている魔法使いの二人は、現代魔法使い最高峰クラスである

それは、メルデの鉱山の一角から放たれた。まるで火山が爆発した以上の振動、空気と地面が激しく揺れ、耳が破裂するほどの爆発音


「な!?」「…来たな!」


隙間の怪人は驚いて、発射された方向を向き、ユーゴは確信してニヤついた

鉱山内部から放たれ、鉱山の一角を完全に吹き飛ばし、何かが天に向かって放たれた

観察者の怪人が一瞬、激しい光が見えた瞬間

観察者の怪人がそれを攻撃と認識する前に、観察者の怪人の胴体は貫かれ、首から下の体が完全に吹き飛ばされた


「まさか…まさかまさかまさか!?ザコの癖!?気付いていたのというの!?」


隙間の怪人は、ここに来て慌て出した。今までグラン、リーノ、ユーゴを弄んでいた怪人が

そして隙間の怪人が気付いた時には


「とったぜ!」


ユーゴの聖剣エクスカリバーが、隙間の怪人の胴体を貫いていた


「が、がぁぁぁぁぁぁぁ!!!!????」


エクスカリバーに貫かれる痛み、まさか自分自身が痛みつけられると思っていなかったのか、隙間の怪人は発狂する

そしてデタラメにワームシュートを撃ちまくる。ユーゴを振り払うように


「ぐ…!離すかよぉ!」


ユーゴは降り注ぐように撃たれるワームシュートを耐えながらも、隙間の怪人を貫いたまま逃がさない



高度2000㎞の観察者の怪人を撃ち落とす方法。観察者の怪人の弱点は、屋内までは見ることが出来ない

そう、屋内の鉱山の火薬や魔石の保管室。そこから放たれたのだ。発射の射線上にあった天井ごと、鉱山の一角を跡形もなく消し飛び、周囲も発射の反動で部屋も滅茶苦茶な状況になっていた


「どうだ!リーノ!?」「当たったけど、撃破まで至っていないわね…」


元火薬庫の中央で、2丁の魔装銃を大砲をに変えたモノを空の果てに向けていたライブラの魔装鎧を纏ったグランと、アリエスの魔装鎧を式神で遠隔で動かすリーノ


「鉱山にあったありったけの魔石と火薬、そして2基の魔装鎧の最大出力、そしてリーノの演算能力で当てることは出来たが…足りなかったのか?」

「…でしょうね、天井…というより、数十メートル厚さの岩盤をぶち抜きながら当てるから、威力が減衰したか…狙いが逸れたか…」


次弾を撃ち込むかべきか、悩んでいる間に、部屋の横の岩盤をぶち抜いて、何がグランとリーノの横切った


「ユーゴ様!?」


魔装鎧がボロボロになっているユーゴがグラン達の目の前に転がってきて


「!グラン!上昇!!横穴から来る!」


リーノがいち早く感知し、グランとリーノはボロボロのユーゴを持ち上げ

大穴を空けた天井から、急上昇して部屋から、鉱山地帯の上空に逃げるが

隙間の怪人は、グランの目の前に現れ


「ぐ!?」


グランは首を掴まれたまま、隙間の怪人に突進され


「グラン!?」「グラン!!?」


リーノとユーゴから離される

グランは苦しみながら、もがくが怪人の力は決してグランを離さず


「よくもよくもよくもよくも下劣のザコのくせに!!死んじゃえ死んじゃえ死んじんでしまえぇぇぇ!!!!」


これまでグラン達を弄んできた存在とは、まるで別人のように激昂し

グランの首を絞めながら、もう片方の手を大きくし、鋭利でプラズマを帯びた爪を出す


(まずい!魔装銃も置いてきてしまった!)


いくらライブラの魔装鎧を纏っていても、無防備の状態でこの攻撃を受ければタダでは済まない


(殺される!!)


グランは死を悟った瞬間、それは生存本能、火事場の馬鹿力か

首を絞めている隙間の怪人の腕を強く、握り潰すように両手で掴む

その時であった、グランの掴んでいる両手から、激しい白い稲妻を放電し始める。何かに反応するように


「な、なんだ!?このザコ!一体!?」


想定外の出来事に隙間の怪人は驚くが、驚く以上の状況が起きていた

グランの両手は、掴んでいる隙間の怪人の腕を食い込み始める。というより、吸収し始めたのだ


「がぁぁぁぁぁぁ!?!?!?は、離せぇ!!!」


ここに来て吸収されている事実、痛みとは違う不快な何かに隙間の怪人は悲鳴を上げ、もう片手の爪でグランを斬り殺そうとするが、グランは左手で隙間の怪人のもう一つの片腕を掴んで止め、それも吸収し始める


「や、やめろぉ!?なんのよ!!お前はぁ!?」

「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


グランも無我夢中で、自分でも何をしているのか分からなかった。だがグランの体は、妖魔の力をもつ怪人を吸収しようとしていた

ここで隙間の怪人の自身の両腕をワームシュートで撃ち抜いて千切り、グランから離れた


「ぐがぁ!!…がぁぁぁ…」


痛みで悶えながらもグランから距離を取る

グランは、千切れた隙間の怪人の腕を、自身の両手から吸収してしまったのだ。ただの人間である筈のグランが、怪人の体、鎧ごと吸収するという異様な光景。グランも一体、何が起きたのか理解が出来なかったのだ


「がぁ…し、死ねぇぇぇぇぇ!!!バケモノぉ!!!」


隙間の怪人は、痛みで悶えながらも、グランをバケモノと罵倒し、ワームシュートによるビームの弾幕を

グランに向けて撃たれた

避けるにも、防御する暇もない。だが、グランはこの攻撃を


(避けられる?何故だがわからないけど、隙間の怪人と同じことが出来る…!頭の中に術式が浮かぶ!)

「術式展開(シーケンス)!ジャンプ!」


グランは一瞬でその場から消える。超加速やそういう類ではない、まるで瞬間移動、空間移動のような動き


「な…!?」


グランは、隙間の怪人の背後に空間移動し、カードを一枚取り出し


「術式展開!フラッシュボム!!」


無数の爆発する光弾を隙間の怪人に直撃させて、爆発させる


「がぁぁ…バケモノめぇぇぇ!!」


隙間の怪人は、両腕を再生しながらもグランから逃げながら、ワームシュートの弾幕をグランに降り注ぐように撃つが、空間移動が出来るようになったグランは容易く空間移動して避ける。しかし、魔装銃無しではグランには遠距離攻撃する手段が限られ


(くそ…略式詠唱している暇も無いのに…この空間移動の魔法、何度も連発し続けるのはマズイ…魔力神経の負担が大きい!)


突然使えるようになった空間移動の魔法、使っているグランも魔力神経に負担がかかってきていることを自覚していた

そのことに隙間の怪人も気付いたのか


「アハハハ!!何度も私と同じことは出来なようだねバケモノ!!このまま殺して…」

「オレを忘れちゃ困るぜぇぇぇ!!!」


急上昇しながら、ユーゴは回転斬りで下方向から隙間の怪人の左腕を両断した


「ぐがぁ!!…バケモノとザコの癖に!私を…私をこんな目にさせてぇ!!!」


隙間の怪人はデタラメな弾幕を張りつつ、空間移動で逃げる。今までの優勢がどこにいったのか

グランとユーゴは避けるまでもなく、お互いの状況を確認するために近づく


「随分、面白いことになっているじゃないかグラン。ライブラと同じ芸当、いつから使えるようになったんだよ?」

「いや…これは…」


グランは少しバツが悪そうであった。自分でも訳がわからない、理解していない。しかし、この力は妖魔の由来であることを本能で理解していた為であった

”グラン・グラスは妖魔王になる可能性がある”星読みのアリエルに言われた言葉を思い出していたのだ

その様子を見たユーゴは


「まさか怪人の体を吸収するなんざ、聞いたことも見たことも無いが…その力、お前なら上手く使える筈だグラン。心配するな、お前はカノンに信用され、そしてあの魔王ライブラが、お前にその魔装鎧を預けている程だ。自信を持て」


続けて、ユーゴは言う


「お前は聖剣のゴートこと、ユーゴ・カリバーンが選んだ騎士だぞ?」

「ユーゴ様…」


ボロボロの魔装鎧のバイザーの仮面で表情が見えないのに、まるでドヤ顔しているように見えるユーゴ

しかしながら、彼の自信に満ちた言葉に、グランは安堵感を感じていた


「グラン、お前の魔装銃だ。拾っておいた」


ユーゴはグランに魔装銃の一つを空中で投げ渡し、グランは受け取る。武器はある。グランは周囲を見渡し


「…リーノは?」


リーノが加勢に来ていないことに気付く


「リーノから言付けだ。観察者の怪人は再生し始めて来たらしい、首から上半身まで再生してきたようだ。ここでなんとかしないと、また振り出しだ」

「…ということは、第二作戦を」

「そういうことだ、リーノは全リソースを本体の方に集中させるらしい。聖王都にいる、自身にな」



メルデの鉱山地帯から2000㎞の衛星軌道上

リーノとグランの超長距離砲撃で首から下まで吹き飛ばされた観察者の怪人であったが、首から上半身部分まで再生仕切っていた

観察者の怪人はメルデの鉱山地帯の方をより注視していた。一度攻撃されたことへの警戒心から、本能的な行動

そう、より注視していることで、逆に視野が狭くなっている。狭くなっていることで、気付かない、気付きようが無いのだ、あまりにも常識外れな攻撃手段は、狂人の怪人にも想像が付かない

それはグランとリーノが放った砲撃よりも、早く、そして痛みを感じた時には既に、突き刺さっていた

5m程の長さと追加ブースターが付いていた杭のようなミサイルが、観察者の怪人の胴体を突き刺さっていた


それは、聖王都魔法学校数十メートル上空から放たれたものであり、そこに深紅の色の魔装鎧


「今です!ホムラ様!」『ええ!見えている!術式展開!エクスプロージョン!』


リーノの体を借りたスコーピオンが、高度2000㎞にいる観察者の怪人の方向に向けて指を鳴らす

観察者の怪人に突き刺さったミサイルは大爆発を起こし、観察者の怪人は断末魔も上げることもなく跡形もなく消し飛び、静寂が戻る


そう、観察者の怪人の討伐は2段構えの作戦であった

メルデの鉱山地帯から、グランが纏うライブラの魔装鎧と式神を介してリーノのアリエスの魔装鎧の二つの鎧の出力とありったけの魔石と火薬による砲撃攻撃

そして、これが上手く行かなった場合にしても、ダメージを負った観察者の怪人を確実に仕留める為に


「…撃破確認…流石ホムラ様。急な作戦でもドンピシャで決めてくれるとは」


スコーピオンの魔装鎧を纏ったリーノは、ゆっくり降下しながら、焔の魔女に少し呆れつつも、感謝をしていた


『そうね、急に紅様の寝室の窓をぶち破ってきて「衛星軌道上の怪人を撃ち落とすから、ホムラ様を借ります」って言ってきたときは、何事かと思っていたし、紅様も相当驚いていたわね』


リーノはホムラと会話しながら、ゆっくり聖王都魔法学校の校庭に降りた。そこにはパジャマ姿の紅の魔女が待っていた

リーノは変身を解除し、スコーピオンのベルトを外し、紅の魔女に返そうとする

紅の魔女は受け取る素振りを見せずに


「…その様子だと、上手く行ったようね」

「ええ、協力感謝します。紅様。これで叔父上を殺そうとした件は水に流します」


淡々と言うリーノに、紅の魔女はバツが悪そうに受け止める


「その件は私が完全に悪いからね…それで、メルデとミルース村に行ったとは聞いてはいたけど…その様子だと、ただ事じゃないようね」

「ええ…ですが、私もやれることは、もうありません」


ベルトを受け取ろうしない紅の魔女に、リーノは強引に渡した後、大の字に倒れるように仰向けになる

リーノは疲弊していたのだ


「後はまかせるしかない。グランとユーゴ様に」


リーノは星空を見ながら、二人が隙間の怪人を倒すことを信じ、祈る

補足 焔の魔女がどうやって高度2000㎞の観察者の怪人に当てたか

爆裂のスコーピオンのミサイルによる攻撃手段は、長射程も対応しているものの高度2000㎞の射程はまでは無い

そこで、焔の魔女はリーノの体を借りてスコーピオンの魔装鎧を纏わせ、自身の最高時速のマッハ4以上で飛びながら助走をつけて、アッパースイングのようにミサイルを打ち上げて射程と弾速を桁違いに伸ばした

リーノの演算能力と目標の捕捉位置がわかっていた言え、トンデモない荒業かつこれを一発で決めた焔の魔女に、リーノも呆れていた

(リーノは、砲撃に攻撃手段を提案していた為)


補足2 作中におけるミサイルについて

現実世界のミサイルとは異なり、安定翼を持たない、推進力をもった細長い杭のような形状のようなものが基本形状

魔力や魔石の効果である程度の誘導能力を有しているが、ほとんどロケット弾のような用途で使われる

今回は射程が射程なだけに、事前に計算して錬成魔法で作ったミサイルを使用したが、普段の焔の魔女は射程が落ちるものの、狭間の怪人と戦った時のように魔力変換で錬成したミサイルを使っている

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