ゴルン教異変編 観察者
メルデ、鉱山地帯の設備を障害物を利用しながら、勢いを取り戻した聖剣のゴートこと、ユーゴとグランは
『こいつで5体!術式展開!!サークルスラッシュ!!』
次々と妖魔獣を葬っていた。ユーゴは回転ぎりしながら妖魔獣の心臓ごと胴体を一刀両断し
そのまま後ろで距離をとって口を開けてプラズマレーザーを放とうとした妖魔獣を
「アイスバレット!」
グランがすぐさま凍結弾で、妖魔獣頭部に当てて、凍結させ
『よくやったグラン!こいつで!6だ!!』
エクスカリバーの光の斬撃波で妖魔獣の心臓をごと胴体を両断し、撃破する
そして近づいて近接戦を仕掛けてくる妖魔獣に、エクスカリバーと銃身を刃に変形させた魔装銃を激しく打ち合い
『あまいな!オラァ!!!』
ユーゴが蹴り上げて妖魔獣の態勢を崩し
「これで7…!術式展開、マグナムバレット…!」
グランが最後の妖魔獣の心臓を撃ち抜き、爆散させた
100年前、ユーゴは共に戦った同胞をまた殺した。その感傷に浸る暇も無く、ワームシュートの弾幕がユーゴとグランの直上に雨のように振り注ぎ、上昇しながら回避する
『ちぃ…!次はヤツか…!』
ユーゴが舌打ちしながら、撃ってきた方向を見る
リーノが相手をしていた筈の隙間の怪人が、ユーゴ達の狙いを定めてきた
「アハハハ!!あのザコザコの人達、お仲間じゃなかったの!全部殺したんだ!ヒドーーーイ!!」
『お前がそう差し向けたのだろうが…!』
逆撫でするように隙間の怪人は挑発をし、ユーゴは思わず言い返し、感情を露わにしていた
「待ったユーゴ様。リーノは…」
リーノが相手をしていた筈だったが、リーノを探そうとしたグランとユーゴの前に、アリエスの魔装鎧が横を通り過ぎながら、ぶっ飛んでき
「リーノ!?」『リーノ!?』
鉱山の傾斜に、ぶっ飛んできたアリエスの魔装鎧が叩きつけられたのだ
心配する暇も無く、隙間の怪人はワームシュートの弾幕をユーゴ達に撃ち込んでくる
「アハハハハハハハ!!今度はサゴのお兄ちゃんが踊り狂ちゃえ!!アハハハハハハハ!!!!」
ユーゴ達は弾幕を避けながらも、斬撃波やビームで反撃をするが、全て空間移動で避けらる
『クソ…!あの回避のカラクリを解かないと、当たらないか…!』
ユーゴとグランは、ここまで避け続ける隙間の怪人ニ、何かしらの仕掛けがある判断していたが、分からずにいた
リーノが相手をしながら、分析をしていた筈だったが
「分析する前にリーノがやられては…」
『大丈夫よダーリン。あの空間移動のカラクリはわかった』
魔装鎧のバイザーから、リーノの通信が流れる
「リーノ!無事だったのか!」
『まあ、遠隔操作で色々分析しながらだったから、多少手痛いダメージをもらったが…おかげでヤラれた振りが出来たけど』
リーノは苦笑しつつも、グランに心配してもらって嬉しそうであった
ユーゴは、隙間の怪人を気を引きながら
『グラン、リーノの話を聞くのを任せる』
「頼みます、ユーゴ様」
グランの体をユーゴに委ね、リーノの話を聞く
「それでリーノ、あの不自然な空間移動は一体どういうことなんだ」
『あのカラクリは単純。こちらの動きを第三者が遠距離から見て、隙間の怪人に教えている…というより、隙間の怪人の意思に関係なく、第三者が隙間の怪人の空間移動の魔法を発動させているというのが正しいのかな』
「第三者…遠距離から該当者の魔法を発動させる、そんな芸当が出来るとしたらそいつも怪人か」
『さしずめ、観察者の怪人って所ね』
蛇の怪人、隙間の怪人…そして3種類目の怪人の存在がここに来て露わとなる
『問題は、この怪人がどこにいるかだったのよ。最初はマジで分からなかった、色んな方法で隙間の怪人に攻撃をやってみて、遠距離から見ている存在がいるというのはわかったんだけど、それでも観察、遠距離から見ている上に、隙間の怪人の魔法を発動させているなら、魔力反応は感じ取れる。それは私じゃなくとも、グラン、あなたでも気付くほどに魔力反応になるはず…』
「だけど、オレも感じ取れなかった…大体、遠距離って言ってもあの隙間の怪人の避け方は、一方向だけを見ているとは思えない…もしかして、さらに高度な場所から?」
隙間の怪人や、グラン達の動きを見るとすれば、四方の方向ではない。あり得るとすれば、上から、それも空戦をしているグラン達と隙間の怪人よりも、もっと上から
『ええ、相当探すのは手こずったわね。何せ、上空と浮遊通信魔石や、地上に設置通信魔石だけじゃ見つけられなかったのも』
オリュートスにおける通信技術は、通信魔石を地上に埋め込んだり、半永久に浮き続けられる浮遊通信魔石で通信インフラが支えられている
しかし、その浮遊魔石も、おおよそ高度10000m~30000m
「…浮遊魔石の高度で探しきれない…?まさか…?」
『そのまさかね…観察者の怪人は、高度2000㎞。重力の縛りの無い空の果て…敵は衛星軌道から、このメルデを見ていた』
ゴートのバイザーに、観察者の怪人の画像をリーノは送る
それは禍々しく、そして漂うようにオリュートスという星を見下ろしている怪人がいた
グランとユーゴは言葉を失い、リーノも感心すらしていた
『見つけた時は驚いたのも、まさかかと思って衛星軌道のある試作の浮遊通信魔石をハッキングしたら、見つけたからねぇ…確かに、ここまで距離を離れてる上に、常識外れのやり方をされたら、私でも見つけるのに手こずる訳ね』
高度2000㎞。観察者の怪人の存在が明らかになったことで、更なる問題があった
『リーノ、一応話は聞いていたが、そいつを倒さない限り、隙間の怪人のインチキ空間移動避けはとめられないんだようだが…どうやって、観察者を倒すんだ?』
『そこなんですよね、ユーゴ様』
魔装鎧は一応、宇宙空間でも活動が出来る
空戦能力を有した十二騎士の魔装鎧なら、重力圏を振り切って行くことも、大気圏を突破して帰還することも可能ではある
可能ではあるのだが、現状の大きな問題
「隙間の怪人を振り切ることは困難…!」
『そうねグラン。現状の私達に怪人の空間移動と空間魔法を用いたワームシュートを掻い潜って、観察者の怪人の所まで辿り着くのはほとんど絶望的って所ね。それに、観察者もこちらが存在に気付いたと分かれば、逃げるか、こっちを全力で潰しに来るか…』
『隙間の怪人を振り切って、観察者の怪人に辿り着けるとしたら、刃のジェミニアぐらいだろうな…よりによってか…』
十二騎士最高速度と機動力を誇るジェニミアであれば、この局面をひっくり返すことが出来る。しかし
『叔父上が異空間を脱出するまで、私達が耐えられるかどうか…別の方法で隙間の怪人を倒すか…』
「…いや、辿り着けないなら、ここから撃ち落としてしまえばいい」
絶望的な状況下で、グランは閃く
まともな魔法使いでは、思いつかない、思い付いても実行に移すようなことをしない方法を
『…何か、算段があるか?グラン?』
ユーゴは隙間の怪人相手をしながら、グランの意見に耳を傾ける
「超遠距離魔砲攻撃で、高度2000kmの空の果てにいる観察者の怪人を撃ち落とす。膨大な魔力と火力が必要だが、幸い、ここは魔石の原料を採掘する鉱山地帯。岩を破壊に使用する爆破物、そして魔石もどこかしらにある」
メルデの鉱山地帯は、採掘と加工を兼ね揃えた施設がいくつかある
そして採掘に使われる火薬や、爆破にしようする魔石も
『…メルデの採掘資源と、採掘に使われる火薬類や魔石を錬成魔法と変換魔法を使用した弾薬と発射機構、魔装銃の負荷を無制限に設定して大砲を錬成…超遠距離大砲を作れば、確かに届く可能性はある』
リーノもグランの意見には前向きであるが、楽観視出来ない、無視できない要素もある
「問題はその観察者は隙間の怪人だけじゃなく、こっちの動きを見ているということ…こちらの動きや狙いを勘付かれれば、全力で阻止してくる筈…」
当然、敵はバカではない。狂人でこちらをなめてはいるが、流石に自身の危機を迫れば、阻止するか回避動作を取られる
「何とか打ち出したところで、回避されたら意味がない…こちらの動きを悟られず、こちらの狙いを読まれないようにするとなると…」
『案外、何となるかもねグラン』
心配するグランに対し、リーノは観察者の怪人の欠点を見つけていた
『観察者の怪人は高度2000㎞でメルデとこの鉱山地帯を見ている。大した望遠視力って言ったところかもだけど、別に魔力反応を追っている訳では無い。視界を妨げれば、一時的にこっちを見失うみたいね。隙間の怪人に煙幕魔法を使ったら、あからさまに煙幕の外に出たし、煙幕の中じゃ攻撃の精度も段違いに落ちていた』
「…煙幕なら有効なのか?」
『というより、煙幕だけじゃなく、建造物の中でも有効ね。観察者の怪人は建造物の中までは見ることが出来ない』
リーノとグランは勝算が見えてきており、隙間の怪人の相手をしながらも話を聞いていたユーゴは
『後は時間稼ぎが必要か?どのぐらい稼げばいい?グラン、リーノ』
「…5分程は…」
少し考えて、ギリギリ準備できる時間をグランは言ったが
『10分稼いでやる。その代わりに確実に撃ち落とせ』
ユーゴはニヤつきながら、その倍の時間を提示し
『ライブラ!話は聞こえているな?』
「ああ、お前たちの通信は常時繋いでいたからな。随分と常識外れな戦い方を思いつくものだ、つくづく人間の魔法使いは…」
話を聞いていたライブラは苦笑して呆れつつも、それ以外の案が無いのも事実であるのも理解していた
『ライブラ、どうせ纏えないなら、お前の魔装鎧をこちらに空間移動で寄越せ。アリエスとライブラの魔装鎧、2機の魔力出力なら、もっと万全になるだろ?』
「よかろう、渡すタイミングを言え」
ユーゴの提案に、ライブラは即座に承諾した
リーノは、今の作戦をさらに盤石にするために考えをまとめ
『なら、こちら側でも撃ち落とす手筈を打つ。グラン、煙幕魔法を使えるかしら?』
「いける、丁度百年祭で戦った蜘蛛の怪人の能力を参考にしたのがある…!」
グランはカードをスタンバイする
『リーノ、お前の偃月刀を貸せ。ユキナ程とは言わんが、防戦なら武器の手数か欲しい』
『わかりましたユーゴ様、なら青龍刀で…』
リーノは持っている青龍偃月刀と、ユーゴの好みの間合いの武器に変える
『グラン、そっちのタイミングに合わせてこっちも煙幕を張る!』
「わかった!」
作戦がまとまった3人は、隙間の怪人に魔装銃のビームとエクスカリバーの斬撃波で牽制を加えつつ
「アハハハハハ!!当たらないよ!!!ザーコ!!!」
空間移動で回避し、グランとユーゴの目の前に空間移動してきた隙間の怪人に
「いまだ!術式展開!スパイダースモーク!」『術式展開!黒煙波!』
グランとリーノは、空中と地上に爆発的な煙幕を展開し、辺り一帯の視界を潰した
煙幕と気付いた隙間の怪人は、すぐさま煙幕の外に逃げる
「バッカじゃないの!!そんなものの、意味ないのに!!!」
ゲラゲラ笑っていた隙間の怪人であったが、煙幕の中から猛スピードでエクスカリバーと青龍刀を持って強襲してユーゴに視認が追い付かず、防いだものの
『やっと、当たったか!』
やっと、一太刀。大したダメージにもならないが、一太刀を当てることが出来た
その様子に、今まで笑っていた隙間の怪人は、今度は声を荒げ
「よくも、よくもよくもよくもよくも私を触れたぁ!!!!!ザコザコのくせに!!!死んで!しまえぇぇぇ!!」
相当、攻撃そのものが当たったことに怒った隙間の怪人は、これまで以上の弾幕を怒り狂った感情のまま打ち込んでくる
ユーゴは弾幕を避けたり、剣で切り払いながら
『そうだ…こっちにどんどん敵意を向けてこい!メスガキ!!』
補足
オリュートスにおける、空の果てこと宇宙空間は大気が存在しないが魔力のマナが地上よりも多く満ちた空間
宇宙開発自体は進んではいないものの、研究はされており、研究の一環として衛星軌道に通信魔石を浮かべている実験をしており、リーノはこれを利用している
ただし、国家レベルの研究機関で行えるものなので、犯罪組織程度が宇宙空間を利用するなんて発想が思いつかなった為にリーノも手こずった




