ゴルン教異変編 潜入計画
「お、戻ってきたな」
宿に戻ってきたカノン達を、白猫姿のユーゴがベットにくつろぎながら出迎えた
「そんで?首尾どうだ?カノン?」
「まーあ、これから作戦会議だ」
ユーゴはカノンのこの返答だけで、首尾がそれなりに良好であると察した
「OKだ。そんじゃオレは寝る。作戦はお前達に任せる」
ユーゴはそのまま眠りについた。猫らしい寝方で
「…ユーゴ様、随分猫の姿に慣れたというか」
「オレもここまでコイツが猫適性があるとは思わなかったがな」
カノンは帽子をテーブルに置き、リーノと情報交換する
カノンとグランが見た、儀式の映像の内容をリーノは解読する
『叔父上の言う通り、コレは古い砂漠の大陸の言語よ。エジズダ国の2000年以上前の言語による、石化解除の術式ね…これまた考えたものね』
あっさりと儀式の詠唱を解読したリーノは、ゴルン教の手口に関心していた
『東の大陸の言語も相当の難易度なんだけど、砂漠の国の言語も同じく位に難しい上に、現地ですらもう扱われていない言語を使うとは…詐欺の手段としては最善手ね…ホント、腹ただしいぐらいに関心する』
リーノの言葉のトーン自体は楽しげではあったが、心情的には相当に頭に来ていた
「…詠唱自体はただの石化解除…でも、どうやって死者を蘇生なんてさせているのかがわからない…」
「だな、グラン。一応、住人に頼んで、石像のホンの僅かな欠片というか、削った粉から分析をしてみたが、単純に石化しているだけで、あの石像の状態に蘇生効果、回復効果なんてものは無い」
カノンは昨晩の酒場で仲良くなった人物の一人に頼み込み、石像の指の爪先部分の僅かに貰っていた
それらを魔法薬などから分析してみても、ただの石化している状態である
『魔王軍の魔法使いも、石像を分析していたし、こっちでも石像の様子をスキャンして分析してみても同じ結論に至った…あの石像は生者を石化しているということね』
そう、生者が石像になっている。おかしな話になっており、カノン達、魔法使い達がゴルン教の怪しむ要因であった
「死者を蘇生させる手段として石像化させている訳じゃなく…最初から生者が既に石像になっている…意味がわからない…」
「だな、グラン。ということは石像になる以前に…仮にも死者を蘇生をそのものが成功しているとしてもだ、石化させる理由は無い。まあ、これが演出とかなら考えるだけ馬鹿馬鹿しい話になるがな」
石化する理由を魔法使いの視点から推測するのは、三人は無駄だと悟る
「それでリーノ、ゴルン教の施設についてはどうだ?不審な点があると聞いたが」
『そうね叔父様、ゴルン教の施設はありきたりの宗教施設って所。清掃もよく行き届いている。ただね、そもそもの建造物として不自然な所がある』
リーノはゴルン教の施設の地図を立体映像として映し出す
『大きな宗教施設であって、2階建ての地下があるけど…地上部分には特段妙な所はなかったけど…問題は地下ね』
「…妙に地下空間が広い…というより、広い上に深い?でも詳細なデータが無い?」
グランの言う通り、リーノが映し出した地図は地上部分は詳細に関わらず、地下に関してはあやふや、地下空間があるという程度しかわからないようであった
「リーノなら地下空間に直接赴かずとも、詳細にスキャンできそうなものだが…阻害されていたのか」
『そう、このゴルン教の施設、何が何でも地下空間を調べて欲しくないようね。あらゆる手段で地下を調べる方法、侵入対策をしている』
特段、珍しい話し出は無い。魔法の発展しているオリュートスかつ更に魔法技術が最先端の国の一つであるカリバーン王国領土にて、魔法を泥棒の手段用いる者もいる
それに対抗した魔法技術も使われるのも当然ではある
『ただね、床下の材質も錬成魔法を阻害する材質を使われてる。何が何でも地下に誰も通したくないのはわかるけど…その材質を床下のみに使っている』
リーノが一番引っ掛かっていたのはそれであった
「…錬成魔法なら、出入り口を作ることも出来る…魔法を用いる泥棒が使う手段の一つとして対策される方法だが…だとして床下のみに使うのは確かにリーノの言う通りに不自然だな」
「使うとしたら、そもそも建物の侵入させないように壁面に使うべき錬成阻害の材質を使っている…それにこの地上部の地図だと…地下に入る為の階段や出入り口が存在していないですよねカノン先生」
グランの指摘通り、上に上がる階段はあっても、地下に降りる階段がゴルン教の施設には存在していない
『転移魔法の類を使っている、空き部屋の一つにその痕跡があったわ。そこから地下室に出入りしていると考えられる』
「調べるは地下か…」
ここまで下調べで、目的はゴルン教の施設の地下に行くことに方針が決まる…が
「おそらく、魔王の配下達もそこまでは調べ尽くしてる筈だ。そして地下までたどり着いて…行方不明になった」
「相応の戦力はいると考えるべき…そして対策も」
グランは魔装銃の一丁を取り出し、装填されているメモリーを再確認する
「昨晩の話を聞いた上で、想定される攻撃に対しての防御手段を用意はしましたが…如何せん情報が少なすぎて、万全とは言えないのが…」
「致し方ない、完全に後手に回った負け戦だ。今できる最善手でいくしかあるまい」
カノンとしては、これでしくじったら魔王軍の総攻撃でメルデの町ごとゴルン教を壊滅させる算段までは考えてはいたが、口には出さなかった
『やはり、夜中に侵入して、地下室には強硬手段を使うって所かしら?叔父上』
「ああ、オレとグランで侵入する。ユーゴとリーノにも働いてもらうぞ」
余談
「ところで、珍しくリーノが怒りの感情を露わにしていたというか…砂漠の言語の辺りから」
これまでにグランが見たことがあるリーノは、どこか魅力的で、小悪魔的で、そしてそこまで怒りを見せたことがなかったために、疑問を聞く
『…砂漠の大陸の古い言語を解析し、世に広めたのは、前サイク家当主…私にとっては祖母にあたる人物よ。私にとっては魔法と学問の師の一人でもある』
「ギギノ・サイク、彼女は砂漠の大陸と東の大陸の言語解析に貢献して、元々は探索で最前線を歩んでいたが、今はサイク家の補助役に回っている」
グランは、リーノの怒りの理由を理解する。祖母であり、そして師にもあたる人物が開拓した砂漠の大陸の言語を用いて、それらを悪用するゴルン教に対して、リーノが怒るのも当然であった
『これでゴルン教が黒だとしたら、魔法使いとしてもサイク家の人間としても到底看過できない話だからね…らしくもなく、熱くなったわけよ、ダーリン』
リーノは感情的になりつつも、グランをからかうことで冷静を保っていた、保させていた




