ゴルン教異変編 魔砲使いレイア
ミルース村から離れた森の奥、早朝から爆発的な轟音が轟く
射線上の木々をなぎ倒し、放たれたのは大砲、魔法による大砲の一撃
「外したか!」
レイアは魔装銃を変形させた大砲を構えながら、狙いを探しつつ、レイアの足元の地面の一部が錬成魔法で吸収される
錬成魔法で吸収された地面の土などを、大砲の砲弾に錬成していた
レイアの視界から、目標の影が映り
「そこか!これならどう!術式展開、ロックシュート!クラスター!」
レイアは目標に向けて大砲を放つ。地面を岩石の砲弾として放つ魔法は、レイアの魔力で爆発を起こして放つというパワフルかつ豪快なものであり、威力もまともに当たれば魔装鎧に纏っていてもただで済まない威力
それを散弾のように放ち、先程よりも広範囲であったが、レイアの目標には当たっていない
それどころか、その散弾で放たれた砲弾の隙間を搔い潜りながらそれは突破し、近づいてくる
「嘘でしょ!?」
レイアは信じられないと思いつつも、瞬時に大砲をミニガンに変えて岩石の弾丸の雨を叩き込む
しかし、それすらも掻い潜り、レイアの懐に入り足払いをし
「ぐ!?」
レイアを転倒させて、ミニガンを蹴り飛ばし、簡単に拾えない方向に飛ばす
「見事な火力だなレイア。なるほど、こいつがお前の魔法使いとしてのスタイルか」
カノンの姿の式神が、レイアの眼前に杖を向けながら評価をする
「一発も当てられずに、一方的にやられて、嫌味にしか聞こえないけど?」
「相手が悪かったな」
不貞腐れるレイアに、カノンは思わず微笑を浮かべながら杖を引っ込めて、レイアの手を掴んで起こす
「式神だっけ?遠隔から操作してそれなら、本体のあなたがどれだけ強いのか想像が付かないわね」
レイアはスカートに付いた土をなどを払いながら、カノンの戦闘力を認識する。伊達に十二騎士の一人、刃のジェミニアであることと
「道理で、セルゲイ先生から弟子として指導を受けたグランとユキナがあなたを慕うのも頷ける」
最初こそはカノンの実力を疑ったレイアであったが、遠距離で正確に式神を動かす魔力の技量と、的確な采配、そして圧倒されたことで認めざる得なかった
「どうやら、レイアのお眼鏡にあったようで何よりと言うべきか、魔王の孫娘に認められて喜ぶべきか…まあ、早朝から叩き起こされて、早朝から手合わせしろって言ってきたお前さんをどう評価するか、悩ましい所だな」
「…褒められているし、嫌味を言われてるこっちは、どう受け止めればいいのよ」
意地悪そうな顔をして、意地悪なことを言うカノンに、レイアは呆れた表情をしつつも
「悪かったわね。どうせなら私の能力と戦力を知ってもらいたくって…」
レイアは言い切るのを止め、恥を忍んでカノンに問いかける
「ハッキリと聞きたい。私は足手まといにかしら?」
真剣な眼差しでレイアはカノンに問いかける、自身の実力を歴戦の十二騎士である刃のジェミニアこと、カノンに
カノンは少し考えながら、先程蹴り飛ばしたレイアのミニガンを魔装銃に戻し拾い上げる
「…決定打になり得ないけど、援護攻撃するだけの力はある…のがオレの評価かな?真正面から妖魔や怪人とやり合えば、確実に殺される。レイアの立ち回り方次第で、足手まといにもなるし、助けにもなる」
カノンはレイアの魔装銃を回しながら質問に答え、レイアに魔装銃を渡そうとする
しかし、レイアは受け取らずに
「…援護に徹しろってことかしら?」
「死にたくなければな」
それは、おそらくレイアのプライドを傷つけることになるのはカノンは百も承知で答える
案の定、レイアは唇を噛んで怒りを抑えて問いかける
「理由は?」
「空戦機動の心得があるか無いかの…違いか。レイア、お前は実戦の戦い方も少なからずかじっているな?」
カノンはその辺の木の切り株に座り、レイアの戦い方を思い出しながらおさらい
「初撃を避けられたと判断するが否や、散弾に切り替えて、さらに近づかれたら連射攻撃に瞬時に切り替えたのはいい判断だ。詰めが甘かったとはいえ、地面に守りの術式を準備していた、攻守ともにおろそかにしなかった…少なくとも学生レベルの魔法使いとしては軽く凌駕はしている、魔装銃、魔装具の使い方をよくわかっている」
「…まさか、足元の魔法の展開を見抜いていたとは」
カノンが足払いをした理由としては、態勢を崩すのと、レイアの守りの魔法を封殺する為であった
「魔法、魔装具を使いこなす為のセンスはある。そこに魔装具の最大のメリット、魔法の展開スピードを活かせる空戦機動を心得があれば、もっと化けるとは思うがな。残念なことに、これを一朝一夕に身につくものじゃない。そしてウロボロス怪人は、空戦能力を有している以上、空戦能力のある魔装鎧も無ければ、空戦機動の心得の無いレイアに出来ることは限られてしまう…って所だな。例え空戦能力を持つ魔装鎧を纏った所で、瞬時に使いこなせない」
カノンは丁寧にレイアを評価しつつも、現実的な理由を語る。レイアは悔しながらも、心の何処かで理解はしていた
「全ては空戦機動の心得があるかどうかか…わかってはいたけど、やはりそのアドバンテージは大きいか…ホント、グランとユキナが羨ましいと言うべきか…セルゲイ先生から教えてもらったんだから」
「うーん…それか」
羨ましいと語るレイアに、何かを知っているカノンは微笑する
「何よ?おかしなこと言ったかしら?」
レイアは怪訝な表情をする
「いや、セルゲイがあの二人の空戦機動の心得を教えたのは、割とやむ得ずって感じだったらしいのと、セルゲイとしてもグランとユキナが空戦機動をモノに出来るかどうか自信が無かったらしいんだよな…幸い、あの二人はモノに出来たが…結構困っていたような、的なことを、セルゲイが残した日記に書いていたのを思い出してな」
セルゲイがカノンに残した書物や日記には、これまでのこと、特にグランやユキナに関する些細な日常も
書かれていたのだ
「レイア、お前さんがグランに負かされたのは、空戦機動を応用してきたグランに一方的に叩きのまされたって所だろ?魔装鎧が無くとも、空戦機動の動きは、戦いには有効的な手段だからな」
レイアがグランに負けた敗因をおおよそ言い当てきたカノンに、感心しつつも、苦虫を噛み潰したよう表情をする
「…嫌なことを思い出させるわね。まあ、弾幕を掻い潜ってきたアンタ方が相当凄いんだけど…アレも空戦機動の戦法…にしては、イカれたことをしてる気がするけど」
「まあ、近いか。元々の空戦機動の概念は、圧倒的な火力と機動力を持つ妖魔相手に、奴らのプラズマレーザーの弾幕を掻い潜って、近距離戦に持ち込んで切崩すが基本概念だったからな…相応の反応速度と、魔装鎧の機動力に追いつける動体視力が要求されるが」
「…随分ぶっ飛んだ概念だったのね、空戦機動って…」
レイアは呆れてしまう程に、本来の空戦機動の目的、概念は常軌を逸したものであった
「後世にそう言われても致しないんだが、当時の妖魔には有効打だったんだよ。それに、魔装具、魔装銃に関しては、空戦機動との戦い方と相性がいいんだよ」
「そうなの?…いや、確かに言われてみれば…」
カノンの魔装銃と空戦機動の相性がいいということに、一瞬驚いたレイアであったが、よくよく思い出してみる、グランの戦い方について
「瞬時に術式を展開かつ、錬成や変形魔法で瞬時に武装を変形、切り替え出来るのは、音速の速度で飛ぶ魔装鎧と空戦機動の相性は、確かにいいのか…」
「グランはある意味では、魔装具と空戦機動の理想的で運用だな。空戦機動はその戦い方でそれぞれ、個人に合わせたやり方があるから、不要だから廃れたというのもあるが、教える側も難しいんだよ」
「だから、一朝一夕で身につかない訳ね…適正に合わせて、新しい開拓しなければならないからか」
ここまでのカノンの言葉や、自身の理解力でレイアは納得する。せざる得なかった。自身の力不足に
落胆するレイアに、カノンは彼女の力強い魔力と使用する魔法の適正や、体を観察する
視線に気付いたレイアは
「どうしたのよ、そんなジロジロ見て…」
「いや、ライブラの奴にドヤされそうだか…見込みはあるなって思ってな。種族的にも竜人と魔族の血が入ってるお前さんの魔力出力と身体能力に理解力、空戦機動の技術を叩き込むのも面白そうだと思ってな…」
空戦機動を能力を有するレイアを想像し、カノンはニヤつく
レイアは嬉しそうに、意地悪く
「…ということは、私もカノン先生って呼ぶべきかしら?」
「…お前さんに師匠がいるなら、それはそれで不義理になってしまうだが?」
「その辺の心配は無用よ。今はいないからね」
レイアは手を伸ばし、魔装銃を返すように促し、カノンは魔装銃を返す
「この一件を無事に生き残ったら、考えてやる」
「随分と、物騒な事を…」
魔装銃を受けとり、ホルスターに戻したレイアは自身は楽観的に考えていないとは言え、実戦に慣れていない。そこは致し方ないとは言え、少し考えが甘いとカノンは感じていた
「ハッキリ言えば、今回は完全に後手に回った負け戦だとオレとライブラは思っているんだよ。ウロボロスとゴルン教の目的がわからない以上、どんな手を使ってくる相手に守りに入らざない得ない状況、言ってしまえばここは死地だ。もはや現時点で打てる手を打って、こちらの最低限の目的、アヤメを守り切るだけは何とか成し遂げるしかない。ライブラがレイアを頼らなかったのは、ただの力不足だけじゃない。あまりにも危険すぎるからだ…奴なりの配慮だと言うのは、覚えておいてやってくれ」
「それは…無茶をするなってことかしら?」
レイアの問いに対し、カノンは想定外な回答をしてきた
「いいや、言ったところで言うこと聞くタマじゃない。レイアなりの最善を尽くすことを期待するよ。オレはライブラ程甘くない、この場にいる以上、期待させてもらうよ」
「…案外、アンタも素直じゃないわね」
それはカノンなりのエール、生き残れという意味だとレイアは苦笑しながら受け止めた




