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ゴルン教異変編 アイリス・クローズ

「祭壇の床下に、地下室の階段か…緊急避難用か」

「今では、翠様と私ぐらいしか使っていませんがね。案外驚かないんですね、カノン様」

「大戦時じゃ、珍しくなかったからな。教会が避難場所で使われたり、シェルターに使われたりな」


ミルース村の教会の祭壇、その地下に降りる階段にアヤメに案内されたカノン、ユキナ、レイアの3人

アヤメはウキウキしながら3人を案内する。そしてカノンは、この先に何があるかは検討がついていた

降りて辿り着いた地下室、アヤメが扉を開ける

そこは既に明かりがついて、辺りも清掃が行き届いてるような様子あった。そしてその地下室に、綺麗に、そして丁寧に飾られた魔装鎧が、3人を待っていた


「クラブの…魔装鎧…綺麗だ…」

「まさか、こんな近くにあるなんて…翠様は、何処かに隠したって言っていたのに…」


クラブの魔装鎧は綺麗に手入れをされて、ユキナの思わず言葉が出てしまう程であり。一ヵ月近くここにいたレイアが、こんな近くにクラブの魔装鎧があるとは思ってもいなかっただけに、驚いていた

そして三人は感じ取る。否、どれだけ勘が鈍い者でも感じ取れるほどの存在感を感じ取っていた


「嬉しそうですねアイリス様。カノン様が相変わらずでよかった?それに可愛い子がこんなにって?」


アヤメはクラブの魔装鎧に笑顔で話しかけていた。そこに誰かがいるようで


「え…えーと、アヤメちゃん?」「そこに誰も…」


ユキナとレイアは、アヤメの行動にビビり、恐れを感じていた。カノンはやれやれという感じで


「…アイリス、驚かすのはやめてやれ。生命波動で介して会話が出来る、認識出来るのがアヤメだけだろが」

「あ、バレた…流石カノン君。だ、そうです」


アイリスの言葉を伝えてくるアヤメは、どこか嬉しそうで、意地悪そうでたのしそうであった。カノンはため息をついて


「イタズラは程々にしてくれアイリス。割りと状況はよろしくない」

「…カノン君のいけず。っと、おっしゃっていますが」


アヤメの様子から、アイリスはこの状況を楽しんでいるようであったが、カノンの真剣な表情に何かを察したようであり


「…わかりました、アイリス様。しばらく、私のお体を使ってください」


アヤメが目を閉じて、集中する。魔力とは違う何かがアヤメに入り込むような感じがカノン達に伝わる

アヤメが目を開く。そこにいるのはアヤメ・クローズであるが、雰囲気がガラリと変わっていた


「カノン君がここまで余裕が無いってことは、余程状況が切迫している感じなのね?」

「…アイリス、オレの妻の名前を言えるか?」


カノンはアヤメの質問に対して、全く関係の無い質問で返してくる。確認にするかのように


「…カノン君の妻は、ヒメノ・エーデルワイズ。ハイエルフの美女であり、十二騎士が一人、黄金のサジタリアス…カノン君が今、指輪を外している、身に着けていないのは、また喧嘩でもしたのかしら?」

「ああ、2年ぐらい口を聞いていない…そこまでの答えを言えるとしたら、どうやらアイリス、お前のようだな」


ドヤ顔で答えるアヤメらしき人物の答えに、カノンは、そこにいるアヤメにアイリスが憑依していることを確認、確証を得ていた


「お久しぶり、カノン君。そして初めまして、この時代の聖剣の勇者様と魔王のお孫さん。私がアイリス・クローズ。肉体を失って、魔装鎧に魂と意識を残した幽霊…今はアヤメちゃんの体を借りて話をさせてもらっているわ」


アイリスとカノンのやり取りと、カノンの意外な事実の発覚に驚いて置いて行かれていたユキナとレイアは、丁寧に挨拶をするアイリスに我に返る


「あ、は、はい…」「は、初めまして…アイリス様」


我に返った所で、まだ困惑する二人であった。その二人を見てアイリスはクスクスと微笑む


「お前の魂が魔装鎧に残っていることはわかっていたが、そうでもしないと会話も出来ないとは…ユーゴの奴とは大違いだな。奴は肉体が無くとも、魔装鎧だけで動いていたぞ?」

「それは、カリバーン家の血筋が特殊なんだと思う。私はアヤメちゃんの体を借りないと難しい…まあ、アヤメちゃんと意思疎通出来たのは幸いというべきかしらね?流石、私と同じ体質の生命波動の持ち主ね」


ユーゴの状態について、アイリスの答えはカノンにとって、一つだけ確信を持てたようであった


「なるほど…そこはオレと同じ見解という訳か…ひとまず、アイリス。お前は今の状況をどこまで把握しているか聞きたい」

「…どこから答えるべきかしら?アヤメちゃんがゴルン教なる怪しげな宗教組織に狙わていること?ライブラ様が密かにアヤメちゃんの警護をしていること?そして最近、ライブラ様の配下達がいずこかに失踪したこと?カリバーン王国で、怪人なる妖魔の力を使う者が現れたこと…そしてこの怪人とゴルン教が何かしらの関係があることと、アヤメちゃんを守るためにカノン君がここに来たってことかしら?」


アイリスから語られる情報は、おおよそ正解であったことに、3人は驚く。ここまで正確な理由は、カノンはすぐに気付き


「もしかしなくとも、頻繁にアヤメと会っていたのか。怪人騒ぎは、既に公表されて新聞にも掲載されているからな。ゴルン教に関してはアヤメから事情を聞いたって所だろうが…よく、ゴルン教と怪人の関係があるとわかったものだ」

「その辺は、カノン君達が来たことで確信に変わったってところ。でも、カノン君がここに来るなんて、呼んだのはライブラ様かなって思ったけど…何があったの?ライブラ様が無暗に生命波動の存在を、いくらカノン君であっても、教えることはない。カノン君の手を借りないといけない程に、状況が切迫しているの?」


ライブラが大ダメージを受けて、魔装鎧の力を十分に引き出せない状態であることはアイリス、アヤメは把握はしていない

カノンはこれまでの事情を、現時点で必要な部分の情報をアイリスに伝えた

話を聞き続けていくうちにアイリスは、明るい表情を徐々に曇らせていく


「…なるほど、思った以上に状況が良くないのは確かだね…アヤメを狙っているであろうゴルン教に妖魔の力を利用するウロボロスの存在…そしてライブラ様の配下が殺されていただなんて…でも、それよりも何よりも…」


アイリスは罪悪感のある、悲しげな顔をカノンに向ける


「カノン君…また貴方に重荷を背負わせてしまう結果になった…ごめんなさい…本当にごめんなさい」


アイリスはカノンに頭を下げて謝罪をする。カノンはバツが悪そうな顔になり、ユキナやレイアの目線を気にしつつも目を逸らしていた。しかし、なまじ殴り合っただけの付き合いのあるユキナは何か勘付き


「…カノン先生?何か隠しています?アイリス様の謝罪に対して、何か思うところが?」

「い、いや…まあー…ユーゴはライブラも気を遣っていたからな…良くも悪くもアイリスは人が良すぎるからなこそだからな…少し、オレの本音を言うぞ。この状況に対して」


カノンは頬を搔きながら、これまで言っていない本音を言う。アイリスのおかげで、言わざる得ないカノンの本音


「オレは一体何の為に戦ったんだろうなって思っている所はある。数多の仲間、大切な人たち…ユーゴ、ホムラ、アイリスを犠牲にしてまで妖魔王を滅ぼした未来で、忌々しい妖魔の力を利用して、悪を成す者達がいる…この未来の者達に失望した部分は否定はしない…こんなの、割りに合わない。オレが勝ち取りたかった未来は、妖魔の脅威の無い世界を夢見ていた…そう、思ったことは事実だ」


ユキナは驚く、ここまでこと言う程にカノンは、これまで表情にも態度にも出ていなかった。現に今もそこまで悔しいとか怒っている様子では無かった為


「…言う割には、カノン先生落ち着いているような」


ユキナに疑問に、カノンは微笑みながら言う


「そりゃ、妖魔を打倒した未来で、生活を豊かにするため、多くの者を救うために魔法も発展と開発が進んだことに心が躍ったんだよ。失われたモノが多かったあの100年前の戦いから、様々な困難があっても未来をより良いことに進もうと頑張った人たちがいた…魔装魔法の概念を知ったときは、興奮したもんだ」

「セルゲイ先生…」

「そうだユキナ。セルゲイや様々な人たちが魔法と魔装具を発展させて、生活を豊かにさせて、様々な人達の助けになった…まあ、良くも悪くも魔法も魔装具を使い方次第、悪用する者も現れるのは致し方ない…だけど、セルゲイは少なからず善意で技術を発展させてきた、そんな偉大な大魔法使いにオレは託された、ユキナやグラン、そしてこの世界の平和を…それを邪魔する、台無しにする輩がいるなら、オレは戦う。例え100年前の時代の人間で、本来ならこの場にいない人間だとしてもな…オレはこのオリュートスの全てを失望をしている訳では無い」


カノンの言葉に、ユキナは表情が明るくなり、レイアはカノンの思わぬ本音に驚いていた

カノンは、驚いた様子のアイリスの方を向き


「アイリス、オレは重荷だとは思っていないよ。むしろこの未来の世界に来れたことを役得だと思っているぐらいだ」

「カノン君…」

「それに、オレには可愛い姪っ子達がいるんだぜ?100年経っても、サイク家の人達はオレを迎え入れてくれたんだ、そんな嬉しいこともあったんだ。そして、共に戦ってくれる仲間もいる」


カノンはユキナとレイアに視線を向ける。カノンにとってはレイアも仲間として数えていた


「さてアイリス、こっちの事情と本音は喋った。今度はお前さんとアヤメのことを聞かせて欲しいな。お前が同じ生命波動を持った者が現れたと知って、黙って2年間を過ごしたと思えない」


アイリスは少し考え、思い出す


「…実の所、2年前にこの世界に来た時点で私の魔力は何かに反応していたの。丁度、カリバーン王国、聖王都の方に何か…敵、倒さなければならない存在がいると」

「私も感じました。アイリス様がココに来て、しばらく経った頃に、生命波動の力を得た時に…」


アイリスとアヤメは切り替わりながら、それぞれ感じた敵意の存在。それはカノンとユキナには心当たりがあった


「…カノン先生、それってもしかして…」


ユキナはこの件に関しては既に知っている。というより、聖剣のレオとして聖剣ムーンダイト、聖剣デインダイトを使いこなしたあの日に、直感で理解してしまったのだ


「もしかしなくともだな、生命波動の力と聖剣の力、どちらも似たような存在って、ユーゴの奴が言っていたのを思い出したよ。どちらもこのオリュートスの脅威の存在に対して使い手、担い手は現れるのだろうって」


カノンは言うべきか少し迷った。この場にレイアに聞かせるべき話かどうかであったが、意を決して言う

この時代の聖剣の担い手、生命波動の使い手が必要とされた、想定されたであろう敵の名を


「アイリス、そしてアヤメ。この時代に生命波動の使い手が現れたのは、妖魔王になる可能性を持つ者がいるからだ。その名はグラン・グラス、大魔法使いのセルゲイ・ローレルから託された弟子の一人であり、ユーゴが認めた新しい十二騎士だ」

「な!?妖魔王!?」「なんですって!?」


アイリスは妖魔王の存在に驚き、レイアは聞き馴染みのある名をしたカノンに驚く

アイリスは驚きつつも、腑に落ちたようであった


「…なるほど、アヤメちゃんの生命波動の力が単純な偶然では無いのと、あの時感じた敵意は間違いでは無かったってことか…でもちょっと待って、グラン・グラスって言ったけど…グラスってことは?」


アイリスはユキナの方を向いて気付く


「あ、はい。私の兄です。正確には従兄に当たりますけど」

「…何という運命の巡り合わせと考えるべきなのかな…それにユーゴ君が認めたって…その妖魔王になり得る存在を?」

「ああ、アイツが認めたどころか、お気に入りになった程にな。アイツが認めた以上、グランが明確に敵対しない限りはオレもグランを排除しようなんてしない」

「意外…だね。私が知るうるカノン君、刃のジェミニアなら知った時点で即座に始末しているけど?」

「グランに関しては、そうならなかっただけだ。グランもウロボロスと戦うというのであれば、利害も一致しているし…オレもグランを気に入っているからな」


もっとも妖魔に対して容赦が無いカノンを知っているアイリスにとって、この返答は予想外ではあった

だが、十二騎士のリーダーであるユーゴ、十二騎士の参謀役であるカノンが認めているということを聞いたアイリスは、目を閉じ、深呼吸をして返答をする


「…ユーゴ様も認めているなら、問題はなさそうだね。生命波動の使い手として、今は直面している脅威について考えるべきね」

「理解してくれて助かるよ。それでアイリス。お前さんがこうやってアヤメの体を介して話せるということは、普段からアヤメとここで交流していた、話をしていたって所だろうけど…それだけじゃないな?」


カノンは話の本題に戻し、アイリスがアヤメに何かしていることを聞き出す


「うん。アヤメちゃんが生命波動の力に目覚めて、私と会話が出来るようになった時から、私が知るう限りの事、私の能力、そして生命波動の力の使い方を教えていたの…先に結論から言うよカノン君。私とアヤメちゃんの生命波動の力は、異なる」


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