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ゴルン教異変編 ミルースの十字教教会

ミルース村の十字教教会兼、十字教の運営する孤児院

ミルース村のはずれに位置し、村人が礼拝に来る程には交流があり、教会も収穫時期になれば孤児院の子供共に手伝い程には良好な関係を築けており、ミルース村の教会の管理者、責任者である翠の魔女の村人達の信頼は厚い

ただし、現在のミルース村の教会と孤児院の管理は、翠の魔女とアヤメの二人で行っており、他の修道女達は別の十字教の教会の手伝いということで出払っている状態であるが


「実際は、おじい様が言い添えで、翠様がこの教会からアヤメ以外の修道女達を離したというのが真相ね」

「なるほど…道理で見当たらないと思ったら…」


子供が寝静まる深夜の孤児院で、明かりが付いている一部屋。レイアが間借りしている部屋で、ユキナは現在の教会と孤児院の状況と共に、自分達の事情を話していた


「しかし、死んだと思われていたユリカ・カリバーンがユキナ、あなただったとはね…魔力と身体能力から、只者じゃないと思ったけどさ」


ユキナの正体は、ライブラの孫娘の立場であっても知らなかった。しかし、その逆に


「私は知ってましたけど。レイア先輩がライブラ様の孫であること。私がまだユリカだった頃、カリバーン王国と龍人族と交流会の場で」


ユキナのまさかの事実に、レイアは目を見開いて驚く


「…驚いた、私が龍人族と魔族の血を引いていることを知っていたの?」

「まあ、当時の私の立場的に知り得たというか…思い出したのは魔法学校で再開した時ですけどね」


龍人族。現在のオリュートスでは百数名程の希少種族であり、普段は亜人のような姿かリザードマンの姿をしているが、ドラゴンやワイバーンに変身できる種族である


「…上手く隠せていたつもりだったけど、まさかユキナの方が上手とはねぇ…いや、本当にどうやったら数年間周囲にバレなかったのよ。まさか記憶操作とかしている訳じゃ…」

「今のカリバーン王国で記憶操作や意識操作なんてやれば、即座に魔法省にバレますよ。単純に影武者がいただけで、元々お忍びで街の中を出歩くのに使っていた設定が、グラス家のユキナ・グラス、グランの妹という設定を昔から使っていたんですよ」

「影武者?」

「うちの兄ですよ、グランですよ。レイア先輩のお気に入りの」


ドヤ顔で言うユキナの言葉に、レイアが思わず吹き出す。真っ赤に赤面しながら


「だだだだ、誰があんな卑怯者を!?」

「いや、グランがレイア先輩をどう思っているかは…知りませんけど、レイア先輩の当たり散らし方は、好きな人の接し方ですよ?」


ユキナの指摘に、レイアはぐうの音も出ずに赤面しっぱなしであった

そう、野郎どもと華の女性では、認識が違っていた。好きだからこそ、憎いのである


「まあ、グランと私って髪と目の色の違いがあっても、背丈が似ていたから。小さい頃にユリカの姿に変装させたり、ユリカとユキナが同時にいるところを知っている者が多かったおかげで、素性がそうそうバレなかった感じですね」

「あのグランがそんなことに付き合うことある?いくら仲が良いとはいえ…」


レイアの疑問に思う程に、今のグランが女装するなんてことを考えられなかったのだ。だが、昔のグランを知っているユキナはそうではなく


「いや、昔のグランってかなり気弱で流されやすいタイプで…悪ふざけがグラス家の母上と、ミーア王妃がノリノリで付き合って、グランを女装させていたぐらいなので…」


ユキナが語る、意外なグランの経歴…というより、ユキナの悪ふざけの話に対して


「…やばい、物凄く興味があるんだけど」


レイアは興味津々であった


「しかし、そこまで素性を隠していたのに、私に話してよかったのかしら?ジェミニアと、新しい十二騎士の話はセバスチャンから聞いたとはいえ、あなたがユリカ・カリバーンなんて話までは言わなかったけど?」

「私が聖剣のレオを知っている時点で隠し切るのは難しい…それなら素性を明かしてしまった方がこちらも楽だし、レイア先輩も素性を無暗に話すようなことはしない。お互いに素性を隠している同士でもあるし、レイア先輩のことを信頼していますから」


ユキナとレイアの元々の関係自体は悪くない。友人という程では無いが、世間話する程度の仲ではあったが、お互いの素性が似たようなものを感じ、互いに親近感を感じていた


「まーあ…レイア先輩が言いふらすタイプなら、私諸共、カノン先生にシバかれることになりますが。私の見る目が無いってことで」


ユキナは死んだ目でレイアに釘を刺す言葉言うが、レイアには特に響いていないようであった。何故なら


「…そのカノン先生…ジェミニア、そこのソファでうつ伏せで倒れているけど?なんか顔が白くなったり、青くなったり…デフォルメになったりしていたけど?」


カノン…もとい、カノンの姿をしている式神は、レイアの言う通りにソファで死んでいるようにうつ伏せで倒れている。時間帯は、丁度ライブラと会合しているタイミングであり


「あっちの会話に集中しているみたい…カノン先生本人は、今はメルデにいますからね。あっちで何か動きがあったかもしれませんが…」

「…分身魔法の系列でいいのかしらね?本体と分身をそれぞれで情報収集して動くって、どんな頭の構造してるのよ、刃のジェミニアは…そんな器用な魔法使い、そうそういないわよ」


式神の情報はリアルタイムでカノンに伝わる。カノンはメルデでいろんな話や会話をしながらでも、式神の動きや思考と会話を同時に行うという、やっている本人が混乱しそうなやり方をしているが、カノンは難なく使いこなしているので、常人離れの魔法行使に、レイアは不思議に思っていたのだ


「分身であることを簡単に見抜けない程の魔法行使…確かにセルゲイ先生の代わりに、グランとユキナの師として頼まれるだけはあるか…この有様なら、イタズラしてもバレないんじゃない?」


レイアは意地悪そうに思いついた冗談を言うが、ユキナは青ざめ


「やめてください」


ユキナはレイアの両肩を掴んで、必死に懇願する。それはレイアも見たことが無いユキナの様子であった


「な、なによ…そんなに怖いの?」

「少なくとも、私とグランはカノン先生とこの一ヵ月近く一緒にいて、この人に逆らおうなんてマネはしないようにしようと、悟ったぐらいなので…カノン先生で戦闘で勝つなんて、到底無理。私とグラン二人がかりでも一方的にボコボコにしてきたので」

「ちょっと待て、確かに刃のジェミニアは十二騎士の中でも三強と言われる程強いって…それこそおじい様より強いって…セバスチャンから聞いたことあるけど…そこまで?」


レイアが信じられないような顔をする。グランは現代の魔法使いの中でも間違いなくトップクラスであること、ユキナの実力自体はレイアは知らないが、剣が強いことや、強い魔力で只者では無いということはレイアは感じていたが、その二人を以ても、カノンに勝てない事実に驚いていた


「カノン先生って確かに魔力自体は大したことが無い、それは本人も認めているけど…欠点がそれだけで、魔法に対する対処と知識量、反応速度と動体視力に関しては異常に優れている上に、それに追従出来る身体能力とそれ魔法を織り交ぜた体術を使ってくる…マジで手が付けられない。レオの魔装鎧と、聖剣の力なら勝負になるかって、意気揚々と挑んだですよ」


それはグランが昏睡していた時の話、レオの魔装鎧と聖剣の力の確認の一環として、ユキナはカノンにお互いに魔装鎧を纏った状態での手合わせをしたのだ。自信満々、意気揚々と挑んだユキナであったが、結果は


「…数分持たずに一方的に叩きのめさせられましたよ」

「あなた聖剣の勇者よね?」


死んだ目で手合わせした時を思い出すユキナ。単純なパワーであれば、レオは上回る。だが、空戦機動においてもっとも重要な機動力は圧倒的にジェミニアが高い。それに一ヵ月の間にユキナの手の内を知り尽くしてるカノンにとっては、一方的な勝負になるのも致し方ないことではあった


「セルゲイ先生とは別ベクトルで厳しいというか…カノン先生は悪いことをしたら説教からじゃなくて、まずは暴力で黙らせて説教するタイプなので…しかもこちらが太刀打ちできないぐらい強いから、反撃したところで倍返しになるだけ…」

「…理性的なタイプだと思っていたけど…割とスパルタというか…」

「いやまあ基本的には優しいし、話も分かりやすく、教え上手なのは確かだけど…」


カノンの話で盛り上がる中、部屋のドアにノックされ、「どうぞ」とレイアが応答すると、入ってきたのはアヤメであった


「こんばんわ、随分盛り上がっていますね」

「あら、アヤメ。うるさかったかしら?」


仮にも孤児院で、子供が寝静まっているであろう時間帯。迷惑だったかと思ったレイアであったが


「いえ、ユキナがガッツリと子供達と遊んでくれたおかげで、皆ぐったりして寝てます」

「あー…なる…」


カノンがレイアと翠の魔女に事情を聞いていた間、ユキナは孤児院の子供達の相手をしていた。

元々子供に好かれやすく、扱いも上手く、そして見た目に見合わないフィジカルモンスターのユキナ。遊び盛りの遊びについてこれるどころか、逆に振ります遊びをするユキナに、子供たちの体力をガッツリ奪っていったのだ


「アヤメ、ミルクティーでいいかしら?この部屋に来る用と言えば、それが目的じゃない?」

「ええ、レイアさんが入れるミルクティーは美味しいですから、最近の日課になってましたが…そっちの用事では無いですよ」


レイアがここに来た建前は、翠の魔女の魔法技術を学びに来たということである。一応、アヤメやミルース村の動向を見ながらも、本当に翠の魔女から魔法を教えてもらってはいる

その中でアヤメとも交流し、夜な夜なガールズトークする程度の仲になっている。だが、アヤメがこの部屋に来たのはガールズトークでは無かった

アヤメはうつ伏せになっているカノンを向いて


「トンガリ帽子の魔法使いが再びここに来たなら、案内をする…私はとある方から頼まれていました。カノン様…いや、刃のジェミニア様をあの方に合わせる為に」


ユキナとレイアは驚いて、言葉が出なかった。ユキナはレイアの方を向いて「喋りました?」という目配せをするが、レイアは首を横に振り、否定をする

アヤメには今の事態を一言も喋っていない。余計な心配をかけまいと、翠の魔女とライブラが気を遣っていたからだ


「魔王、ライブラの孫のレイアさん。そして聖剣の勇者のユキナ…二人もあの方が会いたがっています」

「な…!?」「え!?」


先程の会話が聞こえているとは到底思えなかった為に、ユキナとレイアは驚く。聞き耳を立てていたとしても、魔力反応で魔法使いのレイアが気付かない訳が無い。アヤメの口ぶりは、最初から知っているような口ぶりだったからだ


「…どうやら、魂で感じ取ったんだろうな。生命波動を扱えるアヤメにしたら、一目でわかるんだろうな」

「カ、カノン先生!?起きていたんですか!?」


うつ伏せになっていた式神のカノンは、ゆっくりとソファから立ち上がる


「あっちでの話がまとまって、こっちのリソースを割けるようになったからな…お前らがオレの悪口で盛り上がっていた辺りからな?」


カノンは笑いながら、ユキナとレイアは二人を見るが、ユキナはバツが悪そうな顔をする


「言っていたことは事実だから、何も思わないが…ユキナ、覚えておけよ?」

「根に持っているじゃないですか!?」

「まあ、冗談はさておいてだ…アヤメ、お前が合わせたいあの方は、オレが良く知る人物だな?」


カノンの質問に、アヤメを頷き


「はい。十二騎士が一人、生命のクラブこと、アイリス様が待っています」

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