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ゴルン教異変編 石像の町メルデ

「…ということらしい、グラン」


ミルース村の式神の分身から得た情報をグランに話ながら、夕暮れのメルデの町を歩いていた

ミルース村から十数キロ離れた規模が大きい町、メルデ。都市と呼んでも差支えの無い程の栄えており、夕暮れの仕事終わりかなのか、カノンとグラン達が歩いている繁華街の飲食店は賑わっていた


「石化魔法の使い手…しかも耐性の強い魔族ですら石にしてしまう程の威力…それに行方不明になったライブラ様の配下も気掛かりですね…」

「いい予感はしないな…手遅れだと思うが、何に使うか想像出来てしまうのも嫌になるな。百年祭の時と同じく、串焼き屋の店主の様に利用される」


百年祭の蜘蛛の怪人にされた魔族の女店主の件は、リーノからカノンは詳細を聞いている。その脅威と、そして怪人の魔法能力と本来の妖魔のプラズマの力を兼ね備えた形態についても


「まあ、彼らの所在もこのメルデでわかればいいんだがな…」

「…おい」


カノンとグランは後ろからの声を無視して、メルデの繁華街を観察する。それは聖王都にも見るような似たような光景であった。夕暮れで酒を求める者達が賑わう…ただ、そのお酒を提供する飲食店。それに限らずに店の前には異様な光景が二人と一匹には写っていた


「…やたらと石像が多くないですか?」

「だな、魔除けにしては異様と言うか…一家に一体ぐらいの感覚で置いているな」

「…おーい」


メルデの住宅や店の玄関先に石像が置かれていた。比較的に人間の石像が多く、時折動物、犬や猫などの石像が設置されている


「…アヤメをしつこく勧誘するゴルン教に、そしてその本拠地の町では石像が流行って…そしてアヤメを密かに護衛していたカルロは石化して殺された…ここまでの要素が重ねれば、確たる証拠は無いにせよ、疑うなというのが無理な話だ」


カノンが思わず笑ってしまう程に、偶然と呼ぶには繋がっている要素が多く、ライブラが真っ先に疑うのも無理がないと思っていた


「それでカノン先生、ここからは?情報収集?」

「…だな。いきなり本丸、本命を狙ってもいいが…ここは魔法探索の要領で行くか。未知の魔法に未知の土地の情報収集は、オレ達サイク家の得意分野だし…それに…」

「さっきから無視すんじゃねぇ!!!」


カノンの背後から一匹、襲い掛かってくるが、カノンはそれを振り向くことなくそれの首の後ろを掴み、まるで猫を掴む要領で捕らえる


「…グラン、使い魔の躾がなっていないぞ?」

「誰が使い魔だこの野郎。人をこんな姿に変えやがって」

「そうでもしないとお前は目立つんだよ、ユーゴ」


それは愛らしい白猫の姿になった、ユーゴ・カリバーンであった。昨晩、ユーゴが気絶している間にカノン、リーノ、グランの手によって変化の魔法で魔装鎧ごと姿を変えられてしまったのだ


「魔装鎧の姿で動き回る訳に行かんだろうし、お前の生前の姿にすれば流石に民衆が騒ぐ。それならグランの使い魔として行動させた方が都合いいだろう。カードの姿で収容させないだけマシだと思え」

「理由はわかるがカノン、てめぇの私情もあるだろ絶対」

「当たり前だ、人がせっかく作った隠れ家ごとぶっ壊そうとしたバカには丁度いい」


グランの使い魔とされた白猫のユーゴは、かなりの制限をかけられている


「ちぃ、この体ではオレ単独で変身は出来ねーのかよ…カノン、お前のことだから何か考えがあるんだろ?」

「理解が早くて助かるぞ、友よ」


大変不服なユーゴではあったが、カノンが単純な私情だけで自分をこんな猫の姿した訳ではないと、諦め

カノンの手を振りほどき、グランの肩に乗る


「んで、これからどーするんだカノン。情報収集するにしたって、お前はミルース村にいる式神の方でも詳細は聞いているんじゃないのか?」

「そいつもあるが、実際に聞いた方が手っ取り早いし、情報の精度も上がる…こういう町の雰囲気を聞くとすれば、先ずはここだろ」


カノンが指をさす方向、それは


「…酒場ですか?カノン先生」

「その通り。知らない土地で旅人が情報を得る場所にはうってつけだぞ、グラン。それに時間帯も丁度いい。正直、レイアから聞いたゴルン教の話が、信じられないものだから、現地の話を聞きたい」


カノン達一行は酒場に入る。夕暮れ時、酒場は大いに賑わっていた。珍しい魔法使いの帽子を被っているカノンや、使い魔を肩に乗せているグランは少し目立っていた


「カノン、目立っていないか?」

「構わないさ、というよりワザと目立つことをしているんだよ」


目立つことを心配するユーゴに対し、カノンは何か考えがあるようであった

酒場の奥のテーブルに案内され、座り、とりあえずエールとジュースを注文する


「カノン先生、年齢的にオレがここにいるのは」

「構わん、頃合いを見てここから離れていい」


しばらく待っていると、愛らしい店員がカノン達のテーブルに注文の品を持ってくる


「はーい、お待ちどうさま!珍しい格好ですけど、ここには観光に?」

「ええ。ここメルデには奇跡を起こすという噂を聞いてね。一目見れないかと思ってね」


カノンの返答に店員がぱっと明るい笑顔になる


「司祭様の復活の儀式のことですね!いいタイミングですよお客様!明日は広場で儀式行われるんですよ!」


カノンがゴルン教について興味を持ったと思った店員は、目を輝かせながらカノンに迫る

カノンは食いついたと確信し、話を合わせる


「復活の儀式というと…本当に死者が蘇るんですか?何日も経過していても?」

「はい!司祭様の奇跡は、魔法でも不可能と判断された死者でも、蘇生させることが出来るんです!」


死者を蘇る、その信じられない能力にグランが口を挟みかけたが、白猫のユーゴがそれを止める


(待てグラン、ここはカノンに任せた方がいい。余計な否定の言葉はダメだ)

(…すみません、つい…)


カノンも勿論のこと、グランも蘇生魔法の法則と条件は知っている。直前や数時間であれば、遺体の損傷具合次第では瀕死の相手を蘇生させることは可能である。しかし、それは成功する可能性はその状況によって変わり、また数日経過した遺体には蘇生させることは出来ない

この女性の店員曰く、数日経過しても蘇生させることが出来るのは、魔法としてはあり得ない、出来るとした正真正銘の奇跡である


「へぇ…もしかして、あなたも大切な人を蘇生させてもらったとか?」

「え!?わかります!?」


カノンは店員の反応から、その可能性があると踏んで言い当てていた。外れても、それはそれで会話が繋げることが出来るから、返答はどちらでもよかった

言い当てられたことに驚く店員に代わって、隣のテーブルにいた常連客らしき人物がカノン達の会話に入る


「そうだぜ兄ちゃん、そこのルルちゃんは、恋人を蘇らせてもらったんだぜ!ほら、あそこで調理している奴がそうだぜ!」


常連客が指を指す方向の男性のカノン達は見る、一見は優しそうな成人男性である


「蘇ってくれて本当にオレたちは助かってんだよ!アイツの料理と酒じゃないとな!それに、来週にはルルちゃんと旦那は結婚するんだぜ!!」

「ちょ、ちょっとおじさん達…」


ルルは赤面しつつも、喜んでいた。それだけ彼を愛していることにカノンは思い


「そりゃめでたい!それはお祝いしなければならない!コレも何かの縁だ。お嬢さん、ここにいる全員にエールを振舞ってくれ!今宵の全員のお代はオレが持つ!」


カノンは財布から大量の金貨をルルに渡す


「お、お客さん!?」

「気前がいいじゃねーか!兄ちゃん!みんなー!!今夜はルルの祝いで、この兄ちゃんが奢ってくれるってよ!!」


常連客が店にいる客全員に聞こえるように言う

完全にこの場の雰囲気を掴んだカノン。店にいる常連客やゴルン教の信者がカノンに話しかけてくる

他愛のない話をしつつも、酒の力とカノンの大判振る舞いに客の口は軽く、そしてこの町の状況を把握する

そして、大いに賑わった宴が終わり


「オロオロオロ!気持ち悪りぃ…」


キャパオーバーの酒を飲まされたカノンは、宿のトイレで吐いていた


「締まらねぇな、カノン」


白猫のユーゴが、ざまあみろと言わんばかりにカノンの醜態を笑う

カノンはグロッキーながらも、少しスッキリした表情でトイレから出てくる


「うげぇ…久々に吐くまで飲む羽目になるとはな…まあ、おかげで色々とわかった…さて、情報をまとめようか…このメルデとゴルン教に…石像の復活とやら」

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