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冬がはじまった 2022年12月9日

 この小説は、作者が「星空文庫」で執筆している『宗教上の理由』シリーズの世界設定を使ったスピンオフです。読みたい方は、星空文庫にて作品名または作者名「儀間ユミヒロ」で検索をお願いします。

 もちろん、この小説単体でも話がわかるようにしておりますので、安心してお読み下さい。

 山奥にあるという設定の、架空の小さな村、このはな村。この村にあるコミュニティFMを舞台に、DJのおしゃべりを文字でお送りする、ちょっと変わった形の小説です。

 架空のラジオ番組の文字起こしという体裁のため、文法や文中記号の使い方が本来のルールとあえて異なった形になっている点をご了承願います。原則として地の文はメインパーソナリティのおしゃべり、カギカッコ内は他の登場人物のおしゃべりです。

また、この小説は言うまでもなくフィクションです。

 おはようございます。このはな村インフォメーションです。この番組では、このはな村に関するさまざまな情報をお送りしております。

 このはなFMでは、村外からこのはな村へお越しになる方への情報発信も兼ねて、この放送のネット配信を行っております。


 今年も残りわずかとなり、日に日に冬の気配が濃くなって来ています。今回は、当FM局に寄せられた、村での冬の過ごし方に関する質問にお答えします。


 まず、こちらの質問からです。

「冬のこのはな村は寒くて雪が多く降るそうですが、気温や積雪の具体的な数値を教えて下さい」

 このはな村の気象観測は、このスタジオのある村役場分署敷地内にある百葉箱で行われています。こちらで記録された過去五十年間の資料から、十二月下旬から二月末までの記録をもとにお答えします。

 朝の最低気温が氷点下十度以下になることは珍しくなく、氷点下二十度以下になることも平均して年数回あります。また、この時期は最高気温も零度未満となる真冬日が半分以上を占めています。

 積雪は、すべての年で一メートルを超えており、うち百五十センチを超えた年が四十五年にのぼります。一日で大量の雪が降るいわゆるドカ雪はあまり見られず、年ごとの一日あたり降雪量の最大値は三十センチから五十センチほどの年が多いのですが、一日で一メートルを超える降雪を記録した日が過去五十年で六回あります。

 このように、このはな村の冬の寒さは非常に厳しく、積雪もこの地域としてはかなり多いと言えます。なお、観測地点と村内のほかの場所では気温や積雪に差が出る点にご留意願います。


 次の質問です。

「小学生の子がいますが、通学時の服装はどのようなものが良いですか」。

 村では、スキーウェアが冬の子どもの普段着です。防寒のため、幼稚園や学校にもスキーウェアでの登校をおすすめします。小学校高学年からはコートなどで登校する児童もいますが、それでもスノーブーツや手袋、イヤーマフもしくは耳まで覆える帽子は必須です。

 中学校には制服がありますが、冬の間はスキーウェアやウィンドブレーカーでの登校をしても差し支えありません。おおよそクラスの半数近くがスキーウェアであることもありますので、悪天候の日などは特にためらわず防寒に留意してください。

 なお、スキーウェア等をお持ちでないご家庭の方は、各自治会役員にご相談下さい。洋服リサイクルの一環として、いわゆる「お古」のスキーウェアを用意することが可能です。


 このような質問も来ております。

「燃料費が高騰している昨今、冬の暖房費が心配です。例年の暖房費はどのくらいですか」。

 一概には言えませんが、このはな村の一般家庭では冷房が不要なため、年間トータルの電気代は安い傾向にあると言われています。そして冷房が不要なためエアコンは使われず、冬の間は家全体を弱く暖めつつ居間などを集中的に暖める暖房を補助的に使う暖房方式が多くなっています。

 暖房のエネルギーは昔は薪や炭でしたが、その後灯油が主流となり、その後ガスや電気も使われることが多くなってきましたが、近年、全国の寒冷地を中心に(まき)ストーブが復活してきています。また木材加工の際に出る木屑などを固めたペレットと呼ばれるものを燃やすペレットストーブも人気です。

 燃料としての木材は、化石燃料に比べて地球温暖化につながる可能性が低いと考えられています。物質を燃焼させると、それらに含まれる炭素が酸素と結びつき、二酸化炭素になってしまいます。この性質は、薪も、石油や石炭も変わりありません。

 しかし薪の材料は地上にある樹木なのに対して、石油や石炭などの化石燃料は地中から採掘したものです。よって、化石燃料の使用は地下に埋もれていた炭素を燃焼させて新たな二酸化炭素を大気中に増加させることになります。

 一方、木を伐採して薪や木炭として利用しても、伐採跡に新たな木々を育てることで光合成が進みます。つまり、理論的には薪などを燃やして出された大気中の二酸化炭素は樹木によって回収され、酸素として大気中に放出されることになります。

 このはな村ではこの理論に基づき、街路樹や公共施設で伐採、またはせん定された木や枝、果樹園などで間伐された樹木などから薪や木炭を作る事業を支援しております。

 同様に、薪ストーブやペレットストーブ・暖炉の新設や購入、また現在使われていない薪ストーブや暖炉などのリニューアル、現在もこれらの暖房器具を使っている家庭での点検整備などについても各種補助がありますので、興味のある方は産業課にご相談ください。


 このはな村インフォメーション、担当は板谷でした。



 夏の北海道旅行。地元の農場にある直営店で、店員さんとの会話。

「夏なのに涼しいですね」

「そうですね。でも冬は寒いです」

「雪も沢山積もるんですか?」

「雪はそれ程でもないですよ。そうですねえ、せいぜい一メートルくらいですかねー」


 いやいやいやいや。


 同じ北海道でも雪の降る量は場所によってまちまちですが、首都圏と比べればどこもかしこも立派な雪国。「それ程でもない積雪量」の基準は場所によって異なるのです。

 で、その北海道並みに過酷な冬を毎年迎えるのが、このはな村があるという設定になっている上信越の山岳地帯。その寒さは本文に書かれたとおりで、零下二桁になることも珍しくはありません。

 ですが雪の降る量はまちまちで、おおよそ日本海に近い方ほど多く積もりますが、幾重にも連なる山々のど真ん中にある高原地帯ではそれ程多くは積もらない傾向。その代わり一度降った雪はなかなか消えないのも特徴です。


 「木材を燃料として使うのはエコである」

これは本当なのでしょうか。

 ちゃんとCO2出入りの仕組みを意識して使えば、その通りだと思います。地中深くの石油をわざわざ掘り起こすのは寝た子を起こすようなもので、それを燃やして出されたCO2はそもそも地上に現れなくてもよかったものです。

 それに対して、木は同じ場所で育成と伐採のサイクルを繰り返す限りはCO2を構成する炭素の量はいわゆる「行って来い」になりますから、長い目で見てCO2は増えない計算になります。

 日本では昔から雑木が薪や炭として使われて、切り株からのひこばえを育てて樹木を再生させるサイクルが昔からあったのだとか。昭和初期ごろまでは都市近郊の雑木林から切り出した薪を街に卸す農家の副業があったそうです。ちゃんとエネルギー源の循環が出来ていたんですね。


 世界的な燃料の高騰のあおりで、日本も光熱費がかさむわ物価は上がるわで懐が例年になく冷え込む冬になっていますね。一方で省エネを意識した暖房も開発されてはいますが、電力などなどの値上げラッシュに追いつくのかどうか?

 昔はよく聞かれた「外は極寒でも家の中ではTシャツ短パン」という北海道あるあるも近年は少なくなっているようですが、それでもなお北国の暖房費は膨大なもの。燃料費高騰の影響が直撃すると思われます。

 そんな中、このはな村ではどのような試みをしているのか、少しずつ書いていくつもりです。フィクションであっても、現実の世の中を反映したものを書きたくて続けている連載ですから。

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