黒い金曜日? 2022年12月2日
この小説は、作者が「星空文庫」で執筆している『宗教上の理由』シリーズの世界設定を使ったスピンオフです。読みたい方は、星空文庫にて作品名または作者名「儀間ユミヒロ」で検索をお願いします。
もちろん、この小説単体でも話がわかるようにしておりますので、安心してお読み下さい。
山奥にあるという設定の、架空の小さな村、このはな村。この村にあるコミュニティFMを舞台に、DJのおしゃべりを文字でお送りする、ちょっと変わった形の小説です。
また、この小説は言うまでもなくフィクションです。
おはようございます。このはな村インフォメーションです。この番組では、このはな村に関するさまざまな情報をお送りしております。
このはなFMでは、村外からこのはな村へお越しになる方への情報発信も兼ねて、この放送のネット配信を行っております。
まず、村道七号線保育所前、臨時通行止め解除のお知らせです。
村道七号線、保育所前の通行止めは一部解除されました。大型車は除きます。原因は水道管の破裂で、水道管の仮復旧と仮舗装の状態です。本復旧は来週前半の見込みです。以上、道路情報でした。
では、今日のお知らせに移ります。
アメリカ合衆国、このはな語でウサ、から伝わったブラック・フライデーにならって、村では毎年黒金祭を実施しております。
ブラック・フライデーは、ウサで十一月第四木曜日に行われる感謝祭に合わせて商店が大売り出しを始めたことに由来すると言われています。しかし、外国文化が早くから取り入れられていたこのはな村においても、この歴史は浅いものです。
その理由は、秋の収穫を祝う感謝祭の日付が、村に定住した人々の出身国によってまちまちだったからだと言われています。そのため、天狼神社の姉妹社である栗姫神社で行われてきた秋の祭礼と、その直後に行われるハロウィンが、村内統一の感謝祭として祝われてきました。
そして一九八〇年代に、ブラック・フライデーの習慣がこのはな村に伝わりました。名前の由来には諸説ありますが、セールによって黒字になるからという説もともに紹介されたため、正月前にやるには縁起が良いとして村の商工会が中心となって黒金祭を企画しました。
この「黒=黒字」という解釈が、アパルトヘイトをはじめとする黒人差別を糾弾する当時の社会の動きと重なり、また黒の中に美しさを見出す日本人の価値観とも一致したことから、黒という色からポジティブなものを連想していこうという考えのもと受け入れられました。
また感謝祭には世界各国で慈善運動もさかんであることから、それに倣うとともに、人々の平等と貧困の撲滅を願う日となっております。
当初、黒金祭はウサと同じように十一月第四金曜日からの三日間でした。しかし日本各地にブラック・フライデーのセールが広まって来たため、差異化を図るため近年は一週間ずらしての開催が定着しています。
そのため、本日二日から四日の間は商工会主催のチャリティー大売り出しを実施します。村内の小売各店において目玉商品を用意し、売上の一部を各種団体に寄付します。寄付先は各店舗によって異なりますのでお買い物の際ご確認願います。
また、セール実施店舗では、黒い物を身につけたり、肌を黒く塗るなどの姿で来店した場合、その暗さのランクに応じて割引や景品のプレゼントがあります。皆様ふるってご参加ください。
このはな村インフォメーション、担当は莉庵でした。
日本語は事務的な連絡に適さない言語だと思います。文章を最後まで聞かないと肯定なのか否定なのか分からないですから。
例えば、
「○○鉄道△△線は踏切事故のため全線運転を見合わせていましたが」
というアナウンスを聞いたら△△線の利用者はオヤッと思うでしょうが、
「運転を再開しました」
なのか、
「□□駅までの折り返し運転を開始しました」
がアナウンスを最後まで聞かないと分からず、いらいらする事がよくあります。
原因はあとで良いので、動いているか動いていないかをまずお知らせするというのが分かりやすい伝え方だと思います。
このはな村は外国人が別荘を作ったことで大きくなったという設定ですので、言葉の言い回しも外国語の影響を受けています。否定の表現や動詞は文の前の方に回す傾向があるので、これが出来るということなんですね。
ブラックフライデーの大売り出しは、ここ数年で日本でも定着した感があります。なんでブラックかといえば、本文にあるように「黒字」に引っ掛けたとのことですがそれは後付けで、もともとは買い物客の車が渋滞を起こし、警察官にとっては「ブラック」な日だったという意味だったとか。
たしかに、ブラック企業とか、歴史を見ればはブラックマンデーという言葉もありますけど、でも人種を肌の色で区別してきた人類の歴史を考えると、黒を悪いものとするイメージを固定概念にするのは良くないこと。それは自明です。
だからこのはな村では黒も良いものだという価値観のもとブラック・フライデーを受け入れているわけです。
日本でも黒星なんて言葉があったりして、悪く使われることもある色ではあります。
一方で、黒髪の美しさだったり、また女性が歯を黒く染めるお歯黒だったりと、黒いものに美を見出す文化はあります。
もちろん「色の白いは七難隠す」なんてことも言いますけど、七難というのは他の容姿のことと解釈可能ですし、色白いけどそれだけじゃね? という揶揄も含まれていそうな慣用句ですから、あまり当てにはなりません。
何にせよ遺伝による肌の色を他人が気にするのは余計なお世話ですよね。それに「黒人」とは言うけど肌の色は黒ではないでしょう? 茶色とかコーヒー色とかっていう方が近いですね。それを「黒」と言い切るところに白人の差別的意図があったのかな、とも思ったり。ま、白人の肌の色も「白」ではないですけど、そこをザックリ白黒付けちゃうところがそもそも差別の始まりかもしれません。




