いよいよ冬がやってきた 2022年11月25日
この小説は、作者が「星空文庫」で執筆している『宗教上の理由』シリーズの世界設定を使ったスピンオフです。読みたい方は、星空文庫にて作品名または作者名「儀間ユミヒロ」で検索をお願いします。
もちろん、この小説単体でも話がわかるようにしておりますので、安心してお読み下さい。
山奥にあるという設定の、架空の小さな村、このはな村。この村にあるコミュニティFMを舞台に、DJのおしゃべりを文字でお送りする、ちょっと変わった形の小説です。
この小説は言うまでもなくフィクションです。
おはようございます。このはな村インフォメーションです。この番組では、このはな村に関するさまざまな情報をお送りしております。
このはなFMでは、村外からこのはな村へお越しになる方への情報発信も兼ねて、この放送のネット配信を行っております。
このはな村では今月すでに数回の降雪を観測し、本格的な冬を迎えつつあります。そんな中、今年初めてこのはな村で冬を迎える住民の方々は不安ではないでしょうか。
このはな村は近隣の市町村と比べてもずば抜けて積雪が多く、また独特な雪対策や、冬ならではの習慣があります。今回はこのはな村発行の『このはな風物誌』から、冬の村人の暮らしを紹介します。
このはな村では、十二月になると本格的に雪が降り始めます。
特にクリスマスが近づく頃には日本列島に強い寒波が訪れることが多くあり、主に北西からの季節風が雪をもたらします。このはな村の北側はなだらかな高原が続いていることから雪雲が到達しやすく、さらにその雪雲は東側と南側の山脈に阻まれることから、多量の雪がもたらされます。
村の北方に広がる高原地帯の先には幾重にも山脈が連なっていますが、山脈の切れ目や標高の低くなっている部分の位置関係から、日本海からの雪雲が村に到達しやすくなっているようです。
このような冬の季節風による雪は、季節が進むと水分の少ない軽い雪に変わります。気温が低い時の雪は、降り始めると積雪量が一気に増えることがありますが、雪自体は軽いため比較的取り扱いしやすいのが特徴です。
本格的な雪シーズンを迎えたこのはな村での生活上の注意点は数多くありますが、そのうちのいくつかを紹介します。
まず、雪かきの頻度は他地域より明らかに少ないと言われています。積雪量は多いにも関わらず雪かきをあまりしないのは、雪が降っている間はいくら雪をかいてもまた降ってくるという考えが村人の間で根強いためです。
村に伝わる除雪の特徴は、雪を完全に排除しないことです。たとえば道路の雪を舗装が見えるまで除雪すると、晴れた日に道路脇の雪が解けて流れ込み、夜になると凍って透明なアイスバーンになります。これが非常に滑りやすく、それよりも積雪があって雪の中に足が埋もれる方が転倒のリスクが低くなるという考えです。
ただし、このブラックアイスバーンが積雪に埋もれていて、足を雪に踏み入れるとこのブラックアイスバーンに靴底が当たって滑りやすくなることもあるので、積雪が少ない冬の初め頃は要注意です。村民は雪かきの際には靴がくるぶしまで埋まる程度に玄関先の雪かきをとどめることが多くあります。
屋根の雪について説明します。先程もお伝えしたとおり、このはな村は周辺地域より飛び抜けて積雪量の多い村です。しかし雪下ろしは通常行いません。雪が自然落下するように屋根の勾配が大きくなっているためです。
ここで注意したいのが屋根からの落雪への巻き込まれです。これを防ぐため、村では家屋をできるだけ道路から離して建てたり、それが難しい場合は屋根の三角形を道路に対して平行になるように家を建てたりします。そして隣家と距離を取り、敷地の中央に家を建てるのが一般的です。落雪が自宅の敷地内に落ちるように家屋を設計する義務は村条例でも定められています。
しかしながら、その家の家族、特に子どもが屋根の下に入り込むと非常に危険です。
各家庭にお願いです。屋根の下はロープを張るなどして立ち入り禁止にするようお願いいたします。ロープの位置が低いと雪に埋もれて見えなくなるので、工事現場の仮囲いのようにする方法もあります。どの方法を取るかは自治会役員など地域をよく知った村民が良い知恵を持っていますので、ご相談をおすすめします。
このはな村インフォメーション、担当は池田でした。
早いものでもうすぐ師走ですが、それにしては冷え込みが本格的ではない気がします。ここ二年ほど比較的寒い冬が続いていましたが、今年はどうなることやら。作者は寒い冬のほうが好みです。
「不要不急の除雪」というのはあると思います。雪かきや雪下ろしをしている時の悲しい事故というのは毎年起きていますし、しなくて済むならその方が望ましいものです。
いわゆる独自研究的なものになりますが、同じ雪国でもより寒いところの方が除雪に手間をかけない傾向があると感じます。一応根拠はありまして、気温が高めの時に降る雪は水分が多くて重いので屋根にかかる重みがものすごいし、ベタベタした雪は屋根から滑り落ちにくい、また雪が滑り落ちたところに人がいたら大事故になる、さらに街なかでは家と家との間が狭いので隣の敷地に雪が落ちてトラブルになる、だから雪下ろしをして落ちるタイミングをコントロールする、そういう目的があるんだと思います。
これが北海道の農村に行くと変わって来て、雪は屋根からの自然落下に任せるところが多くなるようです。なんたって隣の家と何十メートルも離れてるんですから。家の中で暖房をガンガン炊くと屋根に接した雪が解けてきて水になり、するするっと滑り落ちるという仕組みらしいです。
北海道でも家の密度が高い都市部は事情が違うようですが、最近では屋根をほぼ平らにして、積もった雪を暖房の予熱で解かして流すという、雪下ろし不要の住宅も増えているようで。
この住宅が日本中の雪国に普及すれば雪下ろし中の事故も無くなると思うのですが、真四角な家というのが他地域に受け入れられるかどうか、という問題があるのかもしれません。




