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冬支度 2022年11月18日

 この小説は、作者が「星空文庫」で執筆している『宗教上の理由』シリーズの世界設定を使ったスピンオフです。読みたい方は、星空文庫にて作品名または作者名「儀間ユミヒロ」で検索をお願いします。

 もちろん、この小説単体でも話がわかるようにしておりますので、安心してお読み下さい。

 山奥にあるという設定の、架空の小さな村、このはな村。この村にあるコミュニティFMを舞台に、DJのおしゃべりを文字でお送りする、ちょっと変わった形の小説です。

 また、この小説は言うまでもなくフィクションです。

 おはようございます。このはな村インフォメーションです。この番組では、このはな村に関するさまざまな情報をお送りしております。

 このはなFMでは、村外からこのはな村へお越しになる方への情報発信も兼ねて、この放送のネット配信を行っております。


 今月二十日の日曜日より、村営バスの乗務員シフトが冬季用となります。

 村営バスは通常はワンパーソンでの運行、そして平日朝の駅前ゆきバスには車掌が乗務し、ラッシュ時の乗降をスムーズに行えるよう努めております。また、夏をはじめとする観光シーズンには原則すべての路線で昼間のバスに車掌が常務し、運転士と共に運賃の取り扱いやお客様の案内を行うことで、スムーズなバスの運行を確保しております。

 さらに、ご高齢のお客様や障害をお持ちのお客様も安心してバスをご利用していただけるよう、必要に応じて車掌または補助スタッフが常務しております。

 冬季におきましては、積雪のためバスの乗降が困難となる場合があります。このような時、車掌が乗降のアシストを行うことがありますので、指示に従ってのご利用をお願いします。

 

 このはな村営バスは、駅前と中央広場を役場経由で結ぶ親バスと、村内を循環する子バスがございます。

 親バスは後ろ乗り前降り、距離に応じて運賃が変わります。ワンパーソン運転時はご乗車の際に整理券をお取りいただき、お降りの際に運賃をお支払い下さい。車掌駅前バス停・役場前バス停・中央広場バス停では乗車前にきっぷを購入することも可能ですが、夜間等はきっぷの販売員が不在のこともありますのでご了承ください。車掌常務時は車内での事前精算も可能です。

 子バスはコミュニティバスとして、右回りと左回り、それぞれ昼間は一時間に一本の運行です。中央広場バス停を毎時ちょうど及び三十分に出発します。


 運賃は村内均一で百円、親バスから子バスへ乗り換える際も村内のみご利用の場合は通しで運賃を計算します。中央広場でのお乗り換えの際、乗り継ぎ券「ランカ」をお渡しします。これは親バスの整理券ゼロ番に相当します。

 バス運賃は中学生までは村内無料、六十五歳以上の方と障害者手帳をお持ちの方およびその補助をされる方は全線無料です。

 また村内に在住の方と、村に一定額の固定資産税を納めている方および同居する方には年間フリーパスを発行しておりますので、該当する方は村役場までお知らせ下さい。追ってパスをお渡しいたします。


 村営バスは全車両が車いす対応済です。ご乗車は親バス子バスを問わず後ろ乗り後ろ降りです。乗降スロープは電動で、原則として車掌が操作、ワンパーソン運転時は運転士が操作します。安全には充分配慮しておりますが、付近にご乗車のお客様はスロープに巻き込まれるなどの怪我をしないようご注意ください。

 車いすでのご乗車に伴って、お客様のお力を必要とすることがございます。補助が可能な方には、ご協力をお願いいたします。


 このはな村インフォメーション、担当は池田でした。


 

 今の世の中、高速バスを除く路線バスのほとんどがワンマン運転になっていますが、観光地で時たま車掌らしき人が乗務しているのを見ることがあります。そういったバスというのは、おそらく観光客の利便性向上が目的ですから採算には目をつぶっているのでしょう。


 ですが、このはな村営バスについて作者は黒字経営という設定を作っています。路線バスで黒字を出すのがそもそも難しいのに、村営、しかも頻繁に車掌を乗務させておきながら黒字ってどういうこと?


 これは作者の勝手な想像ですが、公共性の高い事業で惜しみなく必要な投資をすれば、必ず利益になって帰ってくると思っているからです。

 冬場のバス運行には困難がつきもの、作者も雪のなかバス旅を何度もしているので分かります。乗客も滑りやすい地面と濡れたステップとを行き来するのにヒヤッとすることもしばしば。足が不自由な方こそバスのような公共交通が必要なのに、乗り降りで危険を伴うのは本末転倒です。


 だから、冬の間は車掌が乗務して乗り降りをアシストするのが良いわけです。このはな村営バスはそのためのコストを惜しまないことで乗客に安心感を与え、冬でも気軽にバスに乗れるので結果的に乗客が増えるわけです。

 地方の公共交通機関がこういった攻めの姿勢を失っているのは残念に感じます。ここをこうすればもっと便利になるのに、という場面は多々あります。


 車椅子でのバス乗車問題。

 世の中これだけ技術が進歩しているのに、バスのみならず鉄道でも車椅子での乗車は人間頼みというのは何とも腑に落ちない話です。鉄道だと駅職員が、バスだと運転手が中扉のところへ行って、人力でステップを広げて車椅子を押して乗せています。

 これ、利用者も交通機関の職員も誰も幸せになれないんですよ。どうしてあの隙間を埋める程度の技術が開発できないのか。


 多分、やろうと思えば出来るんだと思います。だから村営バスには自動で出し入れできるステップを作りました。床下に格納した金属板をモーターで送り出せばいいだけの話ですからね。そして車掌がいれば車椅子の乗客を乗せる手伝いが出来ますし、安全確認も万全ですね。

 ワンマンバスだと運転士がステップを広げて乗客を乗せてステップを片づけて、一部の座席を畳んでそこに車椅子を固定させる、という一連の行程をぜんぶやります。運転士も大変だし車椅子の乗客に申し訳ないと思わせてしまうし他の乗客のなかには、あんなことをしているからばすが遅くなる、などと考える不届きな考えを持つ人もいるでしょう。


 村営バスのすべてに車掌が乗務しているわけではありませんが、乗客がアシストする前提を共有しているというのは大きなポイントです。バスの黒字経営は地域の人々の協力体制も大きな助けになっている、というのがミソです。


 話戻って、車椅子での路線バス乗車にあたって、なぜ自動ステップが採用されないのかといえば、コストの問題なんでしょうけど。

 ですが、そのように特定の乗客だろうと何か利便性を提供すれば他の客も増える、という効果はあるんじゃないかな。だからもっと、こういう乗り物を使いづらい人を助ける技術を開発していけば、公共の交通は誰もが使いやすいものになると思います。


 今週の担当は、池田のたっくん。世界設定を共有している『宗教上の理由』のなかではヒロイン真耶の初恋の人です。このコミュニティFM、男性も喋るんですよ。

 

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