二二話 お話ししましょう
時間はあっという間に過ぎて試合まで残すところあと一日。
大地はチビーズの練習を早めに終わらせて明日の試合に備えて部屋で道具の手入れをしていると、誰かが部屋に入ってきた。
「お久しぶりです大地さん」
「お、お前は」
部屋にやってきたのは大地をこの世界に連れてきた元凶のシェリルだった。
「何しにきやがったんだ」
大地はシェリルとは初日に会った日から一度も会ってなかった。そんなやつがいきなりやってきて大地は警戒する。
「おや? せっかく一か月ぶりの再会なんですからもっと歓迎してくれてもいいんですよ」
とニッコリ微笑むシェリル。
「よく言うぜ。お前が俺のとこに来るってことは何か理由があるんだろ」
「もちろんです。さすが大地さん」
察しが良くて助かります、と笑うシェリル。その姿だけ見れば思わず見惚れてしまいそうなほどの笑顔だが、大地の警戒心はますます強くなる。
「で、どういう用件だ」
「今すぐ元の世界に還してあげます、と言ったらどうします?」
シェリルの突然の申し出に大地は眉を吊り上げる。
「それは試合に勝たなくても元の世界に帰れるってことか?」
「はい。大地さんが望むなら今すぐに帰れますよ」
シェリルの話を聞いて大地はジッとシェリルを見据える。
「何を企んでる?」
「企んでるってひどいですね。善意ですよ善意。ほとんどが素人同然の選手しかいないのに試合に勝てるなんて無理じゃないですか。だから無条件で元の世界に戻してあげるんですよ。それで、どうします?」
「人をいきなりこんな世界に連れてきといてよく言うな。でも本当に元の世界に戻れるのはありがたいな」
「じゃあ帰りますか?」
「嫌だね。なんでもかんでもお前の思い通りにはさせたくない。ここで俺を返すにはそれなりの理由があるんだろ。ならお前の思惑には乗らない」
「なるほど。もっとも大地さんがそう行動するようにわたしが計算していたとは思いませんか?」
「そんときはそんときだ。それに、次の試合は必ず勝つ」
「そうですか。では次は試合に勝った時にお会いしましょう」
と言ってシェリルは部屋から出ていこうとするが、大地は呼び止める。
「待てよ。まだ話は終わってない」
「はて? まだ何か話すことはありますか?」
首を傾げるシェリル。
「あるさ。何でこの世界に野球があるんだよ?」
「それが何か問題でもあるのですか?」
「大有りだよ。最初はそういうもんかと思ってたけどよ、スコアブックとかは俺がいた世界と付け方が一緒だし、ルールも俺がいた世界とほとんど変わらないし、バットやグローブとかはあきらかにこの時代のものと質が違うってのもおかしいだろ」
大地は今まで疑問に思っていたことをぶつける。
特にバットやグローブといった野球関連の加工技術は中世の世界観からしてみればあきらかに異質だった。
だがシェリルは何でもないことのように答える。
「それは昔異世界からやってきた人が持ち込んだからですよ。別に問題ないんじゃないですか?」
シェリルの答えを聞いて大地は鼻で笑う。
「そうか。仮にそうだとしてもだ、何でこの世界は戦争の手段が野球なんだ? あきらかにおかしいだろ?」
「……」
「俺だってバカじゃないからな。文字は読めなくても聞くことはできるからこの世界の歴史を聞いた。この世界も昔は人と人が殺し合う戦争があった。なのに今は野球が戦争の手段になってる。しかも、シェリル。お前がこの国を作ったとほぼ同時期にだ。何かあると思って当然だ。でもこの世界のやつらにそれを聞いても疑問に思わない。いや、思わせないようになってるみたいだ。まるでそういった呪いみたいにな」
大地がシェリルに問いただすと、シェリルは賞賛の拍手を送る。
「まさかそこまで気付いてしまいましたか。さすが大地さん。妹を籠絡するだけありますね」
「妹? ちょっと待て、もしかしてお前は……」
「そうですね。大地さんにはこの世界の秘密をお話ししましょう」
今週中に試合までいけなくてすいませんでした。
来週中には必ず試合にいきます。
それと毎日更新できなかったお詫びとして「骨まで愛して!」というとある賞で二次落ちした作品を投稿します。
二次落ちなんで大したことはないのですが、今週中には全部投稿できると思いますので、よかったら読んでみてください。




