十二話 ベースランニング
翌日。エストリア王国にあるグラウンドで大地はチビーズの練習を見ていた。
「じゃあこの勝負に負けたチームが罰ゲームとして勝ったチームの言うことを聞くってことでやるか」
大地がそういうと褐色の肌をした元気いっぱい少女のオデットがガッツポーズをする。
「オッシャー! オレらが勝ったらグレタとリリィのおっぱいをモミモミしてやるぞ!」
「……モミモミ」
とやらしく手を相変わらずの無表情で動かすニーナ。それを見てリリィが怯える。
「ふぇっ!」
「くぅ! なんて卑怯な! でもそっちが敗けたら今日の夕飯のデザートをもらうわよ」
「相変わらずグレタは真面目のくせに食い意地が張ってるな。でも望むところだ!」
グレタとオデットが睨み合う。
「リリィ、勝つわよ」
「う、うん。頑張る」
「ニーナ揉むぞ」
「……モミ」
それぞれが気合いを入れると大地が合図をして勝負が始まる。
そんなチビーズの勝負を見守る大地にシャルが声をかける。シャルは大地がチビーズにどんな練習をさせるのか興味があったようだ。
「よう、大地」
「シャルか。もう体調の方はいいのか?」
「むっ、当然だ。マナが切れただけだから一晩立てば回復する」
少し不機嫌そうに答えるシャル。
「それよりも少し変わった練習をするのだな」
とシャルはチビーズがやってる練習を指摘する。
チビーズがやっていたのはベースランニング。しかしただのベースランニングではなく一塁と三塁でチームごとに別れ、まずお互い一人ずつ二塁を周って相手チームのベースに向かって走る。その途中で相手のチームのランナーと遭遇するとじゃんけんをして勝った方がそのまま走り、敗けた方は自分のチームのベースに戻る。そして先に相手チームのベースを踏んだ方が勝ちというものだ。
本来ならもう少し人数でいてやるもので四人の場合は一人ひとりの負担が大きく、じゃんけんに敗けたら全力でベースに戻らないと敗けてしまう。なのでチビーズは全員必死に走り回っている。
「今まであの子たちはあんなに全力で走ったら疲れてすぐに手を抜いていたのに、今は四人とも全く手を抜かないな」
チビーズの頑張りを見てシャルは驚きまじりに呟く。
そこに大地がシャルに説明する。
「あいつらは子供だから単調な基礎練習とか反復練習とかはすぐにあきちゃうんだよ。人間ってのは辛いとかつまらないと無意識のうちに手を抜いちまうもんなんだ。そうなると練習の効率は下がるからああやって競争させながら練習を楽しませた方が練習の効率はいいんだ」
「なるほど。それにただ走らせて基礎体力をつけるだけでなくちゃんとベースの角を踏んで走らせてベースランニングの技術もつけさせてるのか」
「まあな。つってもそれだけじゃないけどな。シャル、一塁側と三塁側でスタートしたらどっちの方が勝ちやすいと思う?」
「? どっちも同じじゃないのか?」
「いや、実は一塁側からスタートした時の方が勝ちやすくるなるんだ」
「そうなのか? でもどうしてだ?」
「軸足の違いだ。人間ってのは左足が軸足の場合が多い。だから左回りができる一塁からスタートする方が足に力を入れやすいから速く走れるんだ」
「言われてみれば逆回りする方が力が入りにくかったりするな。だがそれなら三塁からスタートするチームが不利ということではないか?」
「そうなるな。だけど俺の狙いは勝敗じゃなくて三塁から走ることで軸足とは反対の足も鍛えることにある」
と大地がそこまで言うとシャルは大地が言いたいことを理解する。
「そうか! 軸足と反対の足も鍛えることで守備範囲を広げることか」
「……よくわかったな」
軸足と反対の足を鍛えることで軸足と反対方向への一歩目の踏み出しも早くなって守備の時幅が広がることができる。
シャルがそこに気が付いたことに大地は感心する。
だが余裕ぶってる大地だったが内心は焦っていた。
大地としてはもっと実践的な練習内容を考えていたのに、チビーズの練習を見てチビーズの基礎体力が想像以上になかったために練習内容を基礎練習中心に変えたのだ。大地は残り一か月でチビーズを試合で使えるようにしなければいけない。
そんなこんなで大地とシャルが話しているうちにベースランニングの勝負が終わって、負けたグレタとリリィはオデットとニーナに胸を揉まれていた。
「喰らえグレタ! うりゃうりゃー」
「ちょ、どこ触ってるのよ! あっ!」
「……モミモミ」
「ふぇあぅ! に、ニーナちゃん!」
大地はその様子に若干あきれながらも、まだ動けるだけの体力が残ってると判断して次の練習をさせることにした。




