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第三章連載中 元義妹は元義兄と暮らしたい〜他人になったはずの元義妹と再会したら学校でも猛アタックしてきて困ってます〜  作者:
元義兄は元義妹と暮らしたい

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テストに向けて(凪視点)

リビングには今日もペンと走らせる音が響いている。深夜一時を回っても、机の上に積み上げられた参考書は減る気配がない。


「……ねえ、みーくん。ここ、やっぱり何度やっても混乱する。どうしてこんなに難しいの?」


私は参考書を指先でつつき、わざと大きくため息をついた。机の上に積み上げられたノートの山は、私たちの努力の結晶であると同時に、私にとっては「みーくんを独占できない高い壁」でもあった。


湊は私の隣で、自分のノートを閉じると、ふっと視線をこちらに向けた。彼の少し疲れたような、でもどこか優しい眼差しに、私の心臓が大きく跳ねる。


「どれだ? ……ああ、この公式か。これはさ、こうやって分解して考えると、実は昨日やった基礎と一緒なんだよ」


湊が私の背後に回り込み、ペンを持つ私の手を上から包み込む。彼の体温が、シャツを通して私の背中に伝わってくる。耳元で聞こえる低い声。ダメだ、こんなの、勉強のことなんて全部吹き飛んじゃう。


(……みーくんの手、あったかい。さっきまで冷たい指先で計算してたのに、急に胸が熱くなる。……心臓の音が、みーくんに聞こえちゃいそうで怖いよ)


私はわざと首をすくめて、彼の方に寄りかかった。


「あ、本当だ……。みーくんが教えると、なんでこんなにスッと入ってくるんだろう」


(嘘じゃないよ。でもね、公式の意味なんて半分も聞いてない。みーくんの首筋から香るシャンプーの匂いと、私の髪に触れる指先の感触に、全部意識を持ってかれちゃってるの。勉強なんて、正直どうでもよくなっちゃうくらい)


「ならよかった。……ほら、次はこっちの応用問題、自分でやってみろ」


湊は私の肩を離し、再び距離を置こうとする。私はそのシャツの裾を、ぎゅっと掴んで引き留めた。


「……うーん、自信ないなぁ。……ねえ、あと一問解けたら、ご褒美……休憩にしてもいい?」


私は精一杯、可愛く上目遣いを作った。彼が少しだけ困ったように、でも愛おしそうに眉を下げるのを見るのが大好きだ。


「……五分だけだぞ」


その言葉を待ってた。


私はすぐにペンを放り出し、湊の胸に飛び込んだ。彼の心臓が、私の抱擁に驚いて一瞬速く打つのがわかる。シャツ越しに伝わる体温が愛おしい。昔はただ隣にいるだけで満たされていたのに、今の私は欲張りだ。彼の体温も、声も、私に向けられる視線も、全部全部、今の私だけのものにしたい。


「……みーくん」


「ん?」


「……私、絶対8割とって、一週間みーくんを独占するからね。……その時まで、この休憩時間のイチャイチャで、我慢しててね」


私は彼の耳元で、甘く、少しだけ誘うように囁いた。湊の身体が、私の声に反応して一瞬硬くなるのがわかる。


(……ねえ、みーくん。本当は、今すぐにでもこのルールを破って、勉強なんて全部放り出して、二人でベッドに入りたいよ。試験が終わるまでエッチ禁止なんて、私にとっては拷問に近いんだから。こんなに一緒にいるのに、触れ合えるのが休憩時間だけなんて、ずるいよ)


しばらくの沈黙の後、湊はふっと溜息をついた。その表情は、いつになく弱気で、そしてどこか切なげだった。


「……俺だって、我慢するの、結構キツいんだぞ」


「え……?」


「お前が隣で甘えてきたり、俺を誘うような目で見たりするたびに、正直、理性を保つので精一杯なんだ。……テスト期間なんて、一日でも早く終わればいいって、何度も思ったよ」


湊の告白に、私の心臓が爆発しそうになる。


(……うそ、みーくんも? 私のこと、ずっとそんなふうに思ってくれてたの? 私だけが、一人で苦しんでるわけじゃなかったんだ)


嬉しさが胸いっぱいに広がって、私はさらに強く彼の胸にしがみついた。


(好き……大好き。もう、どうにかなっちゃいそう! これでいいんだ。二人で我慢してるからこそ、試験が終わった後の解放感がもっとすごいものになるんだよね)


湊は私の髪を優しく撫でながら、さらに言葉を続けた。


「俺も楽しみなんだよ、テストが終わるのが。……凪と一週間、何して過ごそうか、授業中もずっと考えてるんだ。……だから、あともう少しだけ、一緒に頑張ろうな」


彼の真っ直ぐな瞳に見つめられ、私は言葉を失うほど愛しさが込み上げた。


(あぁ、もう……ずるいよ、みーくん)


「……うん。みーくん、絶対頑張る。私、絶対に8割とって、みーくんを離さないからね!」


私は顔を真っ赤にして、勢いよく彼を見上げた。湊は少し照れくさそうに笑い、私の頬を指先で優しく撫でる。


「ああ、期待してる。……じゃあ、気合入れろよ。あと五問だ」


「うん、先生!」


私たちは再び机に向き合った。さっきまで甘ったるかった空気が、今は二人で「その時」を共有するための、熱い絆に塗り替えられている。

ノートの端に式を書き込む私の手は、さっきよりもずっと力強い。


私の心の中は、計算式よりもずっと複雑で、熱い恋心でいっぱいだ。この熱をすべて勉強に向けたら、きっと8割なんて余裕でクリアできる。そう信じて、私はもう一度、深く彼の方を向いた。


「ねえ、みーくん。……休憩終わったら、もっと厳しく教えてね」


「わかった」


重なり合う視線に、言葉以上の熱が宿る。私たちの戦いは、いよいよ佳境を迎えようとしていた。








試験の三日間、私の頭の中は湊の教え方と、試験が終わった後の甘い想像でぐるぐる回っていた。あの人が教えてくれたこと、あの人が優しく頭を撫でてくれた感覚、そのすべてを心の支えにしてペンを走らせた。


(……大丈夫。みーくんがいるから、私は強くなれる。この問題、昨日一緒にやったよね? そう、こうやって解くんだよね……!)


答えを書くたびに、湊の笑顔が浮かぶ。彼を喜ばせたい、彼に「頑張ったね」って抱きしめられたい。その一心だけで、私は全ての試験を終えた。






そして迎えた最終日の夜。マンションに戻った時のあの解放感は、一生忘れられないだろう。


「……終わったぁ……!」


私は床に倒れ込むようにして仰向けになった。湊も同じように隣に座り込む。


「お疲れ様、凪。……どうだった?」


「うーん……たぶん、頑張ったと思う。みーくんの特訓のおかげで、解けた問題がいくつもあったよ」


私は湊の手を握り、試験中もずっと感じていた彼の温もりを確かめる。結果がまだ出ていないなんて関係ない。私の中では、もうすでにあの約束された「一週間」が始まっているような気分だ。


「……ねえ、みーくん」


「ん?」


「試験中、ずっとこの手のこと考えてたよ。みーくんに抱きしめてもらえる時のこと」


湊はふっと笑って、私の頭を抱き寄せた。その腕の力強さが、これまでの我慢を物語っているようで、胸が締め付けられる。


「俺もだ。よく頑張ったな」


「……みーくん」


私たちはソファの上で重なり合い、もうすぐ訪れる「結果発表」という未来を夢見ながら、穏やかな微睡みの中へ落ちていく。

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