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第三章連載中 元義妹は元義兄と暮らしたい〜他人になったはずの元義妹と再会したら学校でも猛アタックしてきて困ってます〜  作者:
元義兄は元義妹と暮らしたい

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穏やかに過ごす休日

朝日がカーテンの隙間から差し込み、部屋の空気を琥珀色に染め上げていく。湊は意識の底からゆっくりと浮上してきた。瞼の裏に残る昨夜の記憶――凪の熱い吐息と、自分を独占しようと必死だった彼女の横顔が、鮮明に脳裏を駆け巡る。


腕の中では、凪がまだ深い眠りについていた。湊が少し身じろぎすると、彼女は何かを探すように湊を掴み、その胸元に顔を埋めた。


「……ん、みーくん……?」


寝ぼけ眼で凪が小さく呟く。その甘えたような声に、湊は胸が締め付けられるような愛おしさを覚えた。


「……おはよう、凪。もう起きてるぞ」


湊が耳元で小さく囁くと、凪は長い睫毛を震わせ、ゆっくりと目を開けた。寝起きのぼんやりとした瞳が湊を捉え、すぐに昨夜の出来事を思い出したのか、彼女の頬がみるみるうちに赤く染まっていく。


「……っ! お、おはよう……」


凪は慌てて布団に潜り込もうとしたが、湊がそれを笑いながら引き止める。


「隠さなくていいよ。昨日の凪、すごく可愛かったから」


「や、やめてっ! ……もう、記憶が消えてほしいくらい恥ずかしいんだけど」


彼女は布団から顔だけを出し、上目遣いで湊を睨む。湊は彼女の乱れた髪を優しく梳くように撫でる。


「消えてほしくないな。俺にとっては、凪がそれだけ俺を必要としてくれていたって、最高の証拠だから」


「……バカ。そんな真っ直ぐに言われたら、また顔が火照っちゃうでしょ」


凪は口を尖らせながらも、嬉しそうに湊の腕に額を押し付けた。


「ねえ、みーくん」


「ん?」


「昨日のこと、……本当にいいの?」


凪の瞳が少しだけ揺れる。それはまだ彼女の奥底に残る、消し去れない不安の名残なのかもしれない。湊は彼女の顔を両手で包み込み、真正面から見つめた。


「後悔なんてするわけないだろ。凪と、一生一緒にいたいんだよ」


「……うう、またそんなプロポーズみたいなことを」


「本心だから」


湊が真剣な表情を崩さないので、凪は観念したようにふふっと笑った。


「そうね。……じゃあ、私も覚悟決める。これからどんなことがあっても、みーくんを信じて、離さないから」


「ああ。……俺も、凪を守り抜く。一人前の男になって、必ずしっかりプロポーズするから」


「うん。……でも、あんまり待たせたら、また昨夜みたいに私がリードしちゃうからね?」


凪のいたずらっぽい視線に、湊は思わず苦笑した。


「それは……お手柔らかにお願いしたいな」


「ふふっ、努力する」


凪は楽しげに笑うと、するりと布団から抜け出した。伸びをする彼女の背中を見つめながら、湊は思う。彼女のその自由な振る舞いこそが、自分たちが勝ち取った勝利の証なのだと。


「さて、旦那様。朝ごはんのお味噌汁、作りに行こうか」


凪が振り返り、茶目っ気たっぷりにウィンクする。湊はその言葉の響きに、またしても顔が熱くなるのを感じた。


「……呼ばれ慣れてないから、まだ照れるな」


「<<あなた>>の方がいい?」


「今まで通りの方が好きかな」


「じゃあそうする」


湊は布団から起き上がり、凪の手を引いた。

窓の外では、街が活気を取り戻し始めている。電車の音、鳥の囀り、近所の生活の気配。すべてが、二人の門出を祝福しているかのように響いていた。


キッチンへ向かう道すがら、凪がふと足を止めて湊のシャツの裾を掴む。


「ねえ、みーくん」


「ん?」


「……これ、夢じゃないよね?」


湊は彼女の頬に触れ、優しく指でなぞった。


「夢じゃない。ほら、温かいだろ?」


凪は湊の手を握りしめ、その手のひらの温かさを確かめるようにギュッと力を込めた。


「……うん、あったかい。みーくんの温度だ」


彼女の瞳から、嬉し涙がポロリとこぼれる。湊はそれを指先で拭い、彼女を抱きしめた。


「泣くなよ。まだやっとスタートラインに立ったようなもんだろ?」


「うん……私、頑張る。湊が私を支えてくれるみたいに、私も湊を支えられるようになる」


「俺も頑張らないとな」


二人は並んでキッチンへと足を進める。昨日までの迷いや葛藤は消え、そこには確かな信頼と、未来への希望だけがあった。湊は凪の手を、先ほどよりも少しだけ強く握り直す。彼女もまた、湊の指をしっかりと絡め返してきた。




「……凪」


「ん?」


「今日はこれから、どこかへ出かけようか。……凪が見たいもの、行きたいところあったら一緒に行きたい」


凪は一口お味噌汁を啜り、少し考える。


「そうだな……じゃあ、駅の近くの公園にでも行かない? 季節のお花が綺麗だって、香織ちゃんが言ってたの」


「いいな、行こう」


二人でゆっくりと時間を過ごすには、ちょうどいい距離だ。



身支度を整え、街へ出ると、初夏の柔らかな日差しが二人を包み込んだ。駅前の賑わいを抜け、目的の公園へと向かう遊歩道は、時折吹く風が街路樹の緑を揺らしている。


「みーくん、あっち。噴水のところ、少し落ち着けそうだよ」


凪に促されるまま足を向けると、公園の広場には心地よい水の音が響いていた。色鮮やかな花壇の花々が風に揺れ、先日の涼や千尋との騒がしい休日とはまた違った、二人だけの穏やかな時間がそこに流れている。


「やっぱり、外の空気はいいな」


湊がベンチに腰を下ろすと、凪もその隣にぴたりと寄り添った。彼女の肩が湊の腕に触れる。その、微かな、けれど確かな温もりに、湊は心からの安らぎを感じた。


「ゆっくり過ごすのもいいね」


凪が空を見上げて呟くと、湊はその横顔を愛おしそうに見つめた。


「そうだな。……これからは、何気ない今日みたいな日を、たくさん積み重ねていこうな」


凪は嬉しそうに目を細め、湊の手を優しく握り直した。言葉を交わさなくても、互いの手の温もりだけで、二人の心は十分に満たされている。遠くで遊ぶ子供たちの声や、穏やかな風の音を聞きながら、二人はただ静かに、このかけがえのない「二人きりの休日」を噛みしめていた。挿絵(By みてみん)

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