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第三章連載中 元義妹は元義兄と暮らしたい〜他人になったはずの元義妹と再会したら学校でも猛アタックしてきて困ってます〜  作者:
2人の時間

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そして愛は強く

湊の家は、いつも通り静寂に包まれていた。だが、今夜はその静けささえも、二人の間に流れる甘やかな空気の一部のように感じられた。


玄関で靴を脱ぐとき、凪はいつもより少しだけ湊の背中に密着していた。湊はそれを振りほどくこともせず、むしろ彼女の存在を確かめるように肩に手を添える。


「みーくん、今日のご飯、何にする? 私、お腹ペコペコだよ」


凪がキッチンでエプロンを手に取りながら、湊を振り返る。その無邪気な瞳に、湊は胸の奥が熱くなるのを感じた。つい先ほどまで、香織という少女の切実な想いと、自分自身の重たい過去に向き合っていたことが、まるで遠い夢物語のように思える。


「……何にする? 冷蔵庫にあるもので良ければ、何でも作るよ」


「んー、じゃあハンバーグ! みーくんの作るハンバーグ、世界一好きだから!」


「大げさだな。……わかった、作ろう」


湊はジャケットを脱ぎ、シャツの袖をまくった。キッチンに立つ湊の背中を、凪はすぐ後ろで眺めている。湊が野菜を切る軽快な音が響く。凪はそのリズムに合わせて、小さく鼻歌を歌い始めた。


「ねえ、みーくん」


「ん?」


「これからも、ずっと私のこと見ててね」


「……当たり前だろ。俺は凪のことが一番大切なんだから」


湊は包丁を止め、凪の方を向いた。凪は満面の笑みを浮かべ、湊の腰にぎゅっと抱きついた。


「嘘つかない?」


「嘘なんてつかない。……ずっと、一生かけて証明する」


「……ふふ、重たいなあ。でも、その重さが好き」


二人のやり取りは、まるで呼吸をするように自然だ。かつて他人を拒絶し、孤独をシェルターにしていた湊にとって、こうして凪が自分を求め、自分が凪のために料理をするという日常は、何物にも代えがたい「奇跡」だった。


ハンバーグが焼ける香ばしい匂いが部屋を満たす。食卓につき、二人は並んで座った。


「いただきます!」


凪が一口食べて、目を輝かせる。


「んんー! やっぱり最高! みーくん、お店開けるよ!」


「凪が満足してくれるなら、それでいい」


「ねえ、今日さ、先生との話で、将来のこと少し考えたんだ」


凪が急に真剣な面持ちになった。湊は箸を置き、彼女の言葉を待つ。


「私ね、みーくんとずっと一緒にいたいから。……将来も、今と同じように、みーくんの隣にいられる仕事がしたいな」


「んー、たとえば?」


「……みーくんのお嫁さん、じゃダメ?」


凪は赤くなりながらも、真っ直ぐに湊を見つめた。湊は思わず噴き出しそうになり、けれど愛おしさで胸がいっぱいになった。


「凪。……それは、俺が一番望んでいることだよ」


「本当?」


「ああ。俺は凪と一生を共にしたい。でもプロポーズはもう少し待ってほしいかな。一人前の男として、《《家族》》を支えられるようになるまで」


凪は嬉しそうに涙ぐみ、食卓越しに湊の手を握った。


「約束だよ。それまで待ってるから。……絶対、離れないでね」


「約束する。……あと今、少し話したいことあるんだけどいいか?」


「話? 何?」


「いや……今日は、凪が帰ってくる前に、少しだけ過去の整理をしていたんだ。……これからは、凪にも隠し事をしたくないと思って」


湊は、今日香織と話したこと、香織が湊に好意を持っていたこと、そして自分がどれだけ凪という存在に救われているかを、飾らずに伝えた。凪は黙って最後まで聞き入っていた。


「……そっか。香織さん、そんなに思いを持ってたんだね」


「ああ。俺のせいで、あの子は2年間も自分の中に閉じこもっていたのかもしれない。……俺は、凪を守るためなら何でもするつもりだった。でも、それ以外の誰かを傷つけていいわけじゃないんだと、今日痛感したよ」


凪は湊の手を握る力を強めた。


「みーくんは優しいよ。だから、そんなに自分を責めないで。私は、みーくんが私を大切にしてくれるだけで、十分すぎるくらい幸せだから」


「凪……」


「これからはさ、香織さんも含めて、みんなで仲良くしよう? 嫌な記憶は全部、私たちが新しい思い出で塗り替えちゃえばいいんだよ。私、みーくんの過去も全部含めて、丸ごと愛してるから」


凪のその強さと優しさに、湊は改めて惚れ直す。彼女はただ守られるだけの存在ではない。湊の弱ささえも受け止め、未来へ導いてくれる強さを持っている。


「……凪、甘えてもいいって言ったよな」


「うん。……ご飯のおかわりはいい?もうお腹いっぱいになった?」


「いや……お前のことが、足りない」


湊は立ち上がり、凪を抱き上げてリビングのソファへと運んだ。凪は身を委ね、小さく笑った。


「……みーくん、家だと大胆だね」


「……今日は、少しだけ甘えさせてくれ。俺の心臓が凪だけで満たされていることを、もっと確信したい」


「……いいよ。全部、みーくんにあげる……私だって、みーくんがいないとダメだもん」


部屋の明かりが少しだけ落とされる。湊は凪の髪を優しく撫で、その瞳を見つめた。


「凪、愛してる」


「私も。……誰よりも、何よりも、ずっとずっと愛してる」


「これからは何があっても、二人で乗り越えていこう」


二人は重なり合い、互いの鼓動だけが響く世界へと深く沈んでいく。そこには、もう誰も入り込めない。過去の痛みも、他人の想いも、すべては二人の愛の深さの中で、穏やかな静寂へと溶けていった。


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