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第三章連載中 元義妹は元義兄と暮らしたい〜他人になったはずの元義妹と再会したら学校でも猛アタックしてきて困ってます〜  作者:
2人の時間

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嫉妬

「ねえ、湊くん! 今度の課題の範囲、どこだったか覚えてる?」


休み時間の教室。湊の机の周りに、いつの間にか女子生徒が数人集まっていた。以前の湊であれば、彼女たちにとって彼は「景色」の一部に過ぎなかった。だが、髪を切り、姿勢が正され、凪という学園の至宝を隣に置くようになった今の湊は、教室の中でひときわ目を引く存在になっていた。


「課題なら、プリントの裏面までだよ」

「あ、ありがとう! ……湊くん、最近なんかすごく雰囲気変わったよね。かっこいいなと思ってたんだ」

「本当、ずっと静かなイメージだったけど、話すと結構面白いよね」


女子たちの視線は熱を帯びている。ただの好奇心ではない。「近付いてみたい」「もっと話してみたい」という、願望が混じっているのは明らかだった。


湊は凪の手を握りしめたまま、繋いでいないほうの手で軽く机を叩いた。


「そうか、ありがとう。……でも、授業の準備があるから、また今度にしてくれ」


突き放すような冷たさはない。だが、明確な境界線を感じさせる、大人の余裕を持った断り方。女子たちは「そっか、ごめんね! またね!」と、少し照れくさそうに笑いながら去っていった。


それを見送ったあと、湊は隣に座る凪を見た。


「……意外と、いろいろ話しかけられるんだな」

「うん。……みーくんがかっこいいからだよ」


凪はそう言って、湊の肩にこつりと頭を預けた。彼女の声は普段通り穏やかだ。しかし、その瞳の奥には、消えることのない微かなさざ波が立っている。


「かっこいい……? 俺がか?」

「うん。みんな分かってるんだよ。みーくんが、実はすごく素敵だってこと」


凪の心境は複雑だった。自分の恋人が他の女子から注目されるのは、正直に言って面白くない。けれど、同時にその「かっこいい」という評価が、自分の愛する人に対するものだと知っているからこそ、誇らしさも感じていた。胸の奥がチクリとする。あの子たちに湊を奪われるなんて、思っていない。それでも凪はなんとも言えない不安を感じていた。



「……凪、どうした? さっきから少し元気がなさそうだが」

「ううん、元気だよ。ただ……みーくんがみんなに褒められると、なんだか少しだけ不安になるだけ」


凪はそう言いながら、湊のシャツを握る力を強めた。湊がクラスで認められ、誰からも蔑まれない存在になること――それは凪にとっても最高の喜びだ。けれど、その代償として「湊をみんなと共有する時間」が増えてしまうことに、どうしようもない寂しさを覚えていた。


「変なやつだな。……俺は、凪以外の人間に好意を持つなんてあるわけないだろ」

「……分かってる。みーくんが私のことしか見てないってこと、一番知ってるよ」


凪は湊の胸元に顔を埋めた。誰にも聞かれない小さな声で、言葉を紡ぐ。


「でもね、みーくん。あんまりかっこよくなりすぎないで。……みんなにかっこいいのがバレちゃうのが、なんだか少しだけ悔しいの」

「……そうか。なら、俺は凪の前でだけ、特別なかっこよさを見せることにするよ」


湊は凪の髪を優しく梳いた。彼にはデレデレした素振りはない。しかし、凪を誰よりも大切に扱うその態度は、周囲のどんな視線よりもずっと雄弁に「所有者」の証を突きつけている。


「……ねえ、みーくん。放課後、寄り道して帰らない?」

「ああ、いいぞ。どこか行きたいところがあるのか?」

「ううん。ただ……二人きりの時間が、もう少しほしいだけ」


凪は湊の腰に腕を回し、まるで誰も近寄らせないかのように密着した。

女子たちからの視線を感じるたび、凪は湊の体温を求めた。彼がかっこいいのは素晴らしいことだ。クラスで認められるのも、誇らしい。でも、それと同じくらい、誰にも邪魔されない場所で、自分だけの湊を堪能したくなる。


「……ねえ、みーくん。これからも、ずっと私の隣にいてくれるよね?」

「当然だろ。……他に誰がいるんだ」

「うん。……一生、離さない。みーくんが私を離さないなら、私も絶対に離してあげないから」


凪は湊の胸で小さく笑った。嫉妬も、不安も、この確かな鼓動を聴いている間だけは、甘い蜜のように感じられる。湊は凪の腕の感触を受け入れながら、窓の外を見つめた。

彼がクラスメイトと良好な関係を築くのは、凪との平穏を守るための手段に過ぎない。他人に興味などないし、凪以外を欲することなどあり得ない。


「……さっきの女子たち、また来るかな?」

「来るかもね。でも、無駄だよ。みーくんは、私だけのものだもん」


凪の独占欲は、今日もまた密やかに、そして深く彼女の中で醸成されていた。

彼女は湊の腕を握る手を、少しだけ強めた。湊がかっこよく、素敵であればあるほど、彼女は彼をより強く抱きしめたくなる。

それは、凪なりの「大好き」という言葉の、一番深いところにある叫びだった。


「みーくん、もっと甘えてもいい?」

「……ああ。凪がしたいなら、好きにしてくれ」


湊のそっけない、しかし決して拒絶しない言葉に、凪は心から満たされる。周囲がどれほど湊を求めても、最終的に彼の全てを受け取る場所は、自分しかいない。その事実が、凪の不安を優しく塗り潰していく。


湊は、自分がクラスで孤立しないことで、凪という大切な花を守り抜くという確信を深め。

凪は、彼がクラスで輝けば輝くほど、その輝きを誰にも渡したくないという気持ちを強め、彼に深く深く沈み込んでいく。


「……大好き。みーくん、ずっと私のものだよ」

「ああ。……凪も、一生俺のものだ」



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