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# 第66話 処分の線



 シロの分体が来たのは、少し後だった。


 白い肌。


 薄い体。


 人間より少ない瞬き。


 ナーディルは、その見た目だけなら勝てると思った。


 だが足元を見て、すぐ考えを捨てた。


 土の下に、白い線が多すぎる。


 ここは相手の腹の中だ。


「生存者は一人です」


 カトラスが膝をつく。


 シロは困った顔をした。


「膝はいいです。森の外から見えます」


「失礼しました」


 カトラスは立つ。


 それだけの会話で、ナーディルは理解した。


 この細い代表は、カトラスを止められる。


 なら、危険なのはカトラスだけではない。


「ラファン・カリフ国、砂環諜報局。ナーディル」


 彼は名乗った。


 中立国の名を出す。


 普通なら殺されにくくなる札だ。


「中立国です。敵対の意思はない」


 シロは標本袋を見た。


 削られた菌糸。


 保存キノコ。


 咳止め胞子。


 そして油の跡。


「敵対の意思がない人は、森で火を使いません」


「部下の独断だ」


「たぶん、そうでしょう」


 シロは頷いた。


 信じたように見えた。


 ナーディルは少し息を吐く。


 だが次の言葉で、喉が冷えた。


「でも、情報を持って帰られるのは困ります」


 声は静かだった。


 怒っていない。


 だから怖い。


「火で増えること。カトラスの戦力。村の依存。咳止め胞子。全部、今出ると面倒です」


 ナーディルは初めて、目の前の相手を外交官として見た。


 この男は、処分を考えている。


 腹いせではない。


 必要だから。


 書類の項目を消すように、人間を消すことを考えている。



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