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# 第54話 捕虜の朝食



 捕虜に出した朝食は、キノコ粥だった。


 敵兵たちは、椀を見て固まった。


 無理もない。


 白い森に負けた翌朝、白い森のキノコを食べろと言われているのだ。


 ニコが椀を配りながら言った。


「毒なら、わざわざ寝かせませんよ」


「お前は何者だ」


 兵が聞く。


「元盗賊。今は作業員」


「なぜ胸を張る」


「飯が出るので」


 兵の何人かが、思わず笑った。


 緊張が少し緩む。


 笑いは便利だ。


 恐怖を一瞬だけ薄める。


 ザイツが最初に粥を食べた。


 隊長が食べると、兵も続く。


 マルクなら「上役の試食は最高の宣伝」と言うだろう。


 粥は温かい。


 薄い塩味。


 腹にたまる。


 捕虜の一人が、悔しそうに言った。


「うまい」


 その言葉は小さかったが、周りに聞こえた。


 シロは少し複雑だった。


 敵にうまいと言われる。


 報酬ではある。


 だが、これも依存の入口だ。


 リゼットはけが人を見ていた。


「昨日の睡眠胞子、軽い頭痛が残っています。水を多めに」


「治療ですか、実験ですか」


 シロが聞く。


「両方です」


「せめて順番を」


「治療が先です」


 なら、今はそれでいい。


 グレンが砦から運ばせた予備の包帯も使った。帝国の包帯で、白い森が帝国兵を治す。


 ややこしい。


 だが、けが人は助かる。


 朝食後、兵たちは武器の一部を返された。


 剣は返す。


 火矢は返さない。


 油も返さない。


 ザイツは木札を受け取り、部下をまとめた。


 レオンは粥を食べなかった。


 シロはそれを見て、無理に勧めなかった。


 怒りも、本人のものだ。


 全部を薄めるのは、まだ違う気がした。


 出発前、捕虜の一人が振り返った。


「なぜ殺さなかった」


 シロは少し考えた。


「死体より、生きた報告の方が役に立つからです」


 兵の顔が引きつった。


 正直すぎた。


 だが、もう遅い。


 彼らは、その答えも持って帰る。


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