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# 第51話 眠る兵士たち


 兵士たちは、倒れた。


 一斉ではない。


 一人が膝をつく。


 次に、荷馬車の横の兵が座り込む。


 弓兵が弦を落とす。


 若い兵が、子どものように眠り始める。


 毒ではない。


 強い眠り。


 咳止め胞子の応用だった。


 リゼットは遠くの木陰で、目を輝かせていた。


「濃度を少し上げただけで、鎮静から睡眠へ。すばらしいです」


「喜ばない」


 シロは言った。


「死んでいません」


「だから喜んでいるのですが」


 言い方が怖い。


 ザイツは布で口を覆い、まだ立っていた。


 強い。


 経験がある。


 風上へ動く判断も早い。


 だが、部下の半分が眠れば隊は動かない。


 レオンも片膝をついている。怒鳴ろうとして、咳き込んだ。


 カトラスが剣を構えた。


「王よ。今なら全て」


「殺さない」


 シロははっきり言った。


 カトラスの動きが止まる。


「なぜ」


「帰って報告してもらう」


「敵に情報を」


「怖さを」


 カトラスは少し黙った。


「なるほど。生きた報告書」


「そういう言い方」


 ニコが小声で言う。


「でも分かりやすいです」


 分かりやすいのが困る。


 ザイツは剣を下げなかった。


 シロは白い外套を揺らしながら、彼の前へ出た。


「これ以上進まないでください」


「進める状態ではない」


 ザイツは苦く笑った。


「殺さないのか」


「今は」


「今は、か」


 ザイツは眠る兵たちを見た。


 その顔に、怒りと安堵が同時に浮かぶ。


 部下が死んでいない。


 だが敗北した。


 どちらを先に受け取ればいいのか、分からない顔だった。


「条件は」


「武器を置く。けが人を治す。明朝、帰す」


「捕虜扱いか」


「客ではありません」


 ザイツは短く笑った。


「正直だな」


 こうして、討伐隊三百は壊滅しなかった。


 ただ、戦えなくなった。


 白い森の勝利は、死体の山ではなく、眠る兵士の列で示された。


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