表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
48/57

第48話 三百の足音



 三百人の足音は、雨に似ていた。


 どこか一か所ではない。


 広く、細かく、ずっと続く。


 シロは地下の菌糸で、それを聞いていた。


 重い鎧。


 軽い弓兵。


 荷馬車。


 火矢の油。


 保存キノコの匂い。


 最後の匂いに、少しだけ変な気分になった。


 自分を討つ兵が、自分の作った飯を食べている。


 効率だけで言えば、悪くない。腹を壊されるより、食べ慣れた保存食を持たせた方が動きが読みやすい。


 だが気分は悪い。


 ザイツは先頭ではなく、中央にいた。


 よく分かっている。


 先頭の兵は罠を見る。中央の隊長は全体を見る。後ろの荷は守る。


 シロは、ゲームの遠征イベントを思い出した。


 隊長を先に倒すより、補給馬車を止めた方が崩れる。


 だが今回は、全滅させたいわけではない。


 怖がらせ、帰らせ、報告させる。


 白い森は、怪物だが交渉できる。


 その印象を作る必要がある。


 シロは森の奥で待っていた。


 村人はさらに奥へ。


 カトラスは菌騎士小隊とともに横の湿地へ。


 ニコは道案内として、逃げ道の近くにいる。


 リゼットは本体近くに置いた。


 本人は前線を見たがったが、全員に止められた。


「研究者は、死ぬと面倒です」


 シロが言うと、リゼットは目を輝かせた。


「死後利用の話ですか」


「違う」


 そんな会話をしている場合ではない。


 ザイツの先遣隊が、偽の祈り場へ到着した。


 白いキノコの輪。


 平たい石。


 花。


 兵たちが足を止める。


 レオンが言った。


「壊せ」


 兵が鉄槌を持ち上げた。


 その瞬間、森の鐘が鳴った。


 村には誰もいない。


 鐘を鳴らしたのは、菌糸だった。


 乾いた音が森に広がる。


 兵たちが一斉に振り返った。


 花はまだ壊れていない。


 シロは思った。


 まずは、一回止める。


 人は一度止まると、次の一撃に迷う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ