第46話 ザイツ隊長
ザイツ隊長は、火矢を半分に減らした。
レオンは不満を隠さなかった。
「森を相手にするのに、火を減らすのですか」
「焼けば終わる相手なら、調査隊はいらなかった」
ザイツは短く答えた。
四十代の兵士だった。髪は短く、鎧には新しい飾りがない。地味だが、部下の靴を見ている。そういう指揮官は強い。
「目的は三つ。祈り場を押さえる。代表シロを捕らえる。森の中心を探る」
兵たちが頷く。
「村人は?」
若い兵が聞いた。
「殺すな。邪魔なら縛る。子どもには手を出すな」
レオンが眉を寄せる。
「甘いのでは」
「村を敵に回すと、道案内も水も消える」
ザイツは地図を畳んだ。
「戦は正義だけで勝てない。飯と水と道で勝つ」
グレンは会議室の隅で、その言葉を聞いていた。
この男は分かっている。
だから余計に嫌だった。
無能なら白い森に負ける。
有能なら、村を傷つけずに森の急所を探す。
どちらが怖いかと言えば、後者だ。
出発前、バルドがザイツに近づいた。
「カトラス卿を見たら、戦うな」
「逃げろと?」
「まともに戦うな、だ」
ザイツは少しだけ笑った。
「それは同じ意味です」
「違う。逃げるなら全員で逃げろ。半端に残すな」
笑いが消えた。
ザイツは頷く。
「覚えておきます」
討伐隊三百が砦を出た。
槍。
盾。
弓。
少しの火矢。
荷馬車には縄と杭、祈り場を壊すための鉄槌も積まれている。
グレンは見送った。
その荷馬車の隅には、保存キノコの袋が二つあった。
白い森を討つ隊が、白い森の飯を持っていく。
皮肉だった。
だが、現場は腹が減る。




