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万年「F」ランク冒険者、呪われた装備で最強を目指す  作者: 秋栗稲穂


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074話 傲慢の因子――拒絶の守護者キュロス 前編

崩れ落ちる塔の残骸が、空を赤く染めていた。


南の塔――“傲慢の聖騎士セラドール”が討たれてから、まだ一刻も経っていない。

その戦いの余波で、街全体を覆う魔方陣がわずかに歪み、北の空が不吉な光を放ち始めていた。



アレフたちはそれぞれの塔を攻略するため、二手に分かれた。

アレフ、ジェームス、デュラが南の塔へ。

そして、ライカ、シノ、アスタロスが北の塔へと向かっていた。


そしてーー


アレフたちがセラドールを倒す少し前、ライカ、シノ、アスタロスの三人は塔の最上階に辿り着いていた。


――だが、彼女たちが最上階に辿り着いた瞬間、異変は起きた。


北の塔は、まるで生き物のようにうねり、壁という壁から黒い瘴気を噴き上げていた。

塔の表面には、血管のように脈動する紅い光が走り、まるで塔そのものが“怒り”を発しているかのようだ。


「……これは、人工ダンジョン・コアの仕業なの……?」


彼女たちの前に巨大な門が姿を現す。


ライカが目を細める。彼女の魔導神書グリモワールが淡く光を放ち、門の内部を解析する。


《魔力の流れを感じる……中心に、強大な呪力反応……》


ギギィ……と、門が自動的に開いた。

そこに立っていたのは――ひとりの聖導騎士。


「来るぞッ!」


アスタロスの耳がぴくりと動いた。直後、地響きと共に塔の入口が崩れ落ち、中から黒い甲冑を纏った巨体が姿を現す。


全身を包む漆黒の鎧。

その胸元には“傲慢”を象徴する紅の宝石が埋め込まれている。

しかしその輝きは歪み、まるで瘴気の渦に飲まれているかのようだった。


「……貴様らか……我の使命を……邪魔するのは……!」


声はくぐもり、鎧の内側から響くようだった。

その姿は、もはや人ではない。


“聖浄の神殿”の聖導騎士――キュロス。

傲慢の因子を植え付けられ、彼の精神はとうに壊れていた。


「我は、聖の守護者……傲慢の因子の継承者。

 全ての攻撃を、拒絶する者だァ!!」


咆哮と共に、周囲の空気が爆ぜた。

瞬間、地面の魔法陣が赤黒く光り、三人を取り囲むように瘴気が立ち上る。


「防御魔法――輝印結界!」


ライカが叫ぶと同時に、純白の光が彼女たちを包んだ。

だが、次の瞬間、その光は弾け飛ぶ。

まるで、空気そのものが“拒絶された”かのように。


「そんな……!? 私の結界が……!」


「これが傲慢の力……“絶対拒絶”だ。魔力を弾き、攻撃を打ち消す」


アスタロスが低く唸る。戦斧を構える手に力がこもるが、彼もまた不用意に攻撃できないことを悟っていた。


「だったら、どうするんだ!? 魔法も物理も効かないんじゃ――」


「効かないんじゃないって……効かせるだけの力を使い果たさせろって!」


グリモワールの声にライカの瞳が強く輝く。

魔導書のページが自然とめくられ、無数の魔法陣が宙に浮かび上がる。


「アレフお兄ちゃんが言ってた。“傲慢の力”は呪力を消費して防ぐ。

 なら、その防御を――過剰に使わせればいい!」


その言葉に、シノとアスタロスの表情が変わる。


「……つまり、奴の防御を発動し続けさせて、呪力を枯らすってわけか」


「なるほどな。だったら遠慮はいらねえなッ!」


アスタロスが地を踏みしめた。

瞬間、地面が爆ぜ、塔の周囲に衝撃波が走る。


「破衝烈斬――ッ!!」


轟音と共に衝撃波が守護者へと殺到するが、光の波動が一閃。

波動は消し飛び、代わりに反動の爆風がアスタロスを吹き飛ばした。


「クソッ、反射されたか!」


「大丈夫! 無駄撃ちでも、確実に奴の呪力は減ってるって言ってる!」


ライカが即座に魔法陣を再展開し、雷光を放つ。


「雷霆・ライトニングボルト!」


だがそれも、また打ち消される。

守護者の身体を覆う黒い結界が、雷光を霧散させていた。


しかし、そのたびに彼の周囲の瘴気が少しずつ薄まっていく。


「……よし。効いてる!」


「このまま削り続けるのじゃ!」


「はいッ!」


三人の連携が、まるで呼吸のように噛み合う。

ライカの魔法が防御を誘発し、アスタロス戦斧が圧力を加え、

シノの竜気が間隙を突いて空を裂く。


「竜炎――フレイム・バーストッ!!」


紅蓮の爆炎が塔を包む。

だが守護者は怯むことなく、片腕を振り抜いた。

その一振りで、爆炎が真っ二つに裂け、竜炎が霧散する。


「そんなバカな……!」


「違う、これも防御の一部! 彼の周囲に、“傲慢の結界”が常時展開されてるの!」


ライカが叫びながら、グリモワールを開く。

白紙のページに、新たな魔法陣が浮かび上がる。

“対抗魔法構成式”――魔導士としての本領発揮だった。


「……シノ、アスタロスさん。準備してください。あれを使います」


その言葉に、二人の瞳が鋭く光る。


「――了解した」


「へっ、やっと出番かよ」


守護者の周囲には、黒い霧が渦巻いていた。

その中心に、紅の宝石が激しく明滅している。

まるで塔の心臓がそこにあるかのように。

次回タイトル:075話 傲慢の因子――拒絶の守護者キュロス 後編

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