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万年「F」ランク冒険者、呪われた装備で最強を目指す  作者: 秋栗稲穂


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155/157

155話 同類(バカ)は拳で語る

勇者一行とアレフたちの間に張り詰めていた空気は、

確かに「敵意」ではなくなっていた。


――だが。

それは決して、穏やかさに変わったわけではない。

むしろ逆だ。

互いの力量を垣間見たことで、その場に集った戦士たちの血が静かに――

だが確実に、沸騰し始めていた。


「ずりぃぞ、エヴァンス!」


その沈黙を破ったのは、

案の定――ガルドだった。


「てめぇだけ楽しもうなんてよ!

勇者様同士の手合わせなんて、

一番うまいとこ独り占めじゃねぇか!」


豪快に笑いながら、

その太い腕がびしりと横を指す。


「なら、俺はそこの悪魔たちとやる!」


指名されたのは、

アスタロスとデュラ。


「……は?」


アレフが間の抜けた声を出す。


「どうする、デュラの旦那?」


アスタロスが半歩前に出ながら尋ねた。


デュラの首が小さく揺れる。


「ふん。

無駄な詮索はやめろ、アスタロス」


低く、重い声。


「お主――

すでに戦う気満々ではないか」


「……」


図星だった。


アスタロスの口元は、

僅かに――

ほんの僅かだが、

確かに吊り上がっている。


「脳筋バカって……

どこにでもいるのね……心中お察しますわ」


リリアがこめかみを押さえ、深いため息をつく。


「……うん」


ライカが即座に頷いた。


「わかってくれる人がいて……

ほんと、救われます……」


苦労を分かち合える者に出会えた嬉しさのあまり、ちょっぴり涙ぐむライカだった。


一方――


「ふむ……

ならば妾の相手は、お主かのぉ?」


シノが、

艶のある声でカリナを見る。


「いやよ、めんどくさい」


即答だった。


「じゃあ、そっちの……」


言い切る前にリリアが首を横に振る。


「興味ないわ」


リシェルに至っては後ろで大きなあくびをしているだけだった。


「………」


シノは完全に沈黙した。


「そんな……これでは、妾だけ仲間外れではないかぁぁあ!」


駄々をこねるようにシノが喚くも、誰も答えなかった。


こうして――

アスタロスとデュラVSガルド


そして

勇者エヴァンスVSアレフ


二つの模擬戦が、

始まることになった。



最初の対戦は、

アスタロスとデュラVSガルド。


「よっしゃ……!」


ガルドは戦斧を構え、楽しそうに笑う。


「遠慮は無しだぜ? 二対一でも、

俺は本気で行く!」


「言われなくてもな!」


アスタロスが踏み込む。

同時に、デュラの瘴気が立ち昇る。


――次の瞬間。

ガルドが爆発的な加速で距離を詰めた。


「うおっ!?」


アスタロスの反応が、

半拍遅れる。


――ゴォン!!


戦斧が唸りを上げ、

地面を抉る。


「くっ……!」


弾き飛ばされながら、アスタロスは歯を食いしばった。


「強え……

さすが勇者メンバーだぜ……!」


「まだまだぁ!」


ガルドは止まらない。


デュラが瘴気の壁を展開するも、

それすら力で叩き割る。


「……!」


デュラの鎧に鈍いひびが走る。


「くそっ……

このままじゃ押し切られる……」


アスタロスが叫ぶ。


「……旦那!」


「……承知!」


短い言葉。

それだけで、

意思は完全に通じていた。


「……あれをやるしかねえ」


次の瞬間。

デュラの身体がばらりと分解を始めた。


「なっ――!?」


勇者一行が一斉に目を見開く。


宙に浮かぶ、

兜、鎧、篭手、脚甲。

それらがアスタロスの身体へと

次々に装着されていく。


瘴気が渦を巻き、アスタロスの身体が

急激に変貌する。

筋肉が隆起し、骨格が歪み、角が伸び――


「……おいおい」


ガルドが目を輝かせる。


「そんなのありかよ……」


戦斧を肩に担ぎ、吼えた。


「面白ぇ!!来い――デュラタウロス!!」


「勝手に名付けてんじゃねえ!!」


アスタロスも同じように笑いながら突っ込んだ。


――ドンッ!!


ミノタウロスと聖騎士が真正面から激突する。

《グロウアックス》と戦斧がぶつかり、雷と衝撃が弾ける。


「ぐおおおおっ!!」


「ぬおおおおっ!!」


押し合い――

互いに一歩も引かない。


「……っ!」


「……っ!」


力も、気迫も、完全に同等。

互いに確信した。


こいつーー


同類だ。


「チッ……!」


互いが渾身の力で戦斧を振るう。


ガツンッ!


同時に武器が弾き飛び、二人は構えを解いた。


「……なぁ」


ガルドが笑う。


アスタロスも頷いた。


次の瞬間。

拳と拳が、真正面から激突した。


殴る。


殴られる。


避けない。


防がない。


ただ、叩き込む。


「ぐはっ!」


「がはっ!」


血が飛び、骨が鳴る。

それでも二人は笑っていた。


「最高だぜ……!」


「まったくだ……!」


最後は――

同時に限界が来た。


――ドサッ。


二人は並んで倒れ込んだ。


空を見上げながら、荒い息を吐く。


「……次は俺様が勝つ」


アスタロスが呟く。


「……言ってろ」


ガルドが答える。


沈黙。

そして――

二人同時に大笑いした。


「はははははは!!」


「がはははは!!」


その様子を見て、周囲は完全に呆然としていた。


「……なんなの、あれ」


リリアが呟く。


「……友……情?」


ライカが首を傾げる。


「理解できぬ……」


デュラがぼそりと言った。


だが――

確かにそこには、

言葉のいらない絆が生まれていた。


こうして――

アスタロスとデュラVSガルドの模擬戦は終わった。


そして、次なる戦いが――

静かに始まろうとしていた。

次回タイトル:156話 聖なる光と、抗う影

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