↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
万年「F」ランク冒険者、呪われた装備で最強を目指す  作者: 秋栗稲穂


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
149/157

149話 覚醒する猛牛――首無し騎士と悪魔の契約

「いくぜ、みんな!」


アスタロスが前に出る。


「うん!」


ライカが魔導神書を開き、白紙の頁に光文字が浮かぶ。


「《輝印結界・ルミナ・シールド》!」


「うむ、任せるのじゃっ……《穿孔・竜牙迅》ッ!」


シノは竜気を解放し、蒼炎の爪が閃く。

竜の脚筋を爆発させて踏み込み、鋭い爪撃を連ねる。

だが、バルバトスの皮膚に傷一つ付かない。


「……なんという硬さじゃ」


アスタロスは、戦斧を地に叩きつけた。


「《激流破衝烈斬(ヴァイオレント・クラッシュ・バースト)》!!」


水の奔流とともに衝撃波が走るが――


「無駄だ」


バルバトスの体表に浮かぶ漆黒の紋様が、すべてを弾き返した。


衝撃波は吸い込まれ、激流は霧散し、光の障壁は軋む。


通常攻撃も、通常魔法も通じない。


「やっぱり強ぇな……おい」


アスタロスが肩を回しながら舌打ちする。


「以前より……瘴気が濃いの……!」


シノは竜鱗盾を展開し、迫る黒い大剣を受け止める。


ジェームスが銀のトレイを構え――

「《鉄壁ーパーフェクト・レシーブ》!!」


バルバトスの拳を天井へ弾き返した。


床が砕け散り、広間に衝撃が響く。


「今です、ライカ嬢!」


ジェームスが叫ぶ。


ライカは雷光を纏い、呪文を紡ぐ。


「《雷槍・ヴォルトランサー》!」


数十本の雷槍が一斉に飛ぶが――

バルバトスの周囲の瘴気壁に触れた瞬間、雷が消える。


「……っっっ! きかない……」


「物理・魔法…双方の耐性が高すぎるのですわ! ライカ、もっと距離を取りなさい!」


グリモワールが結界を展開しながら叫ぶ。


「なら妾と合わせるのじゃッ!」


シノが駆ける。


「《雷霆連閃》いくぞ、ライカ!」


「うんっ!」


ライカの雷光とシノの竜雷が、螺旋を描いて融合する。


「《雷霆双竜・ヴォルテック・ツインバースト》!!」


轟音とともに二匹の雷竜がバルバトスに襲いかかった。


だが――


「ぬるい」


バルバトスは大剣を一振りしただけで雷竜を粉砕した。


瘴気の爆風が吹き荒れ、ライカとシノは壁に叩きつけられる。


「ぐっ……!」


「まだ……いける……!」


その時、アスタロスが叫んだ。


「おい、ジェームス! いくぞッ!」


「承知!」


ジェームスは香水瓶を天高く掲げる。


「《ブースト・フレグランス》!!」


香気が広がり、アスタロスの筋肉がさらに膨張した。


「でかくなっても女の姿じゃキレが悪ぃんだよッ!」


戦斧が雷光を纏い、アスタロスが跳ぶ。


「《雷鳴轟斬(サンダー・クレイヴァー)》――ッ!」


斬撃の軌跡が雷の奔流となり、バルバトスに直撃――

したかに思えた瞬間、


「遅い」


バルバトスが指を鳴らした。


次の瞬間、アスタロスの身体が宙を舞い、壁に叩きつけられる。


「がっ……!」


「アスタロスさん!?」


ライカが駆け寄る。


ジェームスはすぐにアレフを見た。


「アレフ様! 本当に起きてくださいまし!」


「…………あと五分……」


決定的に役に立たない。


バルバトスの気配がさらに膨れ上がる。


「つまらん。つまらんぞ。アレフの“成長”を見に来たというのに……」


バルバトスの怒りは臨界点に達していた。


「もうよい……茶番は終わりだ」


バルバトスの目が、わずかに細まる。


「まずは……お前からだ」


バルバトスが振り向く。


瞬間、空間が歪んだ。


黒き大剣が放たれたのか、衝撃波なのか識別すらできない。


そこにいたのは、背後からバルバトスに大剣を振り上げていたデュラだった。


ドンッッ!!


「デュラァーーッ!」


誰かの叫びが響いた。


デュラが大剣を振り下ろす直前――

バルバトスの大剣が、デュラに直撃していた。


鎧の体が宙を舞い——

次の瞬間、各部が砕け、散らばるように飛び散った。


胸部。腕部。腰。脚部。


そして、ゴロン……と、

床を転がる“首”だけのデュラ。


「デュラの旦那ッ!!」


アスタロスが駆け寄り、散らばった残骸を必死でかき集めながら叫ぶ。


「くっ!デュラの旦那……」


その声は震えていた。


「心配すんな……あんたの身体——装備品は俺様が着る。

そしたら、これからも一緒に戦えんだろ?

だから……安心して逝ってくれ……」


普段豪胆なアスタロスの瞳に、初めて涙が浮かんでいた。


しかし——。


「……勝手に我を殺すんじゃない」


床に転がる“首”が喋った。


「思念体の我が、バラバラにされたくらいで昇天などするものか!」


「なっ……生きてんのかよ!?」


「当たり前だ。我は《首無しの騎士》だぞ?」


首だけのデュラが言う。

そして、厳かに言葉を続ける。


「だが……我を“装備する”というのは、良い考えやもしれん」


「お、おい……本気か、旦那?」


自分で言い出したこととはいえ、デュラの提案にアスタロスは困惑した。


デュラの鎧は瘴気に侵されており、普通の人間が装備すれば即死する。

だが――


「お前は悪魔ミノタウロス。瘴気耐性は十分なはずだ」


「……おもしれぇ。やってやるぜ! 旦那の力……全部貸してくれ!」


アスタロスは立ち上がり、床に散らばったデュラの甲冑を見渡す。


「おい、旦那。首以外、全部借りるぜ」


「構わん。存分に使うがいい」


アスタロスは次々とデュラの鎧を装着していき、身体が黒鎧で覆われていく。


肩、腕、脚、胸当て――デュラの首である兜だけを除き、すべてが合わさった。


その瞬間――


アスタロスの身体から蒼白い光が溢れ始めた。


「な、なに?」


ライカが驚く。


ジェームスが目を細めた。


「……これは呪力の衝突……?」


アスタロスの首にかけられた呪いの首輪が、かすかに震えていた。


デュラの瘴気を帯びた鎧と、ミノタウロス本来の魔力が共鳴し――


「く……ッ……ああああァァァ!!」


アスタロスの身体が光に包まれた。


胸の膨らみが消え、細身の体が太く逞しく変化し、

獣人の姿から――本来の悪魔・ミノタウロスへと戻っていく。


アスタロスが顔を上げた。


その体が、一回り、二回りと巨大化していく。


筋肉が裂けるように膨張し、背骨が変形し、黒い角が天へと伸びる。


蹄が地を踏み砕き、背から蒼炎が噴き上がった。


「……すごい……アスタロスさんが元に戻った……!?」


ライカが目を見張る。


「デュラ君の瘴気とアスタロスちゃんの悪魔因子が、呪いの効果を上書きしたんだわ!」


グリモワールは静かに頷いた。


腹の底から声が漏れる。


「オオオオオオォォォォ…………!!」


光が収束し、響き渡る咆哮。

瘴気と魔力が混ざり合い、竜巻のように周囲を包む。


完全体ミノタウロス――アスタロス復活。


その姿は、二メートルを超える巨躯。


そして、瞳に宿る獰猛な魔の光。


デュラの黒鎧を纏い、戦斧を握りしめた“猛牛の魔戦士”。


「どうだアスタロス! これが我の力だ……!」


「悪くねぇ……最高だぜ、旦那!!」


アスタロスの筋肉が膨張し、黒い魔力が体表から噴き出す。


「……面白くなってきたではないか」


バルバトスが初めて口角を上げた。


アスタロスは大斧を肩に担ぎ、デュラの首を片手に持ったまま前へ歩く。


「おいバルバトス……ここからが……本番だッ!」


バルバトスが初めて、戦意を高めるように腕を構えた。


「いいだろう。ならば——迎え撃とう。

来い、覚醒した悪魔。その力——確かめてやる」


二人の気配がぶつかるだけで、大地が震える。

次回タイトル:150話 終焉を断つ冥雷ーー試練の終わり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。