#01+α:ノルティス再誕
本編第1話のプラスアルファ版です。
第2話はこちら▼
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……………、
「プシュッ!プシュッ!ゴッ!」
船外活動(EVA)宇宙服を身に纏った船外活動員が独り、
漆黒の宇宙の闇の中を駆け抜けていた。
訓練用に構築された宇宙建造物の中を訓練生500名の中、
最も速いタイムで、 まるで猛禽類のタカのように鋭く、素早く、
華麗に駆け抜けていく。
船外活動(EVA)宇宙服には推進器、ワイヤー射出機などの船外活動を
効率よくこなすための装備が満載だ。
その重量はおよそ100kgほどになるが、無重力環境と卓越した推進器や
ワイヤー操作をする「彼女」は、 その重量、質量による慣性が
発生していることをまったく感じさせない、まるで自由人とも言うべきか、
何物にも束縛されない、そんな存在に彼女はこの宇宙で成っていた。
「もうひとつ…、あのチェックポイントを越えれば…、私は…、」
そんな時、彼女の宇宙服へ雑音交じりの無線が入った。
しかし彼女は訓練コースをクリアすることに熱中するあまり、
他の事への注意がおろそかになっていた。
「…訓…生02…!聞…え…か!聞こ…てい…応…し…っ!」
「彼女」が訓練用構造物の最後のチェックポイントをクリアしようとした、
その時…、
ドォォオオォンン………!
本来宇宙空間では音は伝播しないが、もし大気圏内ならこのような
大きな音がしたに違いないと感じるほどに、 大きな「ソレ」は
激しく衝突した。
「訓練地区A204で巨大デブリ衝突事故が発生!訓練生024の消息が不明!
バイタル反応無し!」
訓練地区の全域を監視していた管制塔のオペレータースタッフ全員が
激しく狼狽している。 管制塔の現場は騒然となった…。
……………。
「あとひとつ…、あとひとつだったんだけどな…。
目の前が真っ白だか真っ黒だかになってしまって…。」
「私…、どうなっちゃったんだろう…。」
「みんなは…、無事なんだろうか…。」
「ほんとうにあとひとつ…、だったのに…。」
……………。
━━
ノルティス「………」
ノルティス「……ここは……?」
ノルティス「……ここは?」
ノルティス「………」
▶ 彼女は再び深い眠りについた
ノルティス「………」
ノルティス「……う、うぅ……」
ノルティス「私…、どうなっ……」
ノルティス「ひゃっ!……私の身体、無い……」
医師「……目覚めたか」
ノルティス「!」
医師「驚かせてすまない。最善は尽くしたんだが、君の身体は、もう戻らない」
▶ ノルティスは脳と脳幹だけの存在になっていた。培養液に満たされた生命維持装置の中に "暮らしている"
ノルティス「……!……?」
ノルティス「………」
医師「少し、話せるか?ただ聞いてくれるだけで大丈夫だ。」
医師「あなたの意思はモニターできていて、単純なイエス、ノーは装置のシグナルが点灯するようにしてある。」
医師「もちろん声を発しようと思えば装置を通して話すこともできる。だが、ムリして話さなくて、いい」
▶ 装置の緑シグナルが何度か瞬いた。赤シグナルはノー。
つまり緑のイエスが光ったということは、
彼女は話を聞ける状態にある、ということだ。
医師「助かる。それでは話を続ける」
医師「軍としても、このまま君を失うのは損失が大きすぎる。そして脳の保護技術研究開発の継続もする必要がある。そしてここからが本題なんだが…」
医師「実は生きた脳とサイバネボディを接続させる技術を我が軍は開発している」
医師「そこで君に我が軍にこの技術の洗練にご協力願いたい、というのが本題だ」
医師「結局のところ、こうして君をムリヤリ生き永らえさせているのも、なにもかも、我が軍の都合だ」
▶ 装置の緑シグナルが何度か瞬いた。それがただの返事なのか、それとも軍の都合だ!という意思表明なのかは、わからない。
医師「この提案には拒否権は、もちろん、ある。そして選択肢も用意してある。それは……」
医師「1.このまま培養液の中で "暮らす"」
医師「2.安楽死」
医師「3.軍に協力しない形でのサイバネ化」
医師「拒否権は3つを用意しているが、君からの提案は可能な限り聞く。……どうだ?受けてもらえないだろうか?」
▶ 装置は何も反応しない。しかしノルティスの脳波はまだ起きている状態を示している。話は聞いているみたいだ。
医師「すぐに回答してほしいワケじゃない。十分に考える時間は、ある」
医師「私がもし、君と同じ状況だったら即答できない。どうか十分に考えてほしい」
医師「あと最後にこれだけ。今回の我が軍の提案をもし受け入れてくれたならば、この研究で得た技術はオープンソースにする」
医師「君と同じ境遇の人間をひとりでも多く救うためだ。君には人類の希望にもなっていただく」
医師「どうか、よく考えてみてほしい。さらに案内として、今の状況がどうしても辛くなった場合、あなたの意思で自決することができる仕組みも組み込んである」
医師「既にその方法、やり方はあなたの脳内にあるはずだ。だが、できればその選択はしないでほしい」
医師「どうか我々を、人類を救ってやる、傲慢な気持ちでもなんでもいい。我々は君という存在に縋っている、あわれな、おろかな人間だ」
医師「どうか我々を救ってほしい、お願いだ。頼む」
医師「今日はゆっくり休んでくれ、また数日後、来る」
医師「それではどうか……、良い夢……、を」
▶ 装置は何も反応しなかった。ノルティスの脳波は起きていた。
━━数日後、極秘開発エリア0Xゼロエックス内、特殊医療室
医師「おはよう。今朝の朝食は君の好きな味になるように調整してみた。少しはお気に召しただろうか……?」
医師「窮屈な想いをさせてしまい、本当に申し訳ない。今日は……、少し話せそうだろうか?」
ノルティス「……はい」
医師「……!」
医師「……あ、ありがとう。本当に、ありがとう」
ノルティス「……私、そのお話、お受けしたく思います」
医師「……!」
ノルティス「……私、全身のサイバネ化手術をお受けいたします」
医師「そ、そうか!その気になってくれたか!……ありがとう!」
ノルティス「……ただ、研究で得た技術はオープンソースにする、という約束は守っていただきたいのです」
医師「も、もちろんだよ!ありがとう!!」
ノルティス「……どうか、……どうかよろしくお願いします。母も心配していると思うので、可能な限り、母に早く会いたいです」
医師「その点も心配要らない。今回の用件を君が飲んでくれるおかげで、君の母親の保護レベルも上がる。以前よりも豊かな暮らしを約束する。そのほうがさらに君も任務に集中できるだろうから」
ノルティス「ありがとうございます。母子共々、どうか、よろしくお願いします」
医師「こちらこそ、是非、よろしくお願い申し上げる。この度は……、本当に……、ありがとう。是非、我々の "灯" となってほしい」
ノルティス「"灯" になれるかはわかりませんが、最善は尽くします。よろしくお願いします」
━━
軍上層部「ノルヒスくんへの説得、裏で聞かせてもらっていたよ……」
軍上層部「実に、良い。君、役者にでもなったらどうだ? ん?」
▶ 小太りで背の低い頭の禿げあがった軍上層部の男は、いやらしい目つきで医師にそう言った。
医師「ノルティス、です。彼女は。そんな良いモノではありません。あれは、私が思うがままに、湧き出る言葉を不器用に並べ立てただけ」
医師「ノルティスはそんな我々の想いに応えてくれた、ただ、それだけです」
軍上層部「ふふん、まぁなんでもいいよ。これで我が軍も安泰だ」
医師「研究結果のオープンソースの件、絶対に忘れないでください。約束は、果たしていただきます」
軍上層部「それは君のこれからのがんばり次第だよ。期待している。高い軍事費をそちらに回してやっていることに対して、恩返しをしてほしいものだ。中々苦労したんだぞ?今回の件は」
医師「わかっています。ボディの設計変更の件も含めて、感謝しています。ありがとうございます。しかし情緒が安定しているのはシミュレーションの数値でも出しています。決してムダな投資では無かったと証明できるハズです」
軍上層部「せいぜいあの怪力女を、軍に従順な雌犬に仕立て上げてもらえれば、こちらとしては何も文句は言わん。頼むよ。本当に、期待はしているんだ」
医師「はい……、わかりました」
━━半年後
ノルティス「これが……、私……?」
女性医師「お顔は出来る限りそのままよ。その他の部分は軍用サイバネなので無骨だけど、わがまま言ってボディラインだけはなるべく女性の身体のラインに近づけてあるわ」
女性医師「やっぱり、ちゃんと女の子は女の子じゃないとイヤでしょ?」
女性医師「私が、彼女の情緒が安定しないから! とかなんとかもっともらしい理由を付けて、大幅に設計変更してやったわ!えっへん!」
ノルティス「あ、ありがとうござい…、きゃ!」
女性医師「あー、あー……。 あのね、あなたの身体は "軍用" なの。そこんとこ、激しく、よろしく」
▶ ノルティスが寄りかかった壁に大穴が空いてしまっている……
女性医師「しばらくは力加減の訓練ね。どう?このコーヒーカップは?持てそう??」
▶ コーヒーカップは粉砕されてしまった……
女性医師「ま、まぁ……、あせらず……、ゆっくり……ね?」
ノルティス「す、すみません……」
▶ フラついて寄りかかった壁がまた破損した……
女性医師「こりゃ、時間掛かりそうね☆彡 あはは☆彡」
▶ その様子を遠くで静かに眺めているひとりの男が、居た。
その男は基地司令で、本件の推進に多大な尽力した男だった。
━━さらに半年後
時と場所は移り変わり…、 ここは極秘開発エリア0Xゼロエックス。
その敷地内の基地格納庫には全高15メートルの鋼鉄の巨人、
「ロボティクス・ワーカー」が1機、佇んでいる。
型式番号:RW-07A
ペットネーム:BURNING ATTACKER NEOSIS
(バーニングアタッカーネオシス)
全身に推進器を備えた、三次元戦闘活動を可能にした最新型の
「ロボティクス・ワーカー」だ。
「ロボティクス・ワーカー」とは、 主に人型の作業機械で
全高15メートル程度のものを主流とした上で、
作業目的に沿って様々な形状、 大きさのものが存在する。
また、汎用性、整備性を高めるために、胴体と四肢を接続するパーツが
共通化されており、 同サイズのロボティクス・ワーカーであれば容易に
胴体や四肢のパーツが組み替え可能となっている。
高い汎用性と整備性のため、機体そのものの製造コスト、
運用コストが下がり、その結果、 従来の建機(重機)以上の存在となり、
瞬く間に世界中に普及していき主にインフラ建築に活用されていった。
そして、ロボティクス・ワーカーの軍事転用も積極的に推し進められ、
各国の軍隊にも普及していった。
型式番号:RW-07Aは、完全に最初から戦闘用に開発されたもので、
様々な兵装を取り扱うことができるように独自の規格や仕組みが
機体の随所に施されていた。 それは基本的に人の姿をしているが、
やや人体のプロポーションから外れた外見をしている。
胴体から四肢は伸びているが、いわゆる人間で言う「頭部」が存在しない。
胴体のパーツに直接カメラアイが据えられた全体的に鋭利な角張った
デザインをしている。
現在はすべての各種兵装は取り外された状態で、
機体のみが格納庫に安置されていた。
ただその機体の背中には、機体の身の丈の半分ほどにも迫る板状のモノが
バックパックとその横のサブアームで取り付けられていた。
そして、その機体には既に搭乗者が居た。
ノルティス・ガーランド
RW-07A バーニングアタッカーネオシスの専属パイロットだ。
「どうだ?機体は今日も【馴染んでいる】か?」
呼び掛けた声の主は【馴染む】という言葉をやや特徴的に発した。
ノルティスはコクピットの計器類に素早く目を走らせ、
機体の状態に異常がないことを確認したあと、こう答えた。
「えぇ。よく【馴染んで】います」
機体の搭乗者も同じように【馴染む】という言葉をやや特徴的に返した。
「【あの事故】は大変だったな…」
ノルティスに再度、重苦しい雰囲気で声を掛けたのは、
極秘開発エリア0Xゼロエックスの基地司令 兼 新型機の開発主任を
勤める、 イグニス・ローランド その人だった。
「いえ、またこうして【活きる】道を与えてくださった貴方には
感謝しかありません」
ノルティスは答えた。
「それでは復帰して間もないところで申し訳ないが…、
本日もRW-07Aの機体性能試験を実施する。
機体各部のチェックは終わっているか?」
「それはこの子に搭乗した【瞬間に】終わっています」
「そうか、機体との【同期】には問題無いようだな…。
それでは試験を開始する!」
イグニス司令の開始の合図とともに、ノルティスはスロットルを
最大出力まで【やさしく】叩き込んだ。
すると計器類が狂ったように反応したかと思うと、
ある一定の数値を指し示したところでピタリと落ち着く。
ヒュゥゥゥンッッ……!
とカン高いモーター音が機体から静かに鳴り出したかと思うと、
【まるで人でも入っているかのような】挙動で、
巨大な格納庫のハッチから瞬く間に宇宙空間に、
「ロボティクス・ワーカー」と「彼女」は飛び出していった……
to be continued...
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【小説内の記号ガイド】
* 「」:登場人物の会話。
* 《》:通信などの隠密会話。
* ():登場人物の心の中の声。
* []:AIの初期状態。アナウンスUI。
* ▶ :カメラアングルを動かす、最小限の状況ナレーション。
* ━━:カメラを別の場所・時間へ飛ばす場面転換。
* /////:キャラクターの赤面演出。
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【主要登場人物紹介】
◎ノルティス:機械の身体を持つ少女。RWエースパイロット。
◎イグニス:新型RW開発基地の司令。




