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ロボティクス・メイカー  作者: 藤岡 幸春


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19/27

#-01:リュウイチ・リュウジ兄弟|熱箱配達人

【小説内の記号ガイド】


* 「」:登場人物の会話。

* 《》:通信などの隠密会話。

* ():登場人物の心の中の声。

* []:AIの初期状態。アナウンスUI。

* ▶ :カメラアングルを動かす、最小限の状況ナレーション。

* ━━:カメラを別の場所・時間へ飛ばす場面転換。

* /////:キャラクターの赤面演出。


【HEAT BOX|熱箱】

H:Heat


E:Electrical


A:Active


T:Temperature


B:Battery


O:Orbital


X:eXperience



▶ 2052年、地球。

ウェルカムマスドライバー(WMD)の利権争いで、

各国を巻き込んだ大きな戦争が起きようとしていた……。


WMDとは宇宙資源を迎え入れる巨大なレール。

レールの中は住居になっている。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


<ウェルカムマスドライバー住居エリアの構造>


* 【階層3:上流層】:高さ800m〜1,200m。最も見晴らしが良く、空気が綺麗。頂点付近は超巨大な避難宇宙船になっていて、WMDから分離・発艦できる仕組みになっている。


* 【階層2:中流層】:高さ400m〜800m。最も標準的な都市機能、巨大ショッピングモール、オフィス街が集まる。


* 【階層1:低所得層・スラム】:地上(海面)〜高さ400m(約100階建て相当)。最も横幅が広く(3km)、空気循環が滞りやすいため下層になるほど過密・劣悪化。工業エリアの騒音が響く。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



━━某国極寒山岳地帯。



熱箱配達人:リュウイチの独白。


俺の名はリュウイチ。

リュウジっていう弟も居る。

俺は今、弟のリュウジと共に極寒の山岳地帯奥地に住む人々に、

【熱バッテリー】と呼ばれるシロモノを運んでいる。

兄弟で【熱箱配達人】という仕事をしている。


【熱バッテリー】は何をするシロモノかってぇと、

要するに四角い箱に【熱】が沢山詰まってやがる。

WMDの外壁で発生させた【熱】を、この四角い箱に【詰め込んでいる】


そして、この【熱】でいろんなことができる。


暖房にもなるし、

コンロにもなるし、

風呂だって沸かせる。


大きさは50センチ四方の箱だ。重さは約20kgほど。

これをひとつずつ、俺達兄弟は背負って山歩きをしている。


どれくらい熱が取り出し続けられるのか、だって?

そうだな、今、俺達が運んでるヤツなら、

大人一人がおよそ一ヶ月は生活できる【熱】が入ってる。


この四角い箱には様々な装置が付いていて……、


あ、そうだ、六面体のサイコロを思い浮かべてほしい。

サイコロは六面にそれぞれ数字の丸い印が記されているだろう?

コイツの六面にもそれぞれの機能が割り振ってある。

サイコロで説明してやろう。


【1の面|天面】:コンロとして使える


【2の面|西】:風呂を沸かすアダプターが付いている


【3の面|南】:温風が出るファンがある


【4の面|北】:床暖房に繋げるアダプターが付いている


【5の面|東】:電力が取り出せる


【6の面|底面】:熱バッテリー設置スタンド装備の面(キャスター付き)


まぁ、ざっとこんなカンジだ。

コイツの正式名称は長ったらしいので忘れたが、

仲間内じゃ通称で、


【熱箱】


【ヒートボックス】


なんて呼んでるヤツラも居る。

ちなみに俺は【熱箱】派だ。


おっ、そうこうしているウチに奥地の集落に到着したようだ。



リュウジ「兄者、やっと着いたな」


リュウイチ「あぁ、そうだな。長かったな、ここまで」


村人「いつもありがとうございます!さぁさぁコチラへお上がりください!」


リュウジ「おじゃまします!」


リュウイチ「ありがとうございます。こちら、お約束の品物でございます。こちらへサインをお願いします」


村人「本当にいつもありがとうございます! はい、コレでよろしいですか?」


リュウイチ「ありがとうございます。大丈夫です。問題ありません。こちらこそいつもご贔屓にしていただき、ありがとうございます」


リュウイチ「……ここで残念なお知らせがあります」


村人「存じております。我々もここを出る準備を続けています」


リュウイチ「ご存じ……、でしたか……」


村人「はい、リュウイチ、リュウジ兄弟の配達は、今回が最後になるのですよね?」


リュウイチ「はい、残念ながら……」


村人「周辺国がキナ臭いですからね……。あなた方も仕事がやり辛いでしょう……」


リュウジ「なんで戦争なんかはじめようとするんすかね……。みんな仲良く資源は使えばいいのに……」


リュウイチ「WMDから得られる恵みは便利なシロモノだ。しかしソレを独占したがるヤツラもいる。……悲しい、がな」


村人「リュウイチ、リュウジさんは、これからどうなさるおつもりなんですか?」


リュウイチ「しばらくは担当させてもらっているクライアントに最後の挨拶まわりをして……」


リュウジ「いよいよ仕事が無くなったらRW乗り、それが無理ならSQB乗りにでもなろうかと思っています」

※SQB:作業用ポッドを戦闘用に改造した兵器

※RW:ロボティクス・ワーカー(RW)。搭乗型汎用人型兵器。全高15メートル。


リュウイチ「軍に入隊することも考えています」


村人「あなた方ならどこでも引く手あまたでしょう。特に軍は絶対欲しい人材だと思いますよ」


リュウイチ「できれば軍には関わり合いになりたくはないんですがね……。まぁ、そのときが来れば、しかたなく、といった感じでしょうか」


リュウジ「何はともあれ、今まで本当にありがとうございました! 連絡先はココなので、また何かご縁があれば是非♪」


村人「ありがとうございます!あなた方に幸が多からんことを切に祈ります」


リュウイチ「どうか、お気をつけて」


リュウジ「どうかご無事で……」



▶ リュウイチ、リュウジの二人はしばらくの間、村の人々に歓待を受け、

村を後にした。


▶ 特にトラブルもなく下山は進んだ。

もう間もなく無事下山できるかと思った、その時、



山賊1「……ニーチャン達、金目のモン、置いてけ」


山賊2「お、おとなしくし、して、ほ、ほしい ん だな」


山賊3「おまえらぁっ!アニキの言うことを素直に聞いておいたほうが身のためだぞぉっ?!」



▶ 違法改造のRW(RW-05ブルドッグ民間機ベース)3機がリュウイチ、リュウジ兄弟の目の前にあらわれた。



リュウイチ「あーあ」


リュウジ「出ちゃった」


リュウイチ「んじゃ」


リュウジ「いつものアレで」


リュウイチ「在庫、残ってる?」


リュウジ「ラス3(ラスト3つ)」


リュウイチ「んじゃコイツら相手には十分か」


山賊1「……つべこべ言わず、おとなしくカネを寄越せ。潰すぞ?」


山賊2「ご、ごちゃごちゃ、う、うるさ い んだ な」


山賊3「アニキぃっ!やぁっちまいましょうぜぃ!こんなヤツラぁっ!!」



▶ 違法改造のRWが一斉に兄弟に襲い掛かった。



リュウイチ「よいしょー」


リュウジ「ほらよ」


リュウイチ「トドメ」



▶ 兄弟はあらかじめ携帯していた対RW用ロケットランチャーをRWの脚部関節に的確に命中させた。

RW、15メートルの鉄巨人があっさり崩れ落ちた。

ロケットランチャーの弾の威力が強力だったのもあるが、

違法改造の機体でロクな整備がされていないRWということもあり、

急所にさえ命中させてしまえば案外脆い相手だった。



リュウイチ「こんなことやってないで」


リュウジ「まともに働けよ」


リュウイチ&リュウジ「「おまえら」」



▶ 兄弟は最後に地雷をRWに貼り付けて、

安全圏まで走り抜けた後に地雷の起爆スイッチを押した。

山賊どもに完全にトドメを刺した。



山賊たち「おーたーすーけー!!」



▶ 山賊たちは情けないセリフを残すと、壊れたRWをそのまま置いていき、あっけなく兄弟の前から逃げ去った。



リュウイチ「アイツらが逃げていった方向……、これから吹雪くらしいが……」


リュウジ「おーぃ、ソッチは進むとヤバイぞー? ってもう聴こえないか。帰るか、兄者」


リュウイチ「おぅ。腹減った。スラム街のロボおやじがやってる、おでん屋台にいこう」


リュウジ「そのあとは藤の花で甘味を食したい」


リュウイチ「お前、【うずまきしるこ】、本当に好きよな。俺も大好きだけど」


リュウジ「冷凍庫は冷凍しるこで満タンです」


リュウジ「そういう兄者は【むしまんじゅーのじょーむ】もめっちゃ食うじゃん?俺、あの饅頭ニガテなんだよな……」


リュウイチ「【むしまんじゅーのじょーむ】の良さがわからんとは……。キサマもまだまだケツが青い」


リュウジ「えー、だって俺、あの饅頭、へんにモチャモチャしてて好みじゃない……」


リュウイチ「そんなんだから、まだまだ未熟なのだ、おまえは」


リュウジ「いやそれカンケーなくないですか?」


リュウイチ「【むしまんじゅーのじょーむ】に含まれる、【トザンウマクナール】を摂取していないお前には一生俺には追い付けん」


リュウジ「いやソレ初耳だがw」


リュウイチ「テキトーこいた。すまん」


リュウジ「んじゃお詫びにおでん奢ってくれ」


リュウイチ「なんでそうなる?? それとコレとは話が別だ」



▶ 兄弟は無事WMDスラム街に到着。

宿を取り、おでんと甘味を食して寝ました。ぐっすりと。



━完━


---


【用語】


・熱バッテリー:

WMDで生成された熱を閉じ込めておく箱。

正式名称は【熱バッテリー】もしくは【HEAT BOX】。

通称は【熱箱】もしくは【ヒートボックス】。

Heat Electrical Active Temperature Battery Orbital eXperience(軌道上で生成された熱を、電気や温度として能動的に扱い、生活体験を変える蓄熱蓄電体)の頭文字。


・ウェルカム・マスドライバー:略称「WMD」。宇宙資源を迎え入れる巨大なレール。レールの中は住居になっている。


・ロボティクス・ワーカー:略称「RW」。人型汎用作業機械。全高15メートルの搭乗型ロボット。


・スクエアボックス:略称「SQB」。作業用ポッドの名称。「スクエアボックス」の略。戦闘用に改造された兵器も存在する。


・うずまきしるこ:栄養バランスの取れた小豆をWMD内の農業プラントで優先栽培する流れで生まれた和風スイーツ。こし餡がうずまき状に器に盛られたしるこということから、この名がついた。


・むしまんじゅーのじょーむ:とても絶品な蒸し饅頭。製造工程が複雑なため、1日に売りに出される数が常に限定されている人気スイーツ。当初は「常務の蒸し饅頭」で商標登録するはずが、テレコ&漢字変換ミスで、この商品名になった。


---


【ロボティクスメイカー|設定紹介】


ロボティクスメイカーの公式サイトはコチラ↓

https://robotics-maker.jimdofree.com/


RW-05ブルドッグ(RW-05M ブルドッグ・ミルスペック型)の絵はコチラ↓

https://robotics-maker.jimdofree.com/%E6%A9%9F%E4%BD%93%E8%A7%A3%E8%AA%AC/


---


【物語登場国家の設定|C.F.N軍】

西暦2053年まで存在。

Coalition of Free Nations(自由国家連合)

略称:C.F.N

構成:

・民主主義国家群

・WMDの共同管理を掲げる

・宇宙資源の共有化を理念とする


---


【物語登場国家の設定|A.S.I軍】

西暦2053年まで存在。

Alliance of Strategic Integration(戦略統合同盟)

略称:A.S.I

構成:

・東方ブロック

・南アジア圏

・社会主義的価値観を共有する国家群

・宇宙資源の国家独占を掲げる陣営


---


【物語登場兵器紹介|SQB】


作業用ポッドを戦闘用に改造した兵器。



┏■┓

 Ⅱ


上記物体はSQBのトップビュー(真上から見た図)を表している。

以下は各パーツの説明↓


■:スクエアボックスのボディ。六面体のサイコロのようなシンプルな形状をしている。


┏:右メインアーム


┓:左メインアーム


Ⅱ:小さなサブアーム(2本)が機体の中央寄りから生えている

本編第1話の前日譚です。

本編第1話はこちら▼

https://ncode.syosetu.com/n9533le/5


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